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099 アリシアの独白 ④

「と言っても、手記を残した人物は先ほど話した手を貸してくれる人物だ。

 彼女はそうだな・・・よく言えば知識欲を優先するモノだ。


 神の言葉より自分の目で見、自分の耳で聞いたものを優先する傾向にある。

 実際に会えば判るだろう。


 ラース公との決戦の折にはどうせ共同戦線を張らなければならない相手だ。

 すぐに会う機会もあるだろう。」


う~ん・・・会うのが躊躇われる響きのある人だな。

会いたくは無いが・・・会わなくてはならなそうだし、すぐに会うことになりそうだけど。


アリシアはそんな俺の表情を読み取ったのか、笑みを浮かべる。


「それほど気にしなくても良い。

 彼女は結構気さくな女性だ。


 ヒロならば直ぐに打ち解けあう事ができると思うぞ。」


「それならいいんだけど・・・」


「うむ。

 (ぼそ)主に実験体には寛容な奴だからな。」


ちょっ!?


「アリシアっ!!

 今さらっと不安になる事言わなかった?」


「うむ?言っておらんぞ?」


いや、言いましたからっ!!


「まぁ、続きを話すぞ。」


そして話を逸らされたっ!?

・・・まぁ、聞くけど。


「その後、ヒロの中で覚醒するまでの事は判っておらん。

 まぁ、我はその間"魔玉"に封印されていたも同じだからな。仕方のないことだ・・・」


って終わりですかっ!?


「それと、初代勇者についてだがな。

 彼は世界が平和になった後、元の世界に返れないと知った後、元の世界へと戻る手段を探しに旅に出た。


 それから何年かは彼の偉業が聞こえてきていたのだが、ある日からぷっつりと消息が途絶えてしまった。


 他に3人の仲間がいたのだが、その仲間も一緒にだ・・・


 噂でしかないのだが、彼らは元の世界に戻ったのではないかと言われている。


 ・・・だからなヒロ。

 本気で元の世界に戻りたいのであれば、もしかすると方法があるのかもしれない。


 だから、我等に遠慮などせずにそのときは素直に言ってもらって良いぞ。

 手助けぐらいはさせてもらおう。」


はぁ・・・

こっちも特に手がかりはないってことか。


・・・でも元の世界に未練は残っているけど、戻りたいかと言われると曖昧になってきた気もする・・・


俺はどうしたいんだろう・・・?

まぁ良い、少なくともラース公との決戦は避ける事ができないし、詳しく考えられるのはその後になってからか?


今は考えない事にしておこう・・・


それに聞きたい事もあるしな。


「アリシア、話はそれで終了なのか?」


「ああ。

 色々と抜けている所もあると思うが、大体こんな所だろう。


 何か聞きたい事があるのであれば、言って貰って構わんぞ。」


アリシアは椅子に静かに腰を下ろすと、お茶を飲んで俺の質問を待っている。


「"堕天"について説明がなかったと思うが・・・

 関係有るんじゃなかったのか?」


問いかけると、アリシアは何かを思いついたように手を打ち、カップを置いて答える。


「おおっとすまない・・・説明が不足していたようだ。

 "堕天"と"魔王"は同義語なのだよ。」


その答えはいまいち判りずらく、小首を傾げてしまった。

その仕草に何か思い当たったのだろうか、改めて詳しく説明してくれた。


「つまり、魔獣を操る力と言うのは"堕天"の力の一部なのだ。

 そして魔獣を操る事が出来る人物は、人族からすると"魔王"と言う事になる。


 我等が言う"魔王"という種族は厳密には存在せず、"魔王"="堕天"となるのだ。」


なるほど・・・って待てっ!?


「いやいやいや、つまり俺が"堕天"に目覚めたからその時点で"魔王"ってこと!?」


「うむ、その通りだ。

 頑張れよ。」


アリシアがしたり顔で頷いてくる。


「ちょっと待ってくれっ。

 俺はまだこの国を背負う覚悟なんて出来ていないんだぞ?

 だから無理って断ってるんだけど!!」


「大丈夫だ。

 なんとでもなる。我が長年王の座について問題がなかったのだから、ヒロでも何とかなるだろう。」


「基本的なスペックが違いますからね?」


「大丈夫だ。

 いざとなればそこにいるラリーに全てを投げれば良い。」


「いいのっ!?」


あわてて話を振られたラリーを見ると、彼も彼で驚いた顔をしていた。


「アリシア様、お待ちください。

 何故そこで話が飛んでくるのですかっ!?」


「いや、ヒロが魔王の座をどうしても拒むのなら、形だけ魔王となってもらいそれを補佐してもらえばよいのではないかと思ってな。」


「それならばプライド公が筆頭の座におりますので、プライド公に譲るべきでは?」


「プライド公は代替わりしたばかりだからのう。

 政治にはあまり詳しくない。ここはおぬしが適任じゃろうて。」


「ならば、グリトニー公はいかがですか?

 6公の中ではかなりの古株。

 彼が補佐となるのなら問題ないでしょう。」


「いや、奴は職人気質すぎるからな。

 それにラースの奴に捕まってどうなっているか・・・」


「ですがっ!!

 それでは僕がサボれなくなるじゃないですかっ!!」


「だから働けと言うておろう!!

 グリトニーを古株と言うておろうが、奴とそう年も変わるまい。」


「「ええっ!?」」


アリシアとラリーの話となっていたので息を潜めて聞いていたが、あまりの驚きに声を出してしまった。

アーチャも驚いたようで、俺と一緒にラリーを驚いたように見つめている。


「お父様と同い年なのですか・・・?

 全然・・・見えません。」


「どう見ても30前後・・・に見えるんだが?」


「はっはっは、僕はこう見えても320歳なんだ。

 まぁ、確かに6公の中では古株と言えなくもないかな?」


「そうだったんだ・・・」


「うむ、ちなみに6公の中では一番古いのがラース、次にグリトニー・スロウスと来てラスト、グリード、そして継いだばかりのプライドとエンヴィーと言う所かの。」


へぇ、ラスト公も若いと思っていたけどルナと一緒ぐらいなんだ・・・って、ルナって何歳なんだ?どう見てもよう・・・げふんげふん。


「という訳で、スロウス公ラリーよ。

 魔王ヒロの片腕として、政務に携わる事を前魔王アリシアの名において命ずる!!」


「嫌です!!」

「無理です!!」


アリシアの言葉に、俺とラリーの声が見事に被さった。

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