はぐれ魔王の恋愛事情 001 アイーシャ・トリス・ミモザの場合
私はその日、村の子供達と森へ薬草を採集に行った。
うちの村はラスト領の中でも辺境だけど、重要な場所だっておじいちゃんが言っていた。
「近くにワープゲートがあるから、偉いお客さんが来る事が多いし、万が一ワープゲートが悪用された時は、村で止めなければならないって。」
私が良く分からない顔でおじいちゃんを見ていたら、「大人になれば分かるから大丈夫だよ」といって頭をなでてくれた。
そんな村だから、各種薬草をそろえておくのは大事。
近くの森の薬草を採取するのは、子供達皆で集まっていくのが日課になっている。
だけど、その日はいつもと違う日になった。
いつもは仲良くしてくれる狼さんが、私達を襲ったの。
最年長のユーリが「魔素に侵されて魔獣になってしまった。皆僕が後ろを見るから逃げてっ」と言ってけん制していたけど、狼さんは数が多く、その内に囲まれて逃げる事ができなくなったの。
最初は私より2つ年下で最年少のアイリが泣いて地面に座っちゃったんだ。
そしたら皆泣きながら地面に座り込んじゃった。
ユーリや私やカイトやクレハで何とかけん制していたけど、狼さんの輪が小さくなって来て、私は「襲われる」ってぎゅっと目をつぶっちゃった。
でも来たのは狼さんじゃなく、人族の男の人と、飛天族の男の人だった。
人族の男の人は狼さんを打ち倒しながら私の側に来ると、
「大丈夫、もう怖くないよ。」
と言って優しい目で話しかけてくれた。
私が見ていると、人族の人と飛天族の人が連携して、狼さんを全部追い払ってくれた。
安心した私はつい泣き出しちゃって、すぐ近くにいた人族の人にしがみついちゃった。
私はいつの間にか寝ちゃったのか、気がつくと馬車に乗せて貰っていた。
周りを見ると他の皆も居て、誰も怪我をしていなかった。
人族の「お兄ちゃん」は皆が怖がっているか心配して、見た事も聞いたこともない遊びで私達と遊んでくれた。
村に戻ると、馬車から降りてきた私達を見て、大人の人たちが「何事かっ」と言って集まりだした。
私が皆を代表して、村長をしているおじいちゃんに理由を説明すると、おじいちゃんを初めとして、村の皆がお兄ちゃん達にお礼を言っていた。
私もすごくお礼したくて、本当は宿屋さんがあったんだけど、お兄ちゃん達がうちに泊まってくれるよう、おじいちゃんにお願いしちゃった。
おじいちゃんも「うちでしっかりとしたお礼がしたいのう。」と言ってうなずいてくれた。
その日の夜は年に一回しか食べないご馳走が山のように出て、お兄ちゃん達も喜んでくれていた。
ご飯の後は、お兄ちゃんにいっぱい遊んで貰った。
でも私にはお兄ちゃんにできるお礼が無いな・・・
そうだ、お母さんの形見の1つだけど、あのネックレスならお兄ちゃんも喜んでくれるはず。
お兄ちゃんに受け取ってって渡すと、「気に入ったよ」って言ってくれた。
良かったー。
夜は客室の方で寝るからと言って、離れの方に行ったみたい。
でもお兄ちゃんは明日には帰っちゃうから、こっそり夜中にお兄ちゃんの部屋に遊びに行こうと思った。
夜中にこっそり目を覚まして、部屋を出ようとすると、外から物音が聞こえてくる。
こっそり抜け出したのがばれたら怒られると思って、私は急いでベットの下に隠れた。
外から誰か入ってきたみたいで足音と匂いがする。
この匂いはお兄ちゃんと一緒にいたお姉ちゃんの匂いに似ているような気がする。
何だろう。今は出ちゃいけないような気がする。
すると、ベットの横に歩いてきた人影が光る何かをおじいちゃんとおばあちゃんに向けて下ろすのが見える。
さっきよりも怖い感じが更に強くなってくる。
私は震える体を抱きしめて、人影が見えなくなり、匂いが完全に消えるまで待った。
おじいちゃんやおばあちゃんの居た辺りから、水が落ちてくるような音がする。
私は理解した。
おじいちゃんもおばあちゃんもさっきの人に殺されたんだって・・・
こんな時にお父さんが居てくれれば・・・
もっと前に死んじゃったお母さんが、「お父さんが生きていてくれれば」っていつも言っていた。
お父さんの形見だった鏡があれば勇気が出るはず。
私は勇気を振り絞って鏡台の方へ歩いていく。
バンッ
大きな音がして、部屋の扉が開かれる。
さっきの怖い人が来たかもっ。
ギュっと身が縮こまって、せっかく見つけたお父さんから貰った鏡が地面に落ちる。
カタンッ
扉の所の人が鏡の光で照らされる。
お兄ちゃんだっ。
私は無我夢中で、鏡を拾うとお兄ちゃんの所に駆け寄った。
「おじいちゃんやおばあちゃんが、お父さんやお母さんみたいに死んじゃった・・・」そう言ってお兄ちゃんに抱きつく。
お兄ちゃんは「今は生き延び無ければならない。逃げるよ。」と言って、私を外に連れて行ってくれる。
そこにはおじいちゃん、おばあちゃんを殺した人・・・・でも何かが違う気がする。
お兄ちゃんは他の皆も助けようとしてくれるけど、お姉ちゃんは反対する。
お兄ちゃんは逃げながら助けるって言って、馬車を走らせて村から出た。
途中、村の皆は誰も居なかった。
隣の家のおじちゃんもおばちゃんも、いつも私を助けてくれたユーリも、一緒に遊んでいたクレハも・・・
もう、誰も居ない。
私にはもう、お兄ちゃんしか頼る事のできる人は居ないんだ。
私はいつの間にか眠っていたみたいだった。
次の日、起きると今度はお兄ちゃんが起き上がれなくなっていた。
お姉ちゃんに聞くと、「筋肉痛」っていう病気で立ち上がることすら出来ないそうだった。
お兄ちゃんまで死んじゃやだ。
私はおねえちゃんに聞きながら、一生懸命看病した。
夜には「筋肉痛」が直ったみたいでお兄ちゃんはぴんぴんしていた。
お兄ちゃんが元気になってくれて本当に良かった。
そして私たちは首都ラストへ到着した。
初めての首都だったけど、私はここで驚きの再会をする事となった。
最初は村の襲撃犯って言われて「違うっ」って叫んじゃったけど、どこかの部屋に連れていかれた。
私はお兄ちゃんが犯人じゃないって知ってる。
お姉ちゃんは何か変な気がするけど、お兄ちゃんだけは絶対に違うもん。
お姉ちゃんがお兄ちゃんに不安になる事を行っていたけど、私が頑張ればきっとお兄ちゃんが無実なんだって分かって貰えるはず。
そこに入ってきた人を見て驚いた。
犬耳の騎士の人はさっき会ったけど、その前に居る人。
私が幼い頃、お母さんと一緒にいてくれた人。
お母さんがいつも絵姿を持って泣いていた人。
記憶に残っている人。お父さんだ・・・
生きていたんだ・・・
私は「お父さんっ」って叫びたかったけど、何故かお父さんは私の声を遮る様にしてお兄ちゃんに話しかけている。
お父さんは私に向き直ると、
「今回も守る事ができず本当に済まなかったね。」
と言ってきた。
やっぱり私のお父さんだったんだ。でもこっそりと内緒って囁いてお兄ちゃんのほうへ行っちゃった。
何で言っちゃ駄目なんだろう?
その後も色々と話をしているみたい。
途中で私を部屋から出そうとしたけど、私はお兄ちゃんとお父さんの居るここに居たい。
その後も難しい話をしていた。
そんな時だ、あの時の怖い匂いがしてきたのは。
お父さんはその匂いの元、お姉ちゃんに剣を向けると、言い争いを始めた。
お姉ちゃんはあの時の嫌な匂いを出しながら、お兄ちゃんにお父さんを切れっていってる。
お兄ちゃんは私を守っていた兵士さんを殴っちゃった。
お兄ちゃん、兵士さんは悪くない。お姉ちゃんの方が悪いの。
だから、お父さんに内緒って言われてたけど、言っちゃった。
「お父さんを信じてあげて。」って・・・
お兄ちゃんは私を信じてくれて、お姉ちゃんと戦った。
最後には銀狼になったお父さんが、お姉ちゃんの武器を噛み砕いた事で戦いが終わったみたいだったけど、あの時のお父さんもかっこよかったな。
私も何時かあんなかっこいい姿になれるんだろうか。
でもその晩、何故かお父さんの部屋に行ったら兵士さんに止められた。
なんでも「今日だけは教育によくないから、駄目なんだよ」って言われた。どうしてなんだろう。
あの日以来、時々罪悪感が沸いてくる。
なんで私だけが助かったんだろうって・・・
私は1人じゃ寝るのが怖くて、ついお兄ちゃんと一緒に寝ちゃった。
はしたない女って思われたかな・・・でもお兄ちゃんと一緒に寝れて幸せ。
次の日はお父さんが体に女性の匂いを染み付かせて、お兄ちゃんに私と寝るとは何事だーって怒ってたから、私もお父さんにつれない態度をとっちゃった。ちょっとだけ反省。
それから私は正式にお父さんの娘と公表されて、礼儀作法とか、領を管理する勉強とかを学ぶ事になった。
時々時間を見つけてはお兄ちゃんたちとご飯を食べたり、お姉ちゃんの看病に行ったりしていたけど、勉強つまんないー。
でも、お父さんが言ってた、お兄ちゃんの為にも勉強は必要だって。
だから、丁寧語?とかもしっかりと勉強するです。
何日そんな事を繰り返したのか、そんなある日、お兄ちゃんは楽しそうな顔をして帰ってました。
聞いてみると、何でも師匠と呼んでいる人と街へ行ってきたみたいです。
街か~、いいなぁ、私もまだ外に出た事は無いんだよね・・・
でも、話を聞いていくうちに私は気づいてしまったのです。
師匠って女の人なのですよ。
しかも話を聞いてると、まるでデートです。
お兄ちゃんは気づいていないみたいだけど、師匠さんはお兄ちゃんを狙ってる。
女の感って言うのは鋭いんです。
ちょっぴりピンチって思ってしまったのです。
でも、怒ったら今度はお兄ちゃんがデートしてくれるって約束してくれました。
ちょっとだけ師匠って人に感謝してもいい・・・かな?
私は次の日から、勉強の合間には必ず訓練場へ顔を出す事にしました。
でも、良く見たら師匠って叔母さんだったのです。
この前紹介された、お父さんの末の妹。年齢は確か23歳って言っていたから、19歳のお兄ちゃんとは私よりも近いのです。
これは身内に最大のライバル出現なのです。
しっかり見張りをするためにも、さらにおばさんに負けないためにも私も剣を習い始めました。
時々おばさんは私と言い合いをしますが、いっつも言い負かされてしまいます。悔しい・・・
そんなある日、とうとうお姉ちゃんの目が覚めました。
お兄ちゃんはお姉ちゃんやお父さんと何度も話し合いをしていました。
お兄ちゃんは次の目的に旅立つんだろう。と言うのもうすうす分かっていました。
だから・・・、私は何も出来ません。それにお父さんの娘と公表された以上付いてくことも出来ないです。
おそらく一緒に出て行くであろう、お姉ちゃんにお兄ちゃんのことを託すしか出来ません。
だから、謝ってくるお姉ちゃんに、お兄ちゃんの事をお願いしました。
そしてとうとうお兄ちゃんの出発の日です。
駄目で元々、ついてっていいか言ってみましたけど、駄目でした。残念です。
「迎えに来て」って言ってもお兄ちゃんは気づいていません。
お兄ちゃん、ずっと思ってたけど、やっぱり鈍感だと思います。
お父さんは「押しかけなさい」ってOKを出してくれたので、絶対に綺麗になって、お兄ちゃんの所に押しかけるんだからっ。
文中、ミモザが銀狼になったお父さんに憧れていますが、ミモザは銀狼になる能力を受け継いでいますが、色々な圧力からなる事はできません。
設定としては後々分かりますので、それまでお待ちくださいな。
お読みいただきありがとうございます。




