2. ブラック神界
「いや〜、莉子ちゃん優秀で助かったよー。もぅ私の評価がうなぎ登り!」
あんたの評価かよ!
神様補のウェストファリアが今日は上機嫌だ。
私の名前は依島莉子。享年34歳。
神界で社畜をやっている。
神界に再就職してから3ヶ月が経過した。
3ヶ月何をしていたか?
もちろん社員研修に決まっている。
すでに身も心もボロボロでいっそ地獄行きの方がマシだった可能性まである。
「一応もう一度お聞きしますが、断れません?」
「地獄行きの確率が70%ほど上がるよ?」
絶妙な脅しだな。
「わかりました、もぅいいです。私は何をすればいいのか教えてください」
「相変わらず話が早いね。賢い子を補佐に付けると出世するんだよねー私が」
神界に労基はない。
月の休日が2日。
タイムカードなんて存在しないから無限のサビ残。
辞めたいとほのめかすと脅される。
そもそも辞めたらどうなるのかよくわからない。
神界の人間は死にはしないが地上で簡単に倒されては仕事にならないので、強制的に力をつけさせられる。
いつしかマゾ化して神界の洗脳完了だ。
「それでね、明日からは地上で仕事ね」
ファリアは、どこからともなくペラリと紙を一枚取り出し、私の目の前に掲げた。
《第一種大規模守護存在終焉後影響調査命令》
「……何語ですか?」
ファリアは満足げに仰け反っている。
いや、そのドヤ顔、意味不明だから。
「初めての仕事だからね。簡単なものからやってもらうよ」
「はいっ!」
私は耳の横にぴたりと手をつけ、直立不動で挙手した。
「何か文句があるの?」
「いえ! 文句の前に、何をすればいいのか一ミリもわかりません!」
「チッ……」
今、舌打ちした?
「いえ、読めますよ? 読めますけど、意味がわからないんです。わかる言葉で説明してください」
ファリアは露骨に面倒くさそうな顔をする。
「全部書いてあるでしょう。古竜が死んだから、その影響を調査して、次代の古竜誕生が必要かどうかを決めるの」
最初からそう言ってくれればいいのに。
……ん?
「それって、異世界ですか?」
「異世界がどの世界を指す言葉かわからないけど、莉子ちゃんが居た世界ではないね。今回は」
やった。
それはつまり、異世界転移というやつでは?
異世界で定住先開拓してスローライフとか送っちゃえばいいんじゃない?
これは……(にやり)
地獄かと思ったけど案外良い仕事なのでは?
「ちなみにずっとその世界に住んでいい訳じゃないからくれぐれも定住の基盤作りとかしないように」
ぐぉっ!
「それから出張中も報告書は毎日二十時までに提出して」
……良い仕事、なわけなかった。
「あぁ、それから……」
まだ何か?
「くれぐれも怪しまれないように。あなたたちは地上に存在していい人間ではないから」




