030 入居者ご案内
「そういえば、ミーティアともう1人の女はどうしたのじゃ?」
俺とルナは国境の街から、プライド領へ馬車で移動している。
道すがら、暇だったので話をしていたのだが、女性関係のことばかり聞いてくる。
もちろん今まで女性関係のじょの字すら引っかかったことの無い人生である。
素直にそう話していたのだが、ミーティアと一緒にいた所を覚えていたらしい。
「あぁ、ミーティアは生活費稼ぎで、エルもミーティアについて行ってるんじゃないかな。」
「そうか。お互い行動は把握しとるんじゃな・・・」
ルナは思案げに眉をひそめる
「まぁ、色々とあってね。」
「じゃが魔王ともあろう者が勇者と一緒に行動をするというのは感心できぬの。」
「ミーティアも今は勇者じゃないし、そういうのは気にしないでいいんじゃない?」
「ミーティアはお主が魔王と知っておるのか?」
「いやぁ、さすがにその辺りは内緒にしてるんだけどね。」
「勇者を辞めたといっても、魔族の敵だった人間じゃ、魔王と名乗るのは厳しかろうて。」
少し考えた後、聞きづらそうだが、真剣な顔で
「お主とあの2人の関係を聞いても良いじゃろうか。」と聞いてくる。
これは困った・・・
ミーティアは家に下宿しているだけといえる。
だが、エルはどうだ。
侍女・・・・ではないよな。
一緒に旅をしているが、彼女を縛っていた枷は外れた。
国元へ戻れば王女として保護できるだろうし、その方が安全だろう。
実際提案したこともあるが、その時は話をうやむやにされ、ミモザに任された以上、最後まで責任を取ると言われた。
彼女にも何かあるのだろうか。
知れば知るほど、謎が増える気がする。
「うおっ」
気がつくとルナの顔が目の前にあった。
「わらわよりも・・・大事な存在なのかえ?」
不安そうに聞いてくる。
ぐっ、その顔は反則だろう・・・
「いや・・・、ミーティアはただの下宿人で、エルは家の事を見てくれている人だ。」
「家?じゃと」
ぐぁ、しまった、口が滑った・・・
「ヒロは家を持っておるのじゃな?」
「うん、まぁ成り行きで。」
ルナはうんうんと頷くと、
「旅を繰り返すのであれば、家を持っていて可笑しくもなかろう。
場所はどの辺りじゃ?」
言ってしまった以上、隠しても仕方ない。
確か・・・
「ウエストタウンの端、シン国のグリード領とプライド領の境辺りって言ってたな。」
「なんじゃ、それは・・・、それだけでは分からぬでは無いか。
詳しい地名なぞ聞いておらぬのか?」
「その辺はエルが決めたからまったく・・・」
「まぁ、旅の拠点として求めるのであれば立地はあまり考えずに済むからのぅ。
じゃが、わらわも住むのであれば、立地は知っておかぬばなるまい。」
え・・・?
「今なんと?」
「うむ、夫の家じゃ、妻も一緒に住むのは当たり前じゃろ。」
「いやいやいや、まだ決まって無いですから。」
「酷い、わらわを捨てるのかえ?」
「いや、そういう訳でもなく・・・」
「なら・・・一緒に住んでも・・・いい?」
上目遣いに見上げられる。
潤んだ目が罪悪感を刺激してくる・・・
「エルと・・・ミーティアと相談の上で決めさせてください・・・」
「よっしゃ、言質はとったのじゃ。必ず相談して貰うからの。」
ぐぁ・・・騙された。
「ふっふっふ、まずは地盤固めからなのじゃ」
そう言うとルナは上機嫌に鼻歌を歌いながら景色を眺め始めた。
俺はロリじゃない、俺はロリじゃない、俺はロリじゃない・・・・
ときめいちゃ駄目だ・・・ときめいちゃ駄目だ・・・
ときめいたら、もう後戻りは出来ないぞ俺・・・
「と言う訳で、グリード公に関しては一応決着はついた。」
その後、家に戻りエルとミーティアに詳しい所は省いて説明した。
「あら、后候補ですか、プライド公への訪問と言いつつ、随分と余裕がおありになるんですね。」
エルは若干青筋を立てつつ、夕飯のスープを飲んでいる。
「作戦って、ヒロがぐーちゃんと仲良くなる為の作戦だったんだ・・・
ふーん・・・」
ミーティアも幾分不機嫌な顔で俺の方を見ている。
確かにミーティアの代わりに話をつけてくると出て行く。
数日外泊をして帰ってきたら、話をつけに行った相手から求婚されたという報告・・・
何をしにいっとるんじゃい。っていわれても仕方が無いな・・・
「うまいぞ、なんじゃこのスープは、初めて食べる味じゃ。」
「それは私の国に伝わる伝統的なスープで、トマトをベースとして肉を煮込んだシチューなのですよ。」
元凶はエルの作ったスープに舌鼓をうって、エル並みのペースで食べている。
「ぐーちゃん、これ美味しいよね。私も好きなんだ~。
でも、このスープ、パンをつけて食べると更に美味しいんだよ。」
ミーティアもルナに食べ方を教えている。
3人はすでに仲良しにしか見えない。
だが、俺の目の前にはお湯に肉が数切れのスープと黒パンが一個あるだけだ・・・・何故こうなった・・・
その日は3人でお風呂に入ったらしく、更に仲が良くなったみたいだ。
夜も3人で集まって同じ部屋で寝るそうだ。女性陣はこれなら問題なさそうだ。
但し、風呂の水が無くなっていた俺はお湯で絞ったタオルで体を拭いたし、風呂から出てすぐにミーティアとエルに簀巻きにされて、部屋に転がされた。
・・・・・・泣かないもん・・・・・・しくしく・・・
因みに、ルナの部屋はミーティアの隣の部屋に決まりました。
ルナは俺の部屋の隣を希望したが、ヒロの為だと諭されて決まった。
「それでヒロはどうしたいんですか?」
「どうと言われても・・・」
「ロリコン・・・」
「違うっ、俺はロリじゃないからなっ・・・」
「大丈夫じゃ、わらわはこれでも120歳じゃからな。
ヒロより年上なのじゃ。」
「合法ロリ・・・・・・」
「そんなにゆがんだ性癖をお持ちだったとは・・・
ルナちゃん、部屋はミーティアの隣のほうが安心できますよ。」
「ぐーちゃん、隣ならいつでも遊べるよ。」
「むむぅ、妻と夫は同じ屋根としたというのじゃ。
して、ロリとは何じゃ?」
「知らなくていいことですよ。それにほら、部屋こそ離れておりますが、同じ屋根の下じゃありませんか。」
「それもそうじゃな。ならばわらわはミーティアの隣の部屋を所望するのじゃ。」
「ああ、そうしてくれると俺も助かる・・・」
「ヒロ、私のいない間にぐーちゃんの部屋に入ったら・・・分かってるね。」
背筋に冷たいものが流れる・・・
「大丈夫、分かってるし、するつもりも無いから。」
「ヒロ、わらわはいつでもかまんわぬのじゃぞ?」
「「却下」」
という会話があったような無かったような・・・
ルナに鍵を渡すと、
「えへへ、ありがとなのじゃ」
と言われ、つい顔が赤くなってしまった。
改めて言うが、俺はロリじゃないからなっ。
ミーティアとエルの了承も得て、俺とルナはシン国へと足を踏み入れる。
「手配中の魔王だな。大人しくついて来てもらおう。」
まさか足を踏み入れた直後に拘留されるとは思ってなかったけどな・・・・
お読みいただきありがとうございました。




