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020 永世中立国ライブラ

ラスト公秘蔵のワープゲートを抜け、階段を上った所にある扉を開けると、そこは色街だった。


派手な衣装やきわどい格好をしたお姉さん達が様々な男性に声をかけている。


女性の方も人族や獣族を始め、鬼のような角を生やした女性や悪魔のような尻尾を生やした女性もいる。


男性はまぁ、人のことをとやかく言えないが、鼻の下を伸ばして誘ってくる女性のお尻に手を伸ばす助平ばかりだ。


いたたまれなくて、後ろのエルを見る事ができない。


「君可愛いね。見た事無いけど、新しくこの町に来た子?

 うちはマージンを取りはするけど、しっかりとした組織だし、働き甲斐はあると思うよ。」


「いえ、私はそのような理由で来た訳ではなく・・・」


「じゃ、誰かを探しに来たのかな。

 なら力になれると思うから、一度うちの事務所へおいでよ。」


どこかで聞いたことのあるような文句が後ろから聞こえてくる。


意を決して後ろを振り向いてみると、ちゃらそうな茶髪で人族のお兄さんに詰め寄られているエルが困っていた。


どこにでもこういう人間はいるんだな・・・


「悪いけど、その子俺の連れなんですが。」


「あらま、男連れでその扉から出てくるとは、訳有りかい。」


茶髪が声を潜めると、


「なら、なおさら一緒に来てもらう必要がある。」


と言って天秤の絵が描かれた手帳を見せてくる。


「それは」


エルは顔色を変えて茶髪の顔を見る。

そして緊張した面持ちで、「付いて行きましょう。」と言ってくる。


俺は訳が分からなかったが、エルの緊張した表情を見て大人しくついていくことにした。


-----------------------------


俺とエルは茶髪に連れられて、20分ほど歩いた所にあるビルの一室に来ていた。


「この手帳の意味を知っているとは、やはり御二人は扉を通ってきたのですね。」


先ほどとはうって変わった口調で茶髪が言うと、


「ライブラの中核メンバーが見張りを行っているとは何かあったのですか。」


「申し訳ありませんが、捜査上の機密の為お話しすることは出来ません。

 ですが、御二人の目的は知らなければなりません。」


どういうことかエルに説明を求めると、エルではなく茶髪が答えてくれた。


「これは失礼、私『中立国ライブラ』の保安局の者です。」


といって、先ほども見せた手帳を見せてくる。


「ヒロ、この方はこの国の中立性を保つべく、組織された隠密騎士団のようなものとお考えください。」


どうやらCIAみたいなイメージが浮かんでくる。


「で、何故俺達はその保安局に連行されたんだ。」


「あの扉はごく一部のみに開放されているワープゲートの出口。それは通ってきた貴方は分かっておいでですね。

 現在、この国の均衡を保つ為その一部の方にも事情をお聞きしなければならないのですよ。」


「その理由を聞くことは」


「もちろん出来ません。」


ちょっとムッとする。

だが、警察みたいなものと思って、素直に目的を告げる。


「プライド領へ向かうのに、このワープゲートが一番近かったので使わせて貰っただけですよ。」


その答えを聞いて、茶髪は一層いぶかしげな表情になる。


「人族がシン国へ向かうのですか。」


「何かいけないのですか。」


確かシン国は魔属の国だが、人族も暮らす事は可能なはずだ。


「失礼ですが、御二人とも人族のように見受けられますが。」


「シン国は人族でも受け入れられると記憶しておりましたが。」


「確かに人族が魔国へ向かう事が無い訳ではないが・・・」


エルが俺に耳打ちしてくる。


「確かにシン国は人族も受け入れる国ですが、今は戦時中なのです。

 逆にスパイの手引きで中立性を汚されると考えられる可能性も有ります。

 私に任せていただけないでしょうか。」


「ごめん、イラっと来てつい話してしまった。フォローお願いしていいかな。」


「ええ、お任せください。」


エルは茶髪に向き直ると、


「私達はどうしても人族の国にいる事ができない立場なのです。

 どうか大人しくプライド領へ向かわせていただけないでしょうか。」


「それは訳ありということですか、犯罪の逃亡と言う事でしたらわが国の名にかけて、なおさら通す事はいたしかねますが。」


茶髪は更に訝しげに俺達を見てくるが、エルはやわらかな笑みで返すと、


「私の顔に見覚えは無いでしょうか。」


茶髪は改めてエルの顔をしっかと見ると、顔を青ざめ始める。


「まさか・・・」


「ええ、中立国とは言え、ウェンディア第3王女の顔ぐらいは知っていてしかるべきと思っておりますが。」


「なぜ王女様がこのような所に」


「先ほども申したように、人族の国にいる事が出来なくなったのです。

 ですので、人族も平等に扱うと言うプライド公の元へ身を寄せる事ができればと思って。」


茶髪は改めてエルの顔を見ると、次は俺の顔を見る。

そして机に向かって何かうなり始める。


時間としては数秒程度だが、緊迫した空気が何分にも何十分にも感じられる。


「大変不躾な事をお聞きしますが、軍事行動中の謎の行方不明と言うのは。」


茶髪が意を決したように質問すると、エルはそっと目を伏せた後、顔を横に逸らし、


「多分、ご想像の通りだと思います。」と告げる。


「た・・・たたた・・・、大変失礼いたしましたっ」


さっきまでとうって変わり、今度は茶髪が気まずそうに俺達を見ている。


「ですので、私達と貴方は会わなかった事にしていただけると、助かるのですが・・・」


「分かっております。そんな事情とはつゆ知らず、大変手間を取らせてしまい、申し訳ございませんでした。」


「いえ、私達にも非があったこと、捜査官殿が悪いわけではございませんから、頭をお上げになってください。」


「ははぁ。」


「もちろん、分かっているとは思いますが?」


「ええ、そのようなお忍びであれば、もちろん中立性に抵触はございません。」


「それなら良かったですわ。

 あと、お願いしたい事があるのですが、宜しいでしょうか。」


「はっ、本官に出来る事であれば何なりと。」


「彼が呼び止められた理由を知りたがっているのと、同じような事が起こらないよう、対策を考えて欲しいのですが。」


完全に立場が逆転している・・・

エル恐るべし・・・


この茶髪は保安局の中でもかなり偉い人だったらしく、「絶対に内緒にしてくださいよ。」という前置きの元、原因を教えてくれた。


なんでも人族の勇者が魔王討伐後行方をくらましたらしい。


その行方がライブラ国内で見かけられた事例が立て続けに起こり、勇者を匿っているとしてシン国の公爵がライブラへ宣戦布告を行ってきたそうだ。


永世中立を掲げるライブラとしても見過ごす事はできず、中立を保つ為にも勇者を見つけ出し、人族の国へ帰って貰うか、シン国の公爵へ引き渡さ無ければならない事態になったそうだ。


そのため、保安局の偉い人から下っ端まで総動員し、国内をしらみつぶしに探していると聞いた。



何故勇者が魔王討伐後に人族の国で奉られるのではなく、国外逃亡を行ったのか。


宣戦布告を行っている公爵とは誰か。


ラースさんが言っていた、勇者による魔王の暗殺という事態が関与していると思える。


今の所、俺達には関係無いと思うが、こういうフラグって何かに影響するからな・・・



因みに、同じように保安局が声をかけると言うことが無いように、『特別通行手形』と言う物を発行してもらった。


プライド領に行くまでに幾つかの町を経由する事になるが、各町で同じ事が起こらないよう、手形を見せれば問答無用で通る事ができると言われた。



悪用もできる為、終わったら処分して欲しいと言われたが・・・多分大事に取っておきそうな気がする。


転移早々、変な事件に巻き込まれたがエルのお蔭で便利なものも手に入った。


まずはプライド領を目指し、次の町を目指そう。



余談になるが、あのワープゲートは各国の高官のみにこっそりと伝わる、ムフフな事をする為のワープゲートらしい。


今度機会があったらサトリに密告して置こう。

念のため言っておきますが、作者が特別に警察が嫌いで、こういうイメージを持っているわけでは・・・・・ありません?よ?


お読みいただきありがとうございました。

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