101 自己紹介
「エル・・・だよな?」
俺の問いにエルは照れくさそうに笑う。
「ええ、私です。
多少外観が変わっておりますが、すぐに判って頂けて嬉しいです。」
そう、スマートフォンの中のエルは一緒にいたときのメイド服ではなく、赤いドレスを着こなし、髪の長さも肩までで切りそろえられている。
そして、その背中にはアリシアの漆黒の羽とは正反対の純白の羽が見える。
「あらあら、まさかとは思っておりましたが、やはりそういう関係だったのですね。」
もう1人の女性、水色のドレスの女性を着こなし、優しげな瞳と水色のショートカットが特徴的な女性がエルをからかう。
「いえっ、これはっ・・・そのっ、違うんですっ!!」
エルは頬を赤く染めて否定する。
・・・そんな直ぐに否定されるとちょっとショック・・・
「エル、そんなはっきり断らなくても・・・」
「あっ、いえっ、そういう訳でも・・・」
何故か口ごもってしまう。
エルは手をもじもじさせながら俺を見ては何か迷ったような、困ったような表情をする。
俺も俺で、なんか照れくさくなってしまう。
「あらあら、ふふふ。
やはり楽しい事になりそうですわね。」
「だろう、西よ。
ここは2人でニマニマと楽しもうとしようか。」
「あら、よろしいのですか?
彼は貴方のフィアンセなのではないのですか?」
「我は肉体をもたぬからな。
ならば、それはそれ、これはこれと言う事でな、楽しまぬば損というモノだ。」
「それは・・・そうですね。
楽しくなりそうです。」
「それにほら、見てみい。」
「あら?あらあら、周りに可愛い子が2人も。」
「ほれ、あの態度を見てみい。」
「あらあらあらあらあら、頼りなさげな方と思ってましたが・・・あっちの方は手が早いのですね。」
「うむ、しかも本人は無自覚と来ている。
これはこの先が面白いと思わぬか?」
「あらまぁ、そうなんですか?
それは・・・私の娘もあてがって更にかき回してみたくなってしまいますわね・・・」
「ふふふ、お主も好きよの。」
「貴方こそ。」
奥の方で、2人が怪しい会話をしているような気もする・・・
時々ぼそぼそと単語だけが聞こえる分、気になってしまう。
「そうだ、そんな事より!!」
ラース公に対する対策を話し合わなければ。
今はこのことに対して聞かないと。
「きゃっ。」
スマートフォンに向かって身を乗り出すと、隣からびっくりした声が聞こえる。
「ん?」
隣をみると、肩がくっつくぐらいの距離にアーチャとリアーサがいた。
今の悲鳴はアーチャのようだ。
身を乗り出したときに肩が当たってしまったようだな。
・・・どの部分とは言わない。
「あ、ごめん。
2人共見難かったかな?」
スマートフォンは俺の方を向いている。
アーチャとリアーサは、俺にくっつくぐらい近寄らないと見えないのか・・・
少し注意しないと。
「あ、いえ、そういう訳でも・・・あ、いえ、そうなんです。」
「はい!!だからちょっとくっついても良いですよね?」
「ああ、ちょっと見え難いようだし、俺は後ろに下がった方がいいかな?」
2人にとっても大事な話だ。
「いえ、大丈夫です。
ちょっとくっつけば見えますし。
それにこれはヒロ様にとって大事な話なので、しっかりと聞いてください。」
「そうです、ヒロ様はここでじっくりと聞いておかなければいけないですからね。」
「あ・・・ああ、判った。」
2人が勢い良く言う。確かにその通りだ。
しっかりと聞いて置かなければ・・・
「な?」
「確かに。」
アリシアが西と呼ばれた女性に振ると、しきりに頷いていた。
一体何を話し合っていたのだろうか?
「僕はこのスロウス領の領主、スロウス公といいます。
お見知りおきを。
後ろから声が聞こえる。
ラリーが自己紹介をしたようだ。
っと、そう言えば挨拶を行っていなかったな。
「そう言えば、挨拶がまだでした。失礼。
アリシアから説明があったかも知れませんが、ヒロと言います。
よろしくお願いします。」
スマートフォンに向かって頭を下げる。
「そうでした。
ヒロ様は良く知っておりますが、他の方は初めてですね。
エルと申します。
ヒロ様とは長らく旅を続けておりました。
今は準備の為別行動をしていましたが、今日からは夜の間家に戻ると思っております。
ヒロ様も今日からは家の方にお戻りください。」
エルも俺達の方へ頭を下げる。
そう言えばラリーの所のお世話になりっぱなしで家に帰ってなかった。
戻っても大丈夫なのだろうか?
久しぶりにみんなにも会いたい。
「私はアーチャと言います。
グリトニー領元領主の娘で、今はヒロ様と一緒に行動しています。
短い間ですけど、ヒロ様には色々とご恩を頂いて、返すまでは側に居なければと思っています!!」
「挨拶が遅れ、申し訳ございませんでした。
私はスロウス領、領主補佐のリアーサと申します。
ヒロ様には短い間ですが、大変良くして頂いており、一緒に散歩したり、食事に行ったり、色々なお話などをさせていただいております。」
などと考えている間にアーチャとリアーサの挨拶も行われていた。
良く聞いていなかったが、俺の名前が出ていたような?
「そうですか。
ですが、ヒロ様はアリシア様という婚約者がおります。
その点をお忘れないよう、ご注意ください。」
「はい、判ってます。
アリシア様からもヒロ様にがんばってアタックしろと言われてます。」
「アーチャ様の言う通りです。
私も了承は得ておりますので、問題ございません。」
3人はにっこりと笑いあっている。
直ぐに仲良くなったようで良かった良かった。
でもアタック・・・か。
アーチャもアリシアから戦闘訓練を受けているのだろうか?
「私はラファと呼ばれておりますの。
人族の地、アースガルと言う国で女王を担っておりますわ。
人族の地ではフレイムスフィアで天使が実権を握り、他の国を潰そうとしております。
アリシアからの提案で、共に手を取り世界を平和にしようと思っておりますわ。」
最後に水色のドレスを着た女性が優雅にお辞儀をした。
「ところでヒロ君、うちの娘と結婚しません?」
「・・・は?」
顔を上げると、ラファさんはニッコリと言った。
「聞いた話によれば、力はあるけれど魔王になるつもりは無いようですわよね?
なら、人の国に来てもよろしいのではありませんか?
大丈夫、うちの娘は少し男勝りですが、かなりの美人ですよ?
それに、私ならば魂の婚姻を解消できますから安心ですわ。」
さりげにいくつもの爆弾を投下してくる。
「いや、そういうのは十分ですから。」
慌てて否定する。
ただでさえアリシアと婚約していてルナからは迫られている。
そこに更なる波風とかやめて欲しい・・・
「あら、残念ですわ。
・・・どうせ合同戦線で顔を合わせることになります。
その時に誘惑するよう、みっちり指導するとしましょう。」
後半の部分、何を言っていたのか聞こえなかったが背筋がゾワリとした、別な意味で気をつけなければ・・・
「まぁまぁ、西よ。それぐらいにしておけ。
3人の視線が怖い事になってきておるぞ?」
アリシアに言われて周りを見渡す。
エルとアーチャとリアーサの視線がいつの間にか俺に向けられている。
「えっと・・・どうした?」
「いえ、何でも。」
「なんでもないです。」
「失礼いたしました。」
アーチャ、リアーサ、エルはかぶり気味に言って目を逸らした。
「それもそうですわね。
では、無駄話はこの辺にして現在の情勢とこれからについて話し合いましょうか。」
ラファさんが言うと、スマホの中に白い掲示板が現れた。
「まずは人族の現状からお伝えしますね。」




