026 グリード公と三顧の礼
それから3度襲撃があった。
1度目は乗り合い馬車での休憩中。
「見つけたのじゃ、覚悟ー」
と言って、自前の馬車から飛び降りて・・・こけた
「ふ・・ふぐっ・・・、痛く無い痛く無い・・・」
あーあー、気の毒なくらい痛そうだ。
「大丈夫か、ほら『ヒール』これで痛くなったんじゃないか。」
「一人旅をするなら、回復魔法は必須です。」と言われて恐る恐るコピーさせて貰った『回復魔法』スキルを発動する。
「余計なお世話なのじゃ、全然痛くなぞなかったのに。」
「うん、そうだね、勝手なことしてごめんね。」
というと、今度は
「でも、ありがとうなのじゃ。」と顔を赤らめて言ってくる。
かっ・・・かわええ・・・
思っていたけど、素直なグリード公は可愛い。
だがどう見ても小学生・・・下手しなくてもロリだよな・・・
「きょっ、今日はこの辺にしておいてやるのじゃ、また夜にでも会うのじゃ。」
といって、先ほど飛び降りた馬車に乗って去っていく。
「兄ちゃん、今の彼女かい。」
とか言われてしまった・・・
一体何しに来たのか・・・
まぁ、回復魔法が役立って良かった。
2度目は、中継地点の町で泊まっている時
「ふははははは、我参上っ。」
と、窓の前に立って、窓をしきりに叩いてる。
これは窓を開けろということなんだろうな。
窓を開けると、グリード公とお付きの人2人が入ってくる。
「魔王よ、今日こそ罪を償って貰うのじゃ。」
俺はしっかりと彼女を見て、
「うん、ほんとごめん。
許して貰えないかな。」
「・・・・・・・・・・・・」
謝罪を聞いたグリード公はしばし黙った後、
「許してほしくば、その血で抗うのじゃ。
お主達も力を貸せ、この男を血祭りに上げるのじゃ。」
「謝ったのにっ」
「誠意がこもっておらんわっ。」
「ですが、グリード様ここは宿屋の中です。迷惑になります。」
お付きの人が心配する、
「問題ありません。事前に部屋で大きな騒ぎが起こるだろうが、気にしないでくれと言って金貨2枚置いてきてある。」
と、もう1人の人が言ってくる。
「では、行くのじゃー」
この前と同じように光球を出現させると、俺に向けてはなってくる。
お付きの人も風の矢や氷の矢を放ってくる。
「悪いけど、俺も死ぬ訳に行かないんでねっ。」
避けたり、刀で魔法を打ち消しつつ、まずはお付きの人の懐にもぐる。
すれ違いざまに懐に一撃を決め、脇をすり抜ける。
「なっ、早いっ。」
移動速度に驚いて、詠唱しつつ短剣を取り出したもう1人のお付きさんは、ある程度離れた所から居合で倒す。
「2人ともっ、おのれっ、2人の仇なのじゃー。」
グリード公が光球での攻撃方法を辞め、体の回りを光で覆った。
「はぁぁぁぁぁ~」
グリード公が力を溜めるのにあわせ、纏った光が大きくなっていく。
まずい、このままじゃ、宿屋が潰れる。
俺は焦った。全力でグリード公の懐に飛び込むと、刀の柄でみぞおちの辺りを突くが、光は止まらない。
グリード公は意識を失う直前、溜めていた光を右手に乗せ、俺に打ち込んでくる。
ぎりぎり避ける事に成功したが、余波を受けて体の自由が利かなくなる。
食らって判ったが、光は雷属性の魔法だったようだ。
スタンガンを押し付けられたように、意識を刈り取られていった。
そして翌日。
目が覚めると、抱き枕のように俺の手の中にすっぽりと入っていたグリード公がいた。
顔を真っ赤にして俺が目を覚ますまで動けなかったらしい。
お付きさんは峰打ちだったので、早めに目が覚めたが、すでにこの状態だったため、ニマニマと事の成り行きを見守っていたらしい。
いろいろな意味で良い従者を従えているようで・・・
もちろん目を覚ますと、グリード公は俺の手の中から逃げ出て、
「昨日は負けた訳でないのじゃ。満月ならお主なぞ簡単に倒せるのじゃ。」
と言って逃げ去っていった。
従者は
「どうもお邪魔しました。」
「また来ると思うので、呆れずにお相手してあげてくださいね。」
と言って付いていった。
宿屋の親父さんからは、
「派手にやったもんだね~。
聞いてるよ、夫婦喧嘩だって?若いのに大変だねぇ。
修理代は貰ってる分で十分間に合うから、気にせず追いかけな。」
と言われてしまった。
3度目の襲撃は更に次の街で宿屋に泊まっていた時。
まず、宿屋に泊まる時、
「夫婦喧嘩の兄ちゃんだね。
話は聞いてるよ、ちょっと高いけど、壊れにくい部屋があるからそこ使っとくれ。」
とか言われた・・・
おとなしくその部屋を借りて寝る準備をしていると、扉がノックされる。
扉を開けるとそこにはグリード公とお付き2人が立っていた。
どうも3日後に満月の夜になるので、その日にあわせて決闘を行いたいと言われた。
3日後だと、次の街に付く頃だと答えると、場所はそこで構わないと言われた。
結局、次の町の町外れで決闘を行う事が決まってしまった。
グリード公は終始もじもじしていて、取り決めはお付きの人と決めたが、最後にだけ。
「満月は我の最大の力を発揮できる日。首を洗って待ってるがいいぞ。」
と言って帰っていった。
翌日宿を出る時、
「昨日は嫁さんすぐに帰っちゃったねぇ。
なんだい、仲直りできたのかい。良かったねぇ。」
否定だけしておこうかと思い、
「いや・・・」
「ありゃま、最後通告でもつけられたのかい。
いいかい、どっちが悪くても構わない。こういう時、男は謝って謝って謝り倒すんだ。
そうすりゃ、嫁さんも折れてくれるさ。」
アドバイスを貰ってしまった。
将来役立てる事にしよう。
そして3日後、ライブラもこの街で終わりとなる。
国境なだけあり、強固な城壁に囲まれている。
いつも通り次の日の乗合馬車の予約と、宿屋を取ると、夕ご飯を食べに外に出た。
ちなみに宿屋は、記入した宿帳を見ると、
「おや、夫婦喧嘩の旦那さんの方かい。
なら、この宿一番頑丈なこの部屋に泊まって貰って構わないかい。
宿代は補修費が出ない限りサービスしておくよ。」
といわれた。
本当に俺達の事は何処まで知れ渡っているのだろう・・・
実は今日、決着つけるんでもう大丈夫ですよ。
と言うと、
「そうかい。いいほうに転がるといいね。
でも良いかい、男たるもの、何があっても謝り倒して許して貰うんだよ。」
この世界、嫁さんに頭が上がらないのが一般常識なのだろうか・・・
夕食を食べている最中も、俺を見てヒソヒソ話をする人達がいる。
さすがに夫婦喧嘩とか話しているんじゃないだろうな・・・
いかんな、どうも過敏になっているようだ。
客は俺と奥のテーブルを見比べている。
何だろうと視線を追ってみると、・・・・・・居た
お付きの人になだめられているグリード公が、奥のテーブルで俺の方へ皿を投げようとしているらしい。
これを見てヒソヒソ話をしていたのか。
グリード公は俺と視線が合うと、構えていた皿を何事も無かったかのようにテーブルに戻し、残りを食べ始めた。
悪い予感がしつつも、俺も残りを食べ終えると、後ろから声がかかった。
「食べ終わったのであれば、町外れに付いて来て貰うのじゃ。」
俺は逃げ出さないようにとグリード公に手をつながれて、町外れまで歩いていった。
町の人達、特に男からの視線が痛かったとです。
お読みいただきありがとうございました。




