019 旅立ち準備
俺とラスト公は顔を見合わせると、冷静に話しが出来そうなラスト公から口を開いた。
俺とラスト公は顔を見合わせると、冷静に話しが出来そうなラスト公から口を開いた。
「キミはウェンディア王国第3王女、エアリス・ルィン・ウェンディアで間違いないんだね。」
「何故、私の名を知っているのですか。」
「キミは覚えていないみたいだが、自分からそう名乗ったんだよ。
つまり、私達をそれだけ信用していたと言う事だと思ったんが、それでは証明にならないかね。」
エルは少し考えると、
「どのような理由があれ、貴方達が私の名を知っていると言うのであれば、私の命運を全て託したと言う事。
ならば、全てお聞かせ願えないでしょうか。」
どうやら、話を聞いてくれるらしい。
俺は出会ってから『狂化』を解くまでの間、どのような事をしたかまで覚えている限り詳細に話して聞かせた。
全ての話を聞き終えると、エルはしばらく沈黙を保った後、
「私の名称はエルのままの方が宜しいでしょうね。
そして私はその話からすると、ラース公の操り人形として、シン国の重要人物を殺害した犯罪人という事でしょうか。」
「誰の操り人形となっていたかまでは予測にしか過ぎません。
あくまでの可能性であって、本当は違うのかもしれませんから・・・」
とラース公への関与はどうしても否定してしまう。
「ミモザちゃんでしたね。
操られていたとは言え、本当にごめんなさい。
謝ってすむとは思っておりませんが、償いをさせてください。」
すると、今までただ黙って話しを聞いていたミモザが始めて口を開く。
「おじいちゃんもおばあちゃんも、村の皆ももう戻っては来ません。
私個人は貴女を殺したいほど憎いと思ってます。
でも・・・それは誰も望んでいないと思うの。
だから、お兄ちゃんの・・・味方でいてください。」
驚いてミモザを見る。
「お兄ちゃんは私を何回も助けてくれた。
でも、力の無い私じゃお兄ちゃんに何も返す事はできないって分かってる。
今お兄ちゃんは信用していた人達に裏切られ、この世界の味方はお父さん達しかいないの。
だからお願い、お姉ちゃんもお兄ちゃんの味方でいてください。」
ミモザは涙ながらに訴えている。
彼女は、俺の事をそこまで思っていてくれたのか。
エルも涙を流しながら、ミモザに
「分かった。絶対にその約束は守るからね。」
と何度も言っている。
ふぅ、ラスト公は当然だが、ミモザにも相当な恩を受けてしまった。
これからの俺の選択は相当重いものとなりそうだ。
そんな事を考えていると、どこかから、「くるるる、きゅー」という音が聞こえる。
こんな感動的な場面でお腹を鳴らすとは・・・俺じゃないぞ?
周りを見回してみると、恥ずかしさから耳まで真っ赤に染めて布団へうつ伏しているエルと呆気に取られた顔のミモザやサトリ、どうしたものかと困った顔のラスト公がいる。
・・・・・・・・あぁ、そういや食いしん坊だったな。と納得した。
「しばらく寝ていたのだし、お腹が減るのは健康な証拠さ。まずはお昼にでもしようか皆の者」
とラスト公が言ってくれたので、皆で揃って食堂へ向かった。
エルはしばらく寝たきりだったからか、体が上手く動かないと言ってサトリとミモザに手を貸してもらって移動していた。
複雑だろうが、手助けし合えるって事は心配もいらなそうだなと安心した。
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「私はヒロと一緒にラスト領を出ようと思っております。」
食事を終え、今後の話し合いでエルはそう切り出した。
良い機会だったので、『はぐれ魔王』なんだし魔王と呼ばず、ヒロと呼んで欲しいと皆に頼んだ上、エルもヒロと呼んでくれる様になった。
「やはりエルもそう思うかね。」
ラスト公はこの提案が意図しているところを把握しているようだ。
「ええ、ラスト公がヒロに対する支援を影からとし、民の安全を第一としている以上、私達はこの領へ足を踏み入れなかった。
もしくはミモザを置いてどこかへ姿を眩ました。という情報を流さなければならないでしょう。」
「同意見だ。
更に言うなら、我が兵士では捕まえる事ができなかったが、ミモザだけでも奪還できたという情報だと、ミモザをオレの娘として大々的に発表できる分、ミモザの身の安全にはつながると思うがどうだろう。」
「ミモザの身の安全がはかれるのであれば、それが最良では無いでしょうか。」
「私は来なかった事にして、お兄ちゃん達と旅に出るのもいいんだけど。」
「「「それは駄目」だ」です」だねぇ」
3人の声が被る。
「ミモザ、大変かも知れないが、ラスト公の娘として幸せに暮してくれる事が俺にとっては何よりも嬉しい。」
「ミモザちゃん、私は貴女をなんとしてでも守らなければなりません。今はラスト公の元にいるのが一番安全だから、一緒に旅するのは賛成できません。」
「ミモザ、キミはオレにとって大切な忘れ形見なんだよ。万が一の可能性でもキミを危険に晒す事は亡き妻の為にも許されない事なんだよ。分かって欲しいんだ。」
3人で説得すると、ミモザも
「うぅ・・・じゃあ、おとなしく待ってるから、必ず魔王になって迎えに来てね。」と言ってくる。
迎えに?何を迎えればいいのだろうか。
俺が「?」の顔になっていると、ラスト公が笑って
「ミモザ、この鈍感には分かってないみたいだから、自分から押しかけなさい。」と言っている。
鈍感って何だよ。まぁ、すぐに察する事は出来なかったけど・・・
その後も色々と話し合いを繰り返して出した結論が、
俺達はミモザ村の襲撃を受け、ミモザを連れ、首都ラストへとたどり着いた。
だが、指名手配に驚き、載っていないミモザだけを置いて中立の国『ライブラ』へと向かった。
驚く事にミモザはラスト公の忘れ形見だったので、手厚く保護したがそのどさくさで俺達には逃げられてしまった。
という道筋になることで落ち着いた。
最初は護衛がという話もあったが、俺もエルも実力はずば抜けているので、下手な盗賊など返り討ちに出来るだろうということや、
ラスト領が俺達側であると分かる可能性を無くする為にも、付けてはならないという結論に至った。
中立の国『ライブラ』はその名の通り、独立した王が永世中立を掲げ、両種族間の貿易交渉を行う代わりに誰も手を出す事ができないという国である。
その国を通り、俺達はプライド領の首都プライドを目指し旅をする事になる。
プライド領へは、ラスト公から「ラース公とプライド公は対立している存在。そこを突けばお目通りできるかもしれないので、紹介状をしたためておいた。」と言って封書を渡された。
また『ライブラ』へは馬車でも10日近くかかる距離だが、ラスト公秘蔵のワープゲートから案内して貰える事となった。
そんな訳で準備を整え、この領でお世話になった人達に挨拶をしていた。
最後には一番お世話になった師匠にも挨拶を行い、
「ヒロ、どうしても行かなければならないのか。」
「師匠、大変申し訳ございません。」
「理由は?」
「それも言う事はできません。」
「騎士隊隊長の私の命令でも言う事ができないのか。」
「これにはラスト様直々の命令ですので、言う事はできません。」
「(ぼそ)お兄様に気づかれたか」
「何か言いましたか?」
「いや、何でもない。
ラスト様直々であれば、確かに私には何も言えないな。」
「すみません。」
「もう2度と会えないのか。」
「それは俺にも分かりません。」
「そうか・・・」
「ここまで鍛えて頂いたご恩は決して忘れません。
本当にありがとうございました。」
「いや、私こそ短い間だったが、本当に楽しかったよ。」
「最後に確認だが、ラスト様直々の命令で動くのだな?」
「はい。」
「分かった。必ずまた逢おう。」
そう言うと、師匠はかなり急いでどこかへ行ってしまった。
最後に師匠の呼称ぐらいは教えて欲しかったのだが、かなり残念だった。
次にあったときこそ、教えて貰えるようにと心に誓うのだった。
ラスト領内での話は終了し、次からは中立の国「ライブラ」を拠点に動いていきます。
師匠の出番は未知数です(びしぃ




