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010 首都ラスト

「お兄ちゃんじゃないよ」




ミモザ(村長の孫娘)が訴える。


「お兄ちゃんは私を助けてくれた。

 おじいちゃん達は黒い人達に殺されたけど・・・

 黒い人達の匂いも覚えてる

 お兄ちゃんの匂いとはまったく違うし、お兄ちゃんはそんな事する人じゃないもん

 お兄ちゃんは悪くないよっ」


途中から涙声になっている。

おじいさん達の事を思い出してしまったんだろう。


「ありがとうミモザ、俺は大丈夫だよ」

と言ってミモザの頭をなでる。


俺は女騎士の方へ振り向くと、

「抵抗も逆らうつもりもありません。

 俺はやっていない。

 ラスト公へ面会をお願いしたい。」


女騎士は俺の目をしっかりと覗き込む。

・・・・・・

ほんの少しの間、沈黙が訪れる


ふいに女騎士が俺から目を離すと、

「武器を取り上げ、手かせをつけて来い」

そう言うと城の中へ入っていった。

その後姿に部下らしき騎士が言葉を掛ける

「隊長、よろしいのですか」

「大丈夫だ、責任は全て私が取る。」


俺達は武器や荷物を全て取り上げられ、手かせをはめられた後城の中へ連れて行かれる。


かなり頑丈な扉を開き中へ入ると、床には魔法陣が描かれた部屋へ入らされた。


兵士は俺達を監視するように部屋の入り口に陣取る。



「お兄ちゃん、私が絶対犯人がお兄ちゃんじゃないって説明するからね。」


「申し訳ございません。私も協力したいのですが、当事者と見られているようです。

 陛下のお力になれず申し訳ございません。」


2人とも俺のみを案じてくれる。自分達も大変だろうに本当にありがたい。


「ありがとう2人とも。俺も2人のことは絶対守るからな。」


しばらく時間が経ち、見張りの兵が2人に減り食事を取らせてもらえる。


「しかし、どういう事だろうな。」


俺達をここに連れてくるとき、女騎士の部下は動揺していた。

あれは一体なんだったんだろう。


「陛下、この国ではある程度以上の犯罪は即死刑とおっしゃった事は覚えておりますか。」


「ああ」


「あのように罪状が発行された場合、相手の身分に関わらずその場で切り捨てる事が可能となっております。

 また、その場で切り捨てないと言う事はかなりの事態が起こっていると言う事にもなります。」


「何だって」


「それが罪状を読み上げられたにもかかわらず、今このように軟禁されているとはいえ、生かされているのは何か意味があるのでしょう。」


「それじゃ、お兄ちゃんが無実だって分かっているのかな。」


ミモザが嬉しそうに言うが、


「それは無いでしょう。

 罪状は国から発行される物です。大公と言えども罪状に疑いを持つ事は許されません。」


エルはばっさり切り捨てる。


「なら私が頑張らないと。」


それでもミモザは俺を助けるつもりだ。


「国が発行って事は、すでにラースさんは知っているって事か。」


「間違いなく知っているでしょう。

 おそらくラース様(弟)の事も調べ上げ、その犯人であろう陛下を恨んでいるかと思われます。」


「それはなんとか誤解を解いて、助ける事ができなかった事を謝るしかないな。」


俺はラースさんに命を助けて貰った。

それなのに弟であるラースをむざむざ殺され、今こうして犯人と間違われて恨まれてしまうとは・・・

なんとしてもラースさんに助けられなかった事を謝り、真犯人を見つけないといけないな。


「あの時、族を捕らえる事さえ出来ていれば・・・」


拳を握り締める。


「陛下、特徴などは覚えていないでしょうか。

 私の方は暗殺しそこなった事を悟った族がすぐに窓から逃げ出しましたが、陛下の部屋からは戦闘音が聞こえました。

 何か覚えている事があればお教えください。」


あの時の事を回想しながら

「特徴か・・・、俺の方もフードを被っていたからはっきり特徴を捉えることはできなかったが、あえて言えば特徴が無いのが一番の特徴かな。

 あとは俺のところに来たのは女性で、かなり強かったぐらいだな。」


「その程度ではあまり明確な情報と言うわけではありませんね。

 なにか特殊なスキルとかは分かりませんでしたか。」


特殊なスキルか、思い浮かべられるのは「フレイムアロー」や「ヒーリング」を使っていたが、ゲームだと定番の魔法だったしな。

あとは短剣を使いこなしていたぐらいか。


エルなら分かるかもしれないし、その辺も伝えてみるか。


俺が口を開こうとすると、


「待たせたな」


扉を勢い良く開き、「バーン」と部屋中に音が響き渡る。


この男性は見た事がある。


会議場で俺にはっきりと「力が無い」と言って出て行った男性。おそらくラスト公だ。


「いや、済まなかったな。

 サトリに聞いてすぐに来るつもりだったんだが、決済する書類がなかなか終わらなくてな~

 それで、今回の主犯である魔王陛下はっと・・・

 おっと、元気そうで何よりだ、だが侍女相手とは言え、軟禁の身で欲情するとは頂けないなぁ。

 あぁ、言わなくても良い。うんうん、分かっているよ~

 あんな罪状を示されたんだ、「最後に君を抱きたいんだ」とか言って本能のおもむくまま欲情を貪り食うのを止めるつもりは無いし、咎めもしないよ。

 私も理解あるつもりだ、なんだったら話は終わるまで待っていてあげるよ。」


マシンガンのように言葉を続けられ、俺もミモザも話しかけようとするが、会話の糸口が見つからない。


「でもさすがに少女が居る前で、そういった行動は教育によろしくないなぁ。

 それとも少女に見えるが、実はそう見えるだけで本来はもっと大人な女性だったりするのかな。

 そして3人でするつもりだったのかい。

 でも、少女が見た目どおりであるんなら、見過ごす事はできないなぁ、

 いくら私でも、そこまでの少女に手を出した事は無いんだからね。


 良く見ると、少女はミモザ村の村長の所の娘さんじゃなかったのかな。

 罪状を見た上では、襲撃犯は魔王陛下であるとあったのだが、見た所少女は貴方をかばっているようだ。


 我ら獣族はけして生半可な事では他人に懐くと言う事はありえない。

 どうやらサトリからあった話は本当のようだねぇ~。」


ラスト公はミモザの所へ話しながら近づいていくと、少し真剣な顔になり、


「今回も守る事ができず本当に済まなかったね。

 影を使って守っていたんだが、族の力が強すぎた。

 どうやら忍ばせていた影も全滅していたようで、真実を知っている物はまったく居なくてね~。」


今度は俺の方に近づいてくる。


「いやー、ほんっとうにありがとう。

 君が居なければ彼女すら助かる事はできなかったと思うよ。

 この事については心からお礼を言いたい。

 欲を言えば、族を退治し村全体を守って欲しかったが、あのラースやボロがなすすべも無くやられたと言う話じゃないか。

 例えグリトニー公を降したとは言え、この子を助けるだけでも簡単な事じゃぁ無かったろうに。


 そうそう、手かせをつけたり荷物を取り上げて悪かったね~、オレにも色々あってね、例え無実だと分かっていようと、武装のまま相対する事はできないんだよ。

 その辺は許して貰えないかな。


 かと言って困ったな~。民のためとは言え王都の意向に逆らう事はできないんだよね~。

 王都からは罪状が送りつけられてくるし、君は無実だと言うし、そこの所どうした物だろうねぇ。

 

 オレも結構大変なんだよ~、世間じゃ無節操大公とか、

 歩く種馬とか言われているけど、オレの本質は民を守るためにあるんだ。

 今回のように力及ばない事もあるけど、オレの民となってくれているんだ、出来る限り民のために色々と考えてあげないといけないじゃないか。


 君も魔王となるんであれば、民のために生きるっていうの分かってくれると思うんだよね。

 それで話は変わるんだけど・・・」


「ラスト様、その辺で。

 さすがに御三方とも困っておいでです。」


 完全な雑談に入ってきた所で、女騎士さんが割り込み、マシンガントークがやっとで終了する。


「おう、すまんすまん、嬉しい事があるとついつい話し込んでしまってな。

 魔王陛下からも何か話したい事があるのかい。

 大丈夫、しっかり聞く準備は整っているからね。

 そのためにここで待たせてまで事務処理を終わらせてきたんだからねぇ。

 事務処理って言うのも結構大変でね~・・・」


「ラスト様」


「おっとすまんね。

 ちゃんと話を聞くよ、サトリもそんなにオレの事を睨まないでくれよ。」


また話が長くなりそうなところでサトリさん(女騎士さんの名前だろう)が止めてくれた。


やっと話す事ができたので、俺は一番の疑問を投げかける。


「俺達の事を信用してくださるんですか。」


「ああ、さっきも言ったようにあの村には影を派遣しているので、大体の所は把握している。

 君達がそこの少女を初めとする子供達を助けてくれた事も報告で上がっているし、独自の方法で君が嘘を言っていない事が分かっているからな。」


どうやら助かったようだ。

ミモザに目で頷いてやると、嬉しそうに笑った。


「影を潜ませていたと言う事は、あの村には何かあるのでしょうか。」


今まで沈黙を保っていたエルがラスト公へ質問する。


「それは企業秘密でな。教える事はできない。」


さっきの話好きな様子とはうって変わってぴしゃりと会話を遮断してくる。


「この子が助かった事を大変喜んでおりました。

 影をつけていたのはこの子のためじゃないのでしょうか。

 先ほども彼女に「今回『も』」と言っておいででした。

 何か関係が有るのではないでしょうか。」


妙にエルが突っかかっていく。

普段、必要な事意外では何事も自重している彼女にとっては珍しい。


だが、ラスト公が彼女を見る目には不信感が表れ始めている。


「悪いが教えるつもりは無い。

 首を突っ込む趣味はいただけないと思うぞ。

 あまり度が過ぎれば、命を失う事もありえるぞ。」


目に冷たい色をうかべエルに言い放った。


エルはそれでも何事か言おうと口を開こうとする。


「エル、やめろ。」


これ以上はおかしなことになりかねない。

俺もエルを止めるため、口を出すとエルは俺を見た後黙りこんだ。


「ラスト公、申し訳ありません。

 後で彼女にはしっかりと言い聞かせますので、許してやってもらえないでしょうか。」


ラスト公は俺を見ると、少し気を落ち着けるためか、サトリさんのほうを見た後、


「そうだな、影からの報告だけでは不鮮明な部分も多々見つかっている。

 詳しい話が聞きたいがいいかな。」


え・・っと。

ちょっと困った顔をしてミモザの方を見ると、ラスト公も察してくれたらしい。


「サトリ、少女にはこくな話になる。

 隣室で甘いケーキでもご馳走すると良い。」


と言ってくれたが、ミモザは


「ううん、大丈夫。

 お兄ちゃんの側にいたいけど、駄目かな。」


上目遣いでラスト公を見上げる。

ラスト公も少し迷っていたようだが、何かを観念したようだ。


「気分が悪くなったらいつでも外に出ていいからね。

 サトリ、兵を1人彼女の側へ」


といって俺に話しを求めてきた。


俺はミモザとエルに頷いて、話し始めた。




王城の出発から、ミモザ達が襲われていた事。

村長の家に泊まった所で襲撃があった事。

何とか逃げ出し、この城へたどり着いた事を話した。


ラスト公は村長の話や野党との戦い。

脱出時の経路など細かく聞いてきたので分かる範囲で答えて言った。


その時に俺が人影が使った魔法の説明をすると、

「なんと、君は魔法の詠唱や力ある言葉が聞こえたと言うのかね。」

と驚かれた。


なんでも魔法の詠唱や詠唱とは、ある程度以上の知識と強大な魔力が無ければ聞き取る事はできない。しかも発動時の力ある言葉を聞き取る事ができる物となると、有史以来聞いた事が無いそうだ。


力ある言葉は魔法発動の為に不可欠だが、その効果をはっきりと物語る為に聞き取ることが出来ればかなりのアドバンテージになると、解析しようとする学者が居るほど重要な事だそうだ。


どうやって聞き取ったのか等聞かれたが、言ってみればどうやって息を吸っているのか。と言うような物だ、答えようが無かった。


ラース・ボロ・エーラに関して詳しい話も聞きたいと言われたが、見に行ったのはエルだったのでその辺を話すと、では一緒にエルから聞きたいと言われた。


サトリさんにオレと同じように話しかけられていたエルのところへ合流し、その辺を伝えるとちょうどその辺を詳しくサトリさんに聞かれていたそうだ。


丁度良かったので、ラスト公へその時の状況を改めて説明したもらった。サトリさんも真剣な顔でエルを見つめている。




エルが話し終わると、ラスト公とサトリさんは真面目な顔で何かを話し合っている。


2人は何事か結論が出たように話し終わると、俺を見てにっこりと笑った。


「悪いね。」


一言告げると、ラスト公は腰につるしたエストックを手に取り、一瞬の間にエルの胸に突き刺した。

ラスト公登場しました。


彼の存在が主人公へ色々と影響を与えていきます。

自分の中でもここまでの人物になるとは最初考えていませんでした。

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