029 グリード公 求婚する。
「う・・・ううん・・・」
ルナが目を覚ましたようだ。
「ルナ、おはよう。」
「ヒロか、おはようなのじゃ。
コーヒーはあるか。」
ちょうど淹れたコーヒーがあったので渡してあげる。
「ありがとなのじゃ。」
ベットに腰掛け、ふぅふぅ覚ましながらコーヒーを飲む。
「小腹が空いたのう。つまむ物はあるか。」
待ってる間つまんでいたクッキーを数枚手に乗せてあげる。
「用意してあるとは、流石じゃな。」
そういってぽりぽりとかじる。
「ふぅ。」
飲み終わったのか、カップを寄越してくるので受け取って、新しいコーヒーを淹れる。
「しかし、酷い悪夢を見たのじゃ。」
「どんな悪夢だったの?」
「うむ、わらわが勇気を出して施した吸血鬼化がお主に掛かっていなかったという悪夢じゃ。」
「いや、掛かってはいたけど、陽光に弱かったり、人の血がほしくなるってデメリットがあったから、『凍結』しただけだよ。」
「大丈夫じゃ、そのデメリットも数ヶ月吸血鬼としてすごす事で、ON・OFFが可能となるからのぅ。」
「そうだったんだ。でもさすがに数ヶ月は長いなぁ。」
「これから共に過ごす年月を考えれば、数ヶ月なぞ瞬きのようなものじゃ。」
「でも俺人間だから、そんなに長くは生きれないよ。」
「お主はもう吸血鬼じゃ。OFFにしておれば体も年齢を重ねるが、ONにしておけば年齢はもう変わらぬよ。」
「そっかぁ、でも『凍結』しちゃったからなぁ。『解凍』するつもりも無いし。」
「その凍結とは何じゃ?」
「ん~、こっちの世界で言うと、『封印』に似てるのかな。」
「ふむ、封印か・・・・・・封印じゃとっ。」
いきなり俺をにらむ。
「お主、わらわに隷属しておったのじゃないのか。」
「いや、全然。」
「じゃ、わらわが起きた直後はコーヒーと数枚のビスケットを必ず取る事は?」
「あ、そうだったんだ?
おきるのを待ってる間手持ち無沙汰だったんで、食べていただけだったんだけど。」
「つまりお主は・・・」
どうやらさっきの事は夢で、俺は自分に従っているものだと思っていたらしい。
「あぁ、ごめん。
隷属してる訳じゃないんだ。」
「では、改めて命令する。
吸血鬼化するのじゃ。」
「それは無理。」
「なぜじゃ。」
「人の血を吸うことは出来ないよ。」
「わらわが嫌いなのか。」
「嫌いとかそういうのじゃなく。
まぁ、好きか嫌いかでいえば好きだけど。」
ルナの顔が赤くなる。
「なっ・・・ならば、責任を取ってわらわの伴侶に・・・」
俺は昨日のことを思い出してしまう。
「あっ・・・えっと・・・その・・・昨日は・・・えっと・・・」
ルナも思い出してしまったのだろうか、
「あ・・・あぅ・・・でも・・・その・・・」
2人は固まってしまう。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「あのっ・・・」
ルナが沈黙を破って声を出す。
「昨日は何故、あのようにわらわを求めてきたのじゃ。」
「えっと・・・」
これは困った。
スキルによるデメリットの発動・・・これは説明したら殺されるな。
変身した姿に欲情して・・・これはただの変態じゃないか。
ずっと好きだったんだ・・・後戻りが出来なくなる。
女なら誰でも良かったんだ・・・最低だなっ
魔が差して・・・おいっ
神からの啓示で・・・どんな神様だよ。
君を傷つけずに降参させるにはあの方法しかなかったんだよ・・・この中では一番まともっぽい答えにはなるか?
「あれだけの変貌振り、まるで獣族の『獣化』のようじゃったぞ。」
その答えに思わず体が硬くなる。
その姿を見咎められたのだろう。
「お主・・・まさか・・・」
顔を覗いてくるので、つい視線をはずしてしまう・・・
「『獣化』を使った獣族は戦闘終了後、必ずパートナーと姿をくらます。
戦場で『獣化』を使ったものは、使ったもの同士、もしくは生き残った敵兵を連れて姿をくらます・・・
もしや・・・」
あー、これは気づかれちゃったかな・・・
「じゃが、『獣化』は獣族のごく一部の者のみのスキル・・・」
そういやそう言ってたな。
これはごまかせそうか。
「わらわ達、吸血族は一度だけ相手を吸血鬼に変えることができる・・・と言う事は・・・
お主、まさか獣族の女と・・・」
「してないしてない。俺の初めてはルナだからっ。」
あっ・・・
「えっ・・・」
あ~、ルナの顔が茹でダコのように真っ赤になっている。
そのまま気まずい時間が過ぎる・・・
30分は経っただろうか・・・
これは、正直に話すのが一番だろう。
「あのっ」
「ごめんっ」
「「あっ」」
「先に話すのじゃ。」
「ごめん、先に言って。」
「「あっ」」
うおぉぉぉ、気まずい・・・
「ごめん、実は『獣化』は俺のスキルで所有している。
追い詰められて使用した結果、あのような形になった。」
「・・・・・・・・・そうであったか。」
そしてまたしばらくお互い黙り込んでしまった。
「詳しく聞いても・・・良いかの?」
俺は彼女の大事なものを奪った事に変わりは無い。
誠意を見せる為にも全てを語るべきだと思い、物心付いてから今までの事を、ルナに求められるまま話して聞かせた。
長い話となったが、幸い時間だけはいくらでもあったので、途中お昼を交えつつ、色々と話し合った。
ルナも自分だけが聞いていてはと、ルナの事も話してくれた。
腹を割って話し合ったからか、最後の方には随分と仲良くなっていた。
最後には、
「それで結婚の話じゃが・・・」
「うん・・・」
「わらわはお主でよいと思っておる。
嫌なら、吸血鬼化はせずとも良い。
わらわでは・・・嫌か・・・?」
と言ってきた。
俺もここではぐらかす訳には行かない。思っていることを正直に言った。
「ごめん、正直言うと、ルナとすぐに結婚って思う事はできないんだ。」
ルナはさびしそうな顔をして
「そうか・・・」
「でも、それは今はって事なんだ。
だから時間をもらえないだろうか。」
「それって・・・」
「俺は召喚された身だから、この先どうなるか分からない。
だから、約束する事ができないんだけど、この先自分がどうしたいか。
どう生きていく事ができるか分かったら、その時にもう一度返事させてもらっていいだろうか。」
ルナの顔に喜びが浮かんでいく。
「待たせる事になって申し訳ないとは思うけど、ルナが待ってくれるのであれば・・・もう一度チャンスをもらえるのであれば、しっかり考えて返事をさせて欲しい。」
彼女は飛び切りの笑顔で答える。
「もちろんじゃ。」
「ありがとう。」
で、終わるはずだったんだが、何故こうなった・・・
「では、お嬢様業務は滞りの無いよう進めるのでご安心ください。」
「この許可証があれば、お嬢様が居なくても何とでもなるから大丈夫だよ。」
「お前は一言多いっ」
「っつ~、姉さん相変わらず手が早いよ。」
「ヒロ様、お嬢様の事はくれぐれもよろしくお願いいたしますね。」
「ヒロ様、あまりハッスルしすぎないようにね。」
「え~っと、何故こんなことに?」
「ヒロが逃げ出さないように見張るのじゃ。」
「お嬢様はヒロ様と一緒に居たいと申しております。」
「違うのじゃ、ヒロが逃げ出さないように見張るだけなのじゃ。」
「あの夜の事が忘れられないんだってさ。」
「違うのじゃーっ!!、もうお主ら、領に戻ってわらわの代わりを務めるのじゃっ。」
「「お言葉のままに」」
と言って、2人はグリード領へ戻っていく。
「ヒロ、これからよろしく頼むのじゃ。」
どうやら同行者が1名増えたようです。
エルとミーティアには、内緒に・・・・しておけないだろうな。
これはタブにハーレムを追加するべきでしょうか。
初期プロットではもてないはずだったのですが・・・
お読みいただきありがとうございました。




