3. 初めての出張
終わりのない水色の空はどの世界も同じのようだ。
吸い込まれるような空に黒い影が一瞬横切る。
出張1日目はこの世界『ディアレスト』のノルン王国の王都だ。
ここは山脈の切れ目にあたり昔から攻められやすく王都が城塞都市になっている。
前方にはすでに城壁が見え
整えられた街道はもう城塞都市まで一本道。
これがワクワクせずにいられようか。
ヨーロッパの世界遺産を見に来たみたいだ。
初めて見る景色に向かって足早に歩く。
暫く歩くと一本道の少し先で商隊らしき馬車が魔物に襲われている。
おぉ〜。魔物なんて。ホントに異世界だ。
魔物はあまり人の街に出てこないと教わったが、この王都の北側にはたしか魔の森があるらしいからそこから出てきてしまうのだろうか?
クマが人里に降りてくる感じか?
商隊の護衛は三人組、ヘルハウンドは五匹だ。
この世界では珍しくもない魔物だし、戦闘が終わるのを少し待つか。
~5分後~
…………早くしてくれないかな?
今日中にやらなきゃいけないことが色々あるんだけど。
せっかく異世界に来たんだし、出来れば王都も少しくらい見て回りたい。
屋台とか、武器屋とか。一通り押さえたいじゃない?
だから、早くして。
~10分後~
――遅くない?
連携どうした?
三人でそれなら、大人数パーティーになったら破綻する未来しか見えないんだけど。
全員で突っ込むなって。
あっ。
横から体当たりされ一人が転倒。
三匹が一斉に群がる。
このままでは足は食いちぎられる……
仕方ない。
「停止」
音が消える。
次の瞬間、私は彼らを追い越し、何事もなかった顔で王都へ向かってまた歩き出していた。
背後では遅れて時間が動き出す。
「なっ! なんだこれは? どういうことだ!」
「お前、いつの間に全部倒したんだよ!」
「いや、俺じゃな……いや? 無我夢中で倒せたのか!」
「お――!! やったぞー!」
「この程度の魔物、俺たちの敵じゃなかったな」
「おうよ、俺様の手にかかれば瞬殺よ」
「それよりお前、足大丈夫かよ?」
「えっ? あっ、ああ、ちょっと引っかかれたくらいでなんともねぇ」
大騒ぎを背中で聞きながら、私は歩く速度を少しだけ上げた。
王都は、もうすぐだ。
「助かったわグレス。三秒超えちゃうとこだった」
「まだ慣れてないんだ、気を付けるといい」
さっきまで空を飛んでいた鷲が肩にとまっている。正確には『フレースヴェルグ』という少々物騒な鷲だが。
「またあとでねー」
グレスとはまた一旦別行動だ。
バサッと大きくひとつ羽ばたいて一気に空に昇っていってしまった。




