5. 『星屑のゆりかご』
神界の福利厚生……じゃなくて、『恩賜制度』で泊まれる王都の宿は、部屋も豪華だった。
私が宿泊するのはインペリアルなホテルのジュニアスイートくらいの部屋だろうか。
「こんな凄い部屋泊まったことない」
「もっと広い部屋もあるぞ」
「おぉ、やっぱりあるのね!」
この上にはデラックスやロイヤル的なスイートが存在するのだろう。
だが、庶民感覚の私にはこれでも充分すぎる。
お約束のベッドダイブをして寝転ぶと寝落ちしてしまいそうになる。
「痛っ」
フレースヴェルグの殺人的なクチバシで頭をつつかれる。
「寝るな! なんの仕事もしてないだろう」
ふがっ……起きたくなーい。
「あ――やめてぇ。頭に穴あくからぁ」
ちょっと涙目になりながら泣く泣く荷物を置いて冒険者ギルドへ向かう。
「ちょっとくらいお昼寝させてくれてもいいのに」
「ちょっとくらいで済むのか? 気が付いたら朝であろう?」
否定はできない。
宿から都市の入口方向に戻り、商人たちが屋台を出している一番の賑わいを抜けた辺りに冒険者ギルドがあった。
グレスは別行動だ。
従魔登録などするわけがない。
冒険者ギルドと言えば、いきなり絡まれる件が必ずあるよねー。少し楽しみ。
実際は……もちろん何も起きない。
「これがFランクのギルドカードです。身分証代わりにもなりますので失くさないようにしてください」
「ありがとうございました」
さて。仕方ないので少し働きますか。
ギルドの中にはフードコート……もとい、酒場が併設されている。
今はまだ日暮れには少し早い。
そんな時間から飲んでる脳筋……もとい、冒険者さんの中で……
ヒヒッ。いたいた良い獲物だ。
私はガタイのいい強面の三人組のテーブルに近付く。
「すみません、ご一緒してもいいですか? エールでいいですか?」
「おう、わりぃな。ねえちゃん、俺たちに声掛けるとは余程肝がすわってんだな」
「え? どうしてですか? お優しそうだったので色々教えていただけるかな、と思っただけです」
真っ赤な嘘だ。
根拠がある。
ヒミツだが。
「私にはスープとエールをお願いします」
「それで? 何が聞きたいんだ」
「私、今日王都に着いて冒険者登録したばかりなので、なにもわからないんです。だからなんでも教えてください」
彼らはCランクの冒険者パーティー『星屑のゆりかご』のメンバーだそうだ。
その顔でなぜその名前を付けたのか? という疑問は浮かばなかったことにする。
冒険者の中二っぷりにイチイチ突っ込んでいると仕事が進まない。
スープが運ばれてきた。
話を聞きながら一口口にする。
まずっ!
どこの料理下手が作ったのよ。
ニッコリ微笑んでそっとスプーンを置いた。
「……なるほど。皆さんくらい強くないと冒険者は危険なんですね。ところで、門番の方に聞いたのですが、西の古竜が滅びたとかっていうのは」
「ああ、少し前にその噂は俺たちも聞いた。でもなぁ正直、伝説の魔物だからな、どこまで本当の話か」
「でも騎士団が魔物のスタンピードに備えてるって噂もあるぜ」
「それって冒険者ギルドはどうすんだろうな」
「王都の冒険者ギルドはそんな余裕ねぇだろ」
「そもそも騎士団だって古竜の噂なんか気にしちゃいないと思うぜ。政治的なアレだろ」
アレね。
噂話に翻弄される国民に対してのパフォーマンスか。本気で対応する気はないと。
まぁそんなもんだろうな。
王都は古竜がいた西の山からはかなり遠い。
現実的な話として受け止めてる人間はいないってことだ。
「ところでねぇちゃん」
リーダーのジルさんが声を潜めて頭を寄せる。
私も少し頭を寄せる。ナイショ話か?
「お前さん、どこの間者だ?」
ぎくっ!!




