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031 プライド領

「そこの兵士待つのじゃ。」


ルナが拘留しようとした兵士を止める。


「そこな者はわらわが護送中じゃ、問題ない。」


「これはグリード公様、大変失礼いたしました。

 ですが、呪もつけずに護送では、暴れだす危険性がございます。」


「すでにわらわの眷属としておる。呪をかける必要も無いじゃろう。」


ルナは犬歯を光らせながら不気味に笑う。


「これは・・・重ね重ね大変失礼いたしました。お通りください。」


それを見た兵士は顔を引きつらせながら俺をルナの方へ渡す。


「うむ、お主たちの仕事熱心な働きぶり、プライド公へ報告しておいてやろう。」


「はっ、ありがとうございます。私、アーガスと申します。よろしくお願いいたします。」


兵士はそれだけ言うと、次の仕事へ向き直った。


「(ぼそ)ルナ、ありがとう助かった。」


「言って置いたとおり吸血鬼化して置いて良かったじゃろう。」


「ああ、ただ日の光に弱いのは何とかなら無いかねぇ。」


「その辺は熟練度を上げるしかないの。」


「ふぅ・・・頑張って熟練度をあげるとしますか。」


「そうしておくのじゃ。(ふふふ、熟練度をいくらあげようが、わらわがマスターである以上、わらわの命令に逆らうことは出来ぬがのぅ。)」



今、俺は吸血鬼化のスキルを解凍し、発動させている。


この状態では各種能力が上昇しているが、弱点が多い。


ルナの話では、熟練度をあげると弱点が無くなっていくらしいので、大人しく熟練度をあげるとしますか。


しかし、この姿は何かを思い出す。


光が肌をさらさない様に頭までコートを被り、前が見えずらいのでルナに手を引いて貰って歩く・・・


警察に連行される犯罪者じゃね?



「ルナ、ある程度離れたら吸血鬼化を解いていいか?」


「だめなのじゃ、陽光対策は熟練度3まであがれば取れるので、後数日我慢するのじゃ。」


「オーケー、我慢しよう」


心とは裏腹に爽やかな笑顔で答えてしまう・・・


これも吸血鬼化の影響なのだろうか。


まぁ、悩んでも仕方ない。


「ルナは詳しいようだが、プライド大公の居場所は分かるのか。」


「そうじゃな、馬車を使えば5日もあればつくのじゃ。」


なら5日間馬車で我慢すれば問題ないだろう。


「じゃが、今わらわ達吸血鬼の力を使えば2日もあればつくじゃろう。」


「早いな。」


驚くと、ルナは得意満面な顔で答える。


「吸血鬼族は魔力を操り空を飛ぶことが出来るからの。

 今は昼間じゃから難しいじゃろうが、夜になればお主も飛べるはずじゃ。」


おぉ、空を飛べるのか。


それは夢にまでシチュエーションだ。


「なら移動は夜まで待って飛んだ方がいいか?」


「それが良かろう。

 お主はお尋ね者じゃ、昼間より夜に活動した方が活動もしやすいじゃろう。」


確かにそうだな。


「じゃから、今日はわらわの買い物に付き合いたもれ。」


住むことになったことで、雑多なものがいるのだろう。


俺は日が暮れるまでルナの買い物に付き合った。


買い物の途中、吸血鬼の特徴の1つ、血が切れて苦しむこともあったが、トマトの絞り汁で代用できた。


トマトすげー。





そして夜。


街の明かりをバックに颯爽と空を飛ぶ俺とルナがいた。


吸血鬼化の影響で、飛べるはずだったのだが、何故か俺は空を飛ぶことが出来なかった。


「すっげー、やっぱり空飛ぶって凄いなっ」


「こりゃ、あまり暴れるな、落ちるのじゃっ」


そのため、俺はルナに背中から抱きついて貰い、ロープで落ちないようにぐるぐる縛った上で飛んでいる。


某アニメの影響からか、つい「武空術」っと叫んでしまった。


ルナからは「何それ・・・」と白い目で見られてしまった。



ルナ曰く、俺は魔力が足り無すぎて空を飛ぶことが出来ないそうだ。


色々と試した挙句、ルナが俺を抱えて飛ぶ。しか方法が無いことが分かった。


「まったくっ、魔王ともあろう者がなんで自分で飛ぶ程度の魔力すらないのじゃ。」


「仕方ないだろっ、俺だって好きで魔力が無いわけじゃないんだからっ。」


「ふむ、夫の足りない部分を手助けするのも妻の仕事じゃ。

 魔力は我に任せれば良いわ。」


否定したいが、ここで落とされるわけには行かない・・・


「はいはい、よろしく頼むよ。」


「任せるのじゃ~。」


頼られるのが嬉しいのか、スピードを上げ、星空の無い虚空の闇を疾走していく。


のようなものに照らされる風景が猛スピードで過ぎ去っていくのが見える。


昔乗っていたバイクもかなり楽しかったが、高さが加わり、ヘルメットが無い分、視界がクリアに保たれる。


かと言って息苦しいかというと、そうでもない。


魔力で体を覆うフィールドが張ってあり、この中では空気も普通に吸える。


俺がはしゃいでいるのが楽しいのか、ルナがTVで見るような曲芸飛行をやってくれたが、体にかかるGも無く、無重力状態の中で空を自由気ままに泳いでいると思ってくれれば良い。


自分の魔力で飛ぶことが出来ないのが本当に残念で仕方ない。


鍛錬で魔力を伸ばせることも出来るらしいので、そのうち鍛錬してみようと心に誓うのだった。




次の日も指名手配を避ける為、昼間は家で寝倒し、夜はルナに飛んで貰ってさっくりと首都プライド前にたどり着くことが出来た。


「いや~、飛ぶって早いね。」


「ふふん、恐れ入ったのじゃ?」


「うん、ルナのお蔭でこんなに早くつくことができたよ。ありがとう。」


俺はそう言うとルナの頭をなでてあげる。


さらさらのロングヘアーをなでると、絹のような手触りで、最近病みつきになってきた癖の1つだ。


ルナも目を細めて嬉しそうだ。


このまま喉を鳴らしたりしないだろうか。


等と考えると、たいてい気づかれて睨まれてしまうのだが、今日はかなり疲れたのだろう。されるがままだ。


「まだ開門の時間には早いし、1回家に帰って寝るか?」


「そうさせて貰うのじゃ。」



1度家に戻ると、寝る前にルナから「打ち合わせをする。」と言われ、リビングへ向かった。


リビングではルナ・エル・ミーティアの3人が揃っていた。


プライド公の元へ行くことを伝えたのだろう。


皆緊張しているように見える。


そんな中、ルナから口を開いた。


「プライド公のことじゃが、わらわ以外に知っておるものはおるか?」


俺は首を振る。ミーティアとエルも同じようだ。


「なんじゃ、誰も知っておらんのか。

 ミーティアは勇者なのじゃから知っておるのではないかえ?」


「私はプライド公の指揮の凄さと、個人での戦闘能力ぐらいしか知らない。」


「そうか。ヒロはきちんと知っておかぬばならぬので、説明しようと思っておったが、2人も知らぬようだからついでに説明しよう。」


そう言うと、ルナは椅子を動かして俺達の対面に移動した。


元々対面にいたミーティアは逆に俺達の横へ移動してきた。


「まず、プライド公じゃが、性格は質実剛健。

 何事も筋が通ってなくば、納得できぬ性格じゃな。」


会議場での事を思い出す。

確かにそんな感じのある人だった。


「曲がったことが嫌いで、性根の腐った者は人族あろうと魔族であろうと容赦することはないのぅ。

 逆に認めたものは人族であろうと、魔族であろうと関係なく認める。」


「その辺りは私も伝え聞いた覚えがあります。

 なんでも、真っ直ぐな性格に心打たれ、人族でもシン国・・・というよりはプライド公の私兵へ志願するものが多いとか。」


「そうなのじゃ、プライド公は完全実力主義で、認めたものは誰でも重用する。

 特に武力方面では有名じゃろう。

 人族もプライド公の軍隊には手酷くやられたからのぅ。」


「うん、プライド公の軍勢は1つのまとまった意思っていうのかな?

 気迫が他の部隊と違って、かなりやりずらかったな・・・

 あと、規律が凄く良かった。人族から依頼があってライブラ付近の悪い魔族を退治しに行った時、プライド公がその魔族を倒し、『うちの配下が申し訳ないことをした。』って言って、プライド公自身が謝って回ったり、お詫びの品を置いて行ったりしてたし。」


「うむ、そのような性格もあってプライド公の元には多くのものが集まるのじゃ。

 更に言うと、シン国の清はプライド公に集まり、濁がラース公の元に集まるとも言われておるの。」


それはさすがに言い過ぎでは・・・


「他国の事を言うのもなんですが、それは言い過ぎではないかと・・・」


ルナはエルの眼前にビシッと指を突き立てると、


「言い過ぎではなく、これは事実なのじゃよ。

 昔は武がプライド公へ、官がラース公へ。といわれておったのじゃがの、今はそういわれておるのじゃ。」


昔は、か。


「ルナ、ちょっと聞きたいんだがいいか?」


「ヒロよ、言ってみい。」


「それはラース公が神子になってからか?」


ルナはびっくりした顔で俺を見る。


「良く分かったの。何か情報をつかんでおったのかえ?」


「いや、以前どこかで聴いた記憶があって、もしかしたらと思ったんだ。」


「そうか、市井の間にまで伝わっておるという事じゃな。

 まぁ、今はその話は置いておくとしてじゃ。

 プライド公の人となりはそのような所じゃ。

 因みにわらわはプライド公側の人間じゃ。」


3人共何かを考えている。


「聞いてもいいかな。」


「なんじゃ?」


「そういった人であるなら、私が単身乗り込んだとするとどうなる?」


ミーティアはやはりプライド公と実際に話したいのだろう。


「お主は『元』勇者じゃからのう。良くて追放。悪ければ切りかかってくる可能性もあるじゃろうな。」


「そっか、分かった。ありがとう。」


「いえいえ。」


「私もいいでしょうか。」


次はエルが聞いてみたいようだ。


「プライド公がそのような人であるならば、私がヒロについていって問題は有るでしょうか?」


「問題大有りじゃ。人族の王女、更にラース公の手の者だったというなら、その場で殺されても仕方ないのじゃ。」


「そうですか・・・ありがとうございます。」


どうやら2人共プライド公へ付いていこうとしていたらしい。


ルナが的確に答えていく事で、2人がプライド大公の元へ行くという考えが抑えられてくれると良いが・・・


「そして最後にヒロよ。」


次は俺の番らしい。良く聞いておこう。


「お主はミモザ村へ襲撃した犯人として、プライド公の元へ知らせは届いておるじゃろう。

 わらわはおぬしを信じたが、プライド公も同じかは分からん。

 2台大公の1人、プライド公の助力が得たくば、本気でかからぬばならぬ。

 良いな?」


俺は頷く。


「覚悟が出来ておるならば良い。

 わらわはプライド公側の大公なのでな、わらわの力でなんとか引き合わせてやろう。

 あとはお主しだいじゃ。頑張るとよいぞ。」


「ヒロ、必ず生きて帰ってきてくださいね。」


「ヒロ、死んでもいいけど、真相だけは聞いてきてね。」


「ああ、ルナお願いしていいかな。」


「分かったのじゃ。ならば一眠りして、体を万全の状態にしてから挑むのじゃ。」


「分かった。それじゃ、まずは風呂でも浴びて1寝入りするかな。」


先に入る事を伝えておけば、問題あるまい。


さて、風呂に入って寝るとするかな。

お読みいただきましてありがとうございます。

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