12. 神界提携教会
王都を出発した私たちはほとんど休憩もせず、丸一日歩き通した。
道は平坦で街道が敷かれているので、途中で仮眠くらいしてもいいと思うんだけど、次の宿場町まではすぐだからと、止まってくれなかった。
か弱い女の子への配慮が圧倒的に足りないと思う。
文句を言いながら歩いていると、やっと川を跨ぐ橋まで来た。
ここは『リーヴェン』という川沿いの町で、ミナトの目的地である『ヴェルダン森林公園』と、王都の間の町だ。
「なんか美味しい物食べたいよー。休憩しようよ?」
「そうだな、まず腹ごしらえするか」
橋を渡ると川沿いには倉庫が建ち並び、町の中に入るとすぐに市場があった。
腹ぺこなので目移りして色々食べたいのにミナトは市場を通り抜けて細い路地を曲がった。石畳が綺麗で、木組みの小さな家が密集している。
富裕層の居住区ではなさそうだが、どの家の前にも花が植えられて綺麗だ。
「この町は王都からも近いし、森も近い。川沿いだから漁師や商人も多くて、全体的に豊かな町なんだ」
「へぇー、なんか王都と違ってのどかでいいね」
「ああ、古い町で、治安も良い」
「で、どこに行くの?」
「もうすぐだ」
道の突き当たりには、この町の規模にしては大きめの教会があった。
「え、ここ? 教会に見えますけど?」
「教会だからな」
ミナトは正面の入口ではなく裏口へ回り、入口にある端末に手の甲をかざした。
「神界提携教会?」
いや、なんじゃそれ?
自分で突っ込んでしまった。
とりあえず私も手の甲をかざして中に入り、ミナトに付いて二階へあがる。
「なんか食べるか?」
「え? 食べたいけど……」
ひとつの部屋に入ると誰もいないカウンターがあり、タブレットのような端末が置かれていた。
「神界から取り寄せられる」
マジかっ!!?
覗き込むと神界のレストランのメニューが写真付きで載っていた。
「えっと、えっと……」
夢中でスクロールする。
うーんと……
「海鮮丼! と、クリームソーダ!」
「なんか気持ち悪い組み合わせじゃないか?」
「いいの! 食べたいんだもん」
それぞれタブレットで注文してそのまま手の甲で精算できる。
「現金が減らないのは助かるね」
「この世界だと、提携銀行は帝国まで行かないとないからな」
「そうなの!? ヤバい。足りるかな?」
お喋りしているとすぐにカウンターの横の箱が光り、また手の甲をかざすと扉が勝手に開いて、中にはトレーに海鮮丼とクリームソーダ、それから醤油とワサビが乗せられていた。
私はグレスのトレーも持って、横の部屋に入ると小さな休憩室のようにダイニングテーブルと椅子、入ってすぐのところに水と緑茶が出る機械が置いてあった。
なんだ、この地味過ぎて庶民的な最高のシステムは。
「この町には神界の提携施設が何もないんだよ。でも何処へ行くにも通る町だからな、教会と神界を部分的に繋げてあるというわけだ。こういう教会は結構あるんだ」
「めちゃくちゃ最高です! ちなみに泊まれたりもする?」
「それはちょっと微妙なところなんだよな。仮眠室はあるから、泊まれないことはないんだけど、寝台が四つしかないんだ。たいてい皆、仮眠だけして、夜は町の普通の宿屋に泊まるかな。俺たちもそうしよう?」
「わかった。私、よくわからないからミナトに任せるよ。ありがとう!」
「な、なにがだよ」
「ん? ありがとう? 色々教えてくれて有難いじゃん。私一人だったらココのこと知らなかったわけだし、使い方も知らないからめちゃくちゃ助かったよ! ありがとう!」
ミナトを撫でるわけにはいかないので白ヘビユーリを撫でておく。
「土地のものが食べたかったら夜にでも食べに行くといいよ、いい店教える」
「ミナトは行かないの?」
「俺も初めての時はあちこちで土地の物を食べて楽しんだりしたけどね、正直大して美味しくないから、何度も旅をしてる内に食べなくなったよ」
「何も食べないの?」
ガリガリだもんなー。
「ううん。フリーズドライの味噌汁とおにぎりストックしてる。俺、飽きないタイプだから」
「なにそれ、ズルい。絶対そっちの方が美味しいじゃん」
「まぁでもさ、初めてなんだから色々食べてみたらいいよ」
いやぁー、水晶ナメクジとか、どんなに美味しいって言われても無理だよ?




