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100 天使

「お主等は・・・」


アリシアが頭を抱える。


「まぁ、予想していた通りか。

 だがヒロよ、この世界を旅して色々な物を見たのではないのか?

 その中で守りたいものや、変えなければならないものに気付いたのではないのか?」


その言葉に胸を打たれる。

まだこの世界で過ごした時間は短いが、大切なモノや守りたいモノが出来た。


「このままでは、全てがラースによって壊される。

 ラースにとってお主はすでに危険人物・・・証拠に命かて狙われておるだろう?」


「確かに・・・その通りだ。」


だからと言って・・・そんな理由で人の上に立つのは・・・どうなんだろうか。


「それにラリーよ。

 シン国はラースの手によって自滅に進んでいる。一番判っておるのはお前だろう?

 奴の目的は国の支配でも統治でもない。戦争なのだから・・・


 6公としてのプライドが欠片でもあるのであれば、自国・・・いや、自領の民の未来を守るのも大事な事だろう!!」


「その通りです。だからこそ裏で色々と動いているのです。」


「それは知っておる。だからこそ言おう。

 ラリーよ、裏ではない、表舞台に立つのだ!!」


ラリーもアリシアの言葉に胸を打たれたようだ。


このままラース公がシン国の主導権を握ってしまえば、ミモザ村やドラゴさん達のような犠牲がもっと増える・・・

それは嫌だ。

だが・・・


う~ん・・・


俺もラリーも考え込んだまま動かない・・・

そのままどれだけの時間が経ったか、アリシアはため息を吐くと諦めたように呟いた。



「ふぅ・・・

 妥協案を提示しよう。


 この中には様々な書物があった。

 読ませてもらって気付いたが、お主の世界では王はあくまで象徴であり、行政は国民の代表が集まって行う事になっている。

 そうだな?」


世界というよりは日本の体制だけど、天皇を象徴として政治を行う議院内閣制のことかな?


「うん、俺のいた世界というより国の政策だけど、天皇という王族はいるけど政治に関わる事は全くしちゃいけなくて・・・政治は国民の代表が選ばれ、更にその中から代表が選ばれる方式・・・って言えばいいのかな?

 そんな政策をしているけど?」


アリシアは俺の言葉に頷いている。

あの程度の説明で判ったのかな?


「うむ、詳しくはこの"猿でも判る政治"という本に書いてあったから言質が取れればよい。

 大筋ではヒロの言ったようなものだ。


 詳しくはもっと細かくなるが・・・誰もそんな事は聞きたくなさそうな顔をしておるか・・・」


「いえ、私は気になるのですが。」


アリシアは俺、ラリー、アーチャを見渡すとまたもため息をつく。

リアーサだけ興味をそそられたのか、アリシアに続きをせがんでいる。


「リアーサには後ほどじっくりと説明してやろう。


 つまり我が言いたいのは・・・

 ヒロよ、お主天皇になれ。

 それなら良かろう?」


「・・・・・・は?」


あまりにも突飛な提案に間の抜けた返事を返してしまった・・・


「それなら国家に関らずに済む。

 民を導く自信が無いのだろう?

 ならば、導く自身のあるものに国は任せれば良い。


 象徴として国民に手を振るだけなら問題なかろう。」


尚も提案されるが・・・


「いや・・・それはそれでなんか違うような気もするのだが・・・」


「ええい、男ならうだうだ言わずにただ"ハイ"といえば良い。」


しどろもどろと言おうとするが、アリシアの剣幕もすごい事になってきている。


「そもそも、俺は元の世界に戻る方法も探す訳であり・・・」


「返事はっ!!」


「っう・・・はい。」


「よろしい!!」


あ・・・

つい凄まれてハイと返事してしまった・・・


「いや、だから俺は元の世界に戻る方法を・・・」


「大丈夫じゃ、それまでの間ついてくれるだけでいい!!」


あれ?・・・えっと・・・

まぁ、それだけならいいか?


「・・・ラリーも筆頭に立つのが嫌なら、6公とも同等の権限を持たせる。

 そのほうが面倒な気もするが、それなら問題なかろう?」


「ええ・・・まぁ、そうおっしゃるのであれば・・・」


どうやら、ラリーもアリシアの剣幕には逆らえないのか、不承不承と了承しているのが聞こえた。


「よし、これで大筋は決まった。

 あとはラース公との対決にだけ焦点を合わせれば良い。」


俺たちが取り合えずとは言え了承したのが嬉しかったのだろう。

かなりご機嫌だ。


「・・・という訳で、この場に我等の側にいる天使を呼ぶ。よいな?」


「えっ・・・ちょっ!?」


何それ?いきなり急展開?


「アリシア様っ、まだ何も準備がっ!?」


ラリーも慌てている。

事前に相談があったとかじゃなさそうだ。


「知らん!!

 これから相談しろ。以上!!」


えっ!?


「よし、連絡がついた。

 2人共今は手が空いているそうだ。直ぐに来る。」


ちょっ!?

しかも2人って・・・


「リアーサ、すぐにおもてなしの用意を。

 聞いていたな?2人分、すぐに最高級のお茶とお菓子をっ!!」


「畏まりました、スロウス公様。

 すぐに手配させます。」


「あぁ、準備などせずとも良い。」


準備しようとするリアーサをアリシアが引き止める。


「ですが、アリシア様。

 お客様の来訪に何もおもてなししないと言うのも・・・」


リアーサが困惑する。

そりゃそうだろう。

お客、しかも聞いている限りだとアリシア並の人が2人も来るって言うんだからおもてなしはしないと・・・


「来ると言ってもそっちの空間にではない。

 流石に我でもそのような魔法を知らぬのでな。

 来るのはココだ。」


アリシアは自分のいる地面を指す。


「ココ・・・でしょうか?」


リアーサは首をひねる。


だが、俺は気付いた。

アリシアの差す地面・・・・

それって・・・


「もしかして、スマートフォンの中に飛んでくるとか?」


俺の発言にラリーもリアーサもぽかんとする。


「そのような小箱の中に入るの・・・ですか?」


アーチャはよく判ってないようでいて、的確に状況を把握しているようだ。


「ああ、肉体を飛ばす事はできぬが、魂だけを一時的に切り離す事は出来るからな。」


「あぁ、そうなんですね。」


アリシアの答えにアーチャは納得しているようだ。


「えっ・・・・と?」

「魂だけ・・・ですか。」


リアーサとラリーは今だ納得できていないようだ・・・

意外とアーチャの方が柔軟性は高いのか?


「おっと、来たようだな。」


アリシアが呟くとスマートフォンの画面が光り輝く。


「まぶしっ・・・」


その光の奔流に目を手で覆い隠し、更にきつく目を瞑ってしまう。


「あら、このお方が貴方の後継者ですのね・・・・

 少々貧相に見えますが・・・本当に大丈夫・・・なのですか?」


「そんな事を言わないでください。

 彼はこう見えても素晴らしい男性なのですから。

 ・・・ヒロ、お久しぶりです。

 暫く会わないうちに大分見違えましたね。」


光の中から2人の女性の声が聞こえる。


「誰・・・?」


最初の声は全く知らなかったが、2つ目の声には聞き覚えがあった。

だけど、アリシアは言っていたよな?我等側の天使を呼ぶって・・・


俺は思い切って手を下げ、目を開き固まってしまった。


「エル・・・」


スマートフォンの中に居たのは、忘れようも無い・・・

髪の色こそ紅くなっているが間違いない・・・

俺の仲間、エルがそこに立っていた。

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