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023 勇者の真実

先ほど入ってきたエントランスを出ると、休憩中の乗り合い馬車が出発準備をしている。


「お、戻ってきたな。出発して大丈夫かい。」


御者のおじさんが声をかけてくれたので、すぐに乗り込む。


エルとミーティアは部屋をどうするか話し合っているので、おばちゃんに声をかける。


「そういえば、あの家の立地はどうなってるんですか。」


「立地は今から向かうウエストタウンの端、シン国のグリード領とプライド領の境辺りにある家さね。

 辺境なんで、普通に住む分には困る事も多いけど、旅人の拠点とするには問題ないだろうさ。

 嬢ちゃんから、かなり遠い国から来たって聞くし、ある程度詳しく説明するさぁね。」


と言って、家の事を色々と説明して貰った。


とりあえず、この鍵が一番重要なものなので無くしてはならないということは分かった。


魔力による認証が必要だそうなので、さっそく認証をしておく。


同じように話の合間をぬってエルとミーティアにも魔力認証をしてもらい、合鍵を1つづつ渡しておいた。


家具も必要なものは一通り揃っているが、消耗品などは別途用意が必要と言う事で、ウエストタウンに着いたら買出しを行わないといけないだろう。


2人とその辺は何が必要か話をしていると、御者さんが馬車を止め。


「今日の行程はここまでとなります。

 各自邸宅をお持ちの方は、邸宅へお戻りください。

 私共はここで馬車を見つつ野営いたしますので、邸宅をお持ちでない方は、ご一緒に野営される事をお勧めいたします。

 なお、明日の出発は7時となっていますので、お忘れないようお戻りくださいませ。」


と今までとは違った口調で朗々と話す。

多分営業文句なんだろうな。


「ヒロ、契約しておいてよかったですね。

 今日は野営をしなくてすみますよ。」


「ヒロ、悪いわね。

 きちんと借り賃は払うけど、今日の所は勘弁して貰えるかな。」


2人はすでに戻る気満々のようだ。


俺達は鍵を使って邸宅へ戻ると、それぞれ中央右側が俺の部屋、左がエルの部屋。壁側の右端がミーティアの部屋とそれぞれ自分の部屋を決める。


エルはさっそくキッチンへ移動すると、何やらごそごそやっている。


どうやら夕飯の準備をしてくれているようだ。


俺も料理スキルはあるので、何か手伝いが必要か聞いたら、

「座って待っていてくださっていいですよ。」と言われた。


新婚気分を味わう事ができて満足であるが、何もしていないのも悪いと思う。


屋敷を探索してみると、風呂まであった。


トイレはどこにでもあったが、風呂はぬれた手ぬぐいで拭くだけで済ますのが一般的なこの世界、風呂が常備してあるのはかなり嬉しかった。


早速風呂を入れようとすると、

「ヒロ、お風呂入れるの?

 私も手伝おうか。」

とミーティアが声をかける。


「大丈夫だよ」と答えて蛇口をひねると、一気に体の力が吸い取られる感じがする。


足の力が抜けて、浴槽のヘリに手を突くと、


「ほら、ヒロの魔力量じゃ、お風呂入れるのに時間かかっちゃうよ。」


と言ってミーティアが蛇口に手をかけると、勢い良くお湯が噴出す。


「そういえばヒロはかなり遠い国から来たんだよね。

 この蛇口良く見て。

 中央に青い宝石がはまっているでしょう。

 これは水の魔法玉になっていて、魔力を流し続けると、お湯を出してくれるんだ。

 他にもこの館は魔法玉を使う所が多いから、何か必要な事があれば、いつでも頼ってくれていいよ。」


ミーティアは全然辛くなさそうに、お湯を出しながら俺に話しかけてくる。


「そういえば、ヒロってば私と同じ黒目黒髪だよね。

 それにこの世界の常識ほとんど知らない事を見るに、エルの召喚獣か何か?」


「この世界は、召喚術を使える人っていっぱいいるのか。」


答えずに質問で返すが、ミーティアはあまり気にした様子も無く話を続ける。


「そうだね、生まれ持ってのスキルだから数は多くないだろうけど、珍しい「けど」ってぐらいには居るかな。」


「ふ~ん。人間を召喚するのも一般的なんだ?」


「私もそうだけど、人を召喚するのはかなり力が要るみたいで、召喚師が1生に1回出来るかどうかかな。」


「そっかぁ、実は俺「はぐれ」らしくてね。この世界の事も召喚のことも良く分かってないんだよ。」


「えっ」


ミーティアは目を丸くする。「はぐれ」は珍しい事なんだろうか。


「いいなぁ・・・ヒロって「はぐれ」なんだ・・・」


「そんなにいいことか?」


「うん。」


「でも色々な人に助けて貰っているから何とか生きて行けているけど、結構大変なんだぜ?」


「でも、戦いを強制されないからいいよ。」


ミーティアはほの暗い目で言ってくる。


「ヒロが「はぐれ」って言ってくれたから、私も告白するよ。実は私もはぐれ召喚獣なんだ。」


「そうか・・・」


エルから聞いてある程度は分かってはいたけど、本人が話してくれる事をさえぎる必要はない。


「私は5年前、10歳の時に召喚されてね。

 その後、訓練や召喚師の命令で色々な国を旅してきたんだ。

 色々な国で、大きな顔をしていた魔族を倒していたんだけどね、私が魔族を倒すと召喚師もその土地の人もいっぱい喜んでくれたんだ。

 でも、魔族にも事情があるってこと、私は知らなかったの。

 命令で私が回っていった国はどんどん1つになっていって、魔族を駆逐するべきって大きな連合国になったんだ。

 戦うしか能がなかったからね。

 色々な所で利用されているって知らなかった。

 私が気づいた時にはもう、どこにも逃げられなかった・・・

 でも、そんな時に転機が訪れたの。

 ある大戦では連合国内の王女の護衛って事で、前線近くに行ったの。

 どこからか情報が漏れていたのかもしれない。

 魔王が数人の部下を連れて、休憩中の陣営を強襲した。

 私は応戦したけど、魔王相手じゃまったく手が出なかった。

 魔王は王女様を含む何人かを拉致すると最後に、

 「泣きながら剣を振るものじゃない。これは可愛そうな少女への餞別じゃ」

 と言って、何か呪文を唱えると、私にかかっていた召喚獣の呪縛が解けたの。

 私は何で?って聞いたわ。

 すると魔王は「ちとやっかいな奴に絡まれてのう。仕返しの1つと思っておけば良い。」

 ってさ。

 私のこれまでの5年はなんだったの?って言いたかったけど、それと同じぐらい凄く感謝した。

 それからはこっそりとこの街でその日暮らしをしていたんだけどね、ある日魔王が勇者に殺されたって聞いたんだ。

 その勇者の名前を聞いたら笑っちゃうよ?『勇者ミーティア』が魔王を倒したんだって。」


彼女の怒りをあらわすように、蛇口からでるお湯の量はどんどん増していく。


「私は真犯人を絶対に許せない。

 魔王は私の恩人であり、本当に世界を良くしようとしていた人・・・

 真犯人を探す中、いろんな情報を聞いていくことで、それは確信に変わった。

 そんな人を暗殺したなんて、許せるわけが無いのよっ。

 今は、シン国のプライド大公が、何か本当のことを知っているって情報を仕入れたわ。

 必ずっ、真犯人を懲らしめてみせるんだから。」


浴槽からお湯が溢れ出す。

あちっあちっ。


「ミーティア、止めて止めて。

 お湯があふれてる。」


声をかけるとミーティアが気づいて、


「あ、ごめんなさい。つい・・・

 話しすぎちゃった・・・ヒロ、今の話は聞かなかったことにして・・・」


「ああ、嫌な気分にさせてごめんな。」


ミーティアは熱に浮かされたような足取りで自分の部屋へ戻っていく。


どういうことだ・・・

魔王を倒したのは勇者ミーティアじゃなかったという事実が本人から告げられた。


だが、世界は魔王を倒したのは「勇者ミーティア」である。とはっきり決めている。


人族だけでなく、魔族であるシン国まで伝わっている。


ミーティアは、プライド公から真実を聞きだすといっていた。


俺はラース公の真意を聞くためにも、プライド公の助力を得なければならない。


2人を対立させない為にも、ミーティアをプライド公へ合わせない様に動いた方がいいだろう。


・・・・・・・俺は色々と頭の中を整理すると、ひとつの結論を導き出した。


よし、エルに丸投げするか。


お読みいただいてありがとうございます。


実は前魔王を襲ったのは勇者じゃなかったんです。

ある程度先が読める方は、分かっていたかもしれませんね。

他にもすぐに気づかれそうな所は多いですが、作中で紹介された時に「ああ、やっぱり」と思ってください。

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