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無理

数日後

時間が経てば経つほど、わたしは祈のことが知りたくなった。

2日前に、祈から渡された封筒の中に、祈の家の合鍵が入っていた。

これ、本当に使ってもいいのかな...?

わたしは家を出て、祈の家へ向かった。

 一呼吸を終えて、鍵をガチャり。

すごく居心地のいい香りが玄関からしてきた。

いつもの香り。

母とケンカしたとき、この香りを嗅ぐをとてもすっきりする。

「......あの」

でも、誰もいない。

「...おじゃまします」

封筒には、好きに使っていい部屋、と書いてあった。

一先ず、祈の部屋に入ってみた。

このまま、ここで待っちゃおう。


知らない間に、わたしは寝ていた。

目が覚めるとわたしは祈のベットで一人、眠っていたのだ。

暖かい。

毛布をかぶせてくれていた。

「あの......」

リビングに行くと、祈がテーブルに顔をつけて眠っていた。

その様子に、わたしは少しだけ笑っていた。

「遅刻だぞー」

わざと言ってみたりする。

「......?」

祈が目覚めた。

「寝れた?」

「うん」

「....」

祈があくびをしながら、カーテンを開ける。

窓からまぶしい光が差し掛かる。

「もう行くね」

わたしは、ひそかに大学の受験勉強をしていた。

1週間後には、大学の試験がある。

合格すれば早くても1ヵ月後に大学に通える。

「食べていけよ」

「ごめん、今は..祈と顔を合わせたくない」

「ちょっと待って」

祈がわたしの手を引っ張った。

すごく力強くて、逆らえなかった。

でも、どうしてわたしは、こんなに祈を避けるのだろう。

「俺が、湖乃実になんかした?」

「....!!」

祈は何も悪くないのに。

コレは、瑛花に対する嫉妬なんだ。

「わたし..」

「何かあるなら言えよ、俺だって何も分からないし」

今は涙を見せなくない。

わたしは隙を狙って、祈の家を出て行った。

まだ、顔は合わせれない。



1週間後

祈の家で眠ってしまったあの日から、ずっと家ですごしていた。

勉強をしては、ボーっとして。

わたしはこれでよく分かったかもしれない。

自分は、甘やかされればその分、何の力にもならないことを。

だから今まで、一人で頑張っていたのに。

これじゃ、自分を見失っていただけになる。

プルルルル.....

メールが届いた。

『水嶋先輩が湖乃実のことを探していたよ?』と書いてある。

勉強がきりがよく終わっていたため、すぐに出かけた。

大学で待ち合わせをした。

「川原さん」

「...水嶋先輩」

わたしはとっさに頭を軽く下げた。

「すまなかった」

「..どうして、謝るんですか」

「俺は、高校時代ずっと..好きな女子なんていなかった」

あの時水嶋先輩は、どうしてウソをついたのだろう。

やっぱりかばうためのウソなのだろうか。


自分を守るためにつくウソ。

自分を上げるためにつくウソ。

他人をかばうためのウソ。


ずっと前から、わたしはこの3つのウソについて、考えることがあった。


「後輩だから、かばっただけ」

「...」

「そのときの気持ちは、好きなんかじゃないよ」

「...」

「わたしに言われても、どうすることも出来ないです」

水嶋先輩はえ..?という顔をしていた。

わたしと話していて、そんな顔をされるのはもう慣れっこだ。

「言われます。いろんな人から、湖乃実はいつも冷めてるって」

いつも近くで、言われてきた。

クールじゃない、湖乃実は冷めた性格なんだって。

聞かないフリをして、後で悲しくなって、いつも一人で泣いている。

そんなの見栄を張ってるだけ。

何も変わらない。

「ビックリします。お葬式から水嶋先輩と会って、今もこうして会ってることに」

わたしは決めている。

大学に通ったら、第二の人生を歩むくらい、堂々と生きると。

それが一番、瑛花のために出来ることだと思うから。

「大学の試験の勉強あるので、お先に失礼します」



誰も、過去を知りたくない人なんて、いないんだ。


絶対。

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