教えて三下くん! なぜ彼は混ぜるのか?
「ねぇ?」
「なんだい?」
媛里が声をかけると三下友無は顔を上げた。
彼はいつも放課後、喫茶店で一人でコーヒーを飲んでいる。
「何って、今日も質問しに来たんじゃない!」
「……面倒くさいな……」
そう言うと彼はコーヒーを一気に飲み干し、新しい注文を取った。
「すいません、ストレートアイスティーと炭酸オレンジジュースを」
「あ、私が炭酸オレンジジュース好きなの覚えてくれたんだ! ありがと!」
「え? ああ……? とりあえず気持ちは受け取るよ?」
そうしてしばらく他愛もない雑談をしたあと注文の品が運ばれてきた。
「じゃいただくね? ほんとありがと」
そう言い炭酸オレンジに手を伸ばすが……。
「え? 何か飲みたかったの? 言ってくれれば頼んだのに」
媛里は固まった。
何を言っていたか分からなかったからだ。
「? おーいどうしたんだ?」
「え、え、えと、私のために頼んだのではなく……?」
「え、うん……そうだけども?」
「『……』」
沈黙が気まずさを加速させる。
何せ一人で自惚れていた事が発覚し、媛里は恥ずかしさで顔が赤くなっていた。
そんなこと気にもせずに炭酸オレンジにストレートティーを混ぜ始めた友無を見て恥ずかしさよりも疑問が浮かんできた。
『なんで混ぜてるんだろう?』
そう思った瞬間媛里の中で今日の質問が決まった。
「ねぇ?」
「なんだい?」
「何でそれ混ぜてるのか教えて?」
「……それはいつもの質問かい?」
「そうだけど?」
友無は少し面倒くさそうに天を仰いだあと……。
「降臨した俺の中の光がね」
いつもの決め台詞が出たことで期待と興奮が出始める。
「来た! 待ってました」
「なぜ混ぜているか? だったね? お答えするよ」
「まず皆様炭酸オレンジというものはなぜ炭酸にする必要があったと思いますか?」
唐突な逆質問に少し驚きつつも考える。
「え? そりゃ炭酸ジュースが流行ってたときに王道ジュースも炭酸にしたら美味しいでしょ? って鉄板の流れじゃないの?」
「確かにその王道のものにも炭酸を追加する素晴らしい考えですね、本当にそれがきっかけかは知らないがそれっぽいので前提はそれでいいでしょう、続きを話しますよ?」
「え、うん」
この質問に何の意味があるか分からず困惑というか疑問を感じつつも続きを待つ。
「ジュースに炭酸を追加する……これは一つの要素をもう一つのものに混ぜ合わせるものだ、そして君の理論が正しければ、ジュースに炭酸を追加するのは美味しいからだ、つまりストレートアイスティーを混ぜ合わせるのも美味しいからという極めてシンプルな理由であると同時にそもそもオレンジジュースが王道で美味しいものに炭酸という追加すると美味しい要素を追加したジュースにストレートアイスティーを追加するということはつまりストレートティーは美味しいし美味しいもの同士を混ぜるのは当然ということだよ……以上だ、ご清聴ありがとうこざいました」
「ぷっ! ハハハ! 面白いね! わざわざそんなこと言うためにそんな長文の理論並べたの? 面白すぎるよ」
媛里は思う、やはり彼はただの嘘つきではなく、簡単のことを言うために理屈っぽく喋りすぎてみんな聞くのが面倒くさく理解するのを放棄して理解してないのに聞き終わった後内容のとりあえず納得した感と結局中身のない話に混乱して嘘っぽく聞こえ誤解されてるだけなのだと。
媛里は自分だけが気づいて楽しんでいる日常がずっと続くように願いながら同じ注文を取った。
炭酸オレンジジュースにストレートアイスティーを混ぜたら美味いと聞いて確かに美味しかったので書きました。




