1.ほ。
読みに来ていただきありがとうございます。よろしくお願いします
ただもういいや、と思う。
「勢い」だった。
綺麗な海に沈みたいと思った。
気が付かれずに飛び込めたら迷惑もかかるまいと……
凍える日本海に飛び込んだ。
この気温なら飛び込んだ瞬間ほぼ間違いなく死ねる。
灰色の空の下の真っ黒な海。
白波に吸い込まれ案外清々しい気分になった。
もぅ何も考えなくていいのは楽だな。
***
「もしもーし!」
「もしもーし!!」
「起きてくださいな」
誰かの声?
たしか……私は……?
はっ!! まさか失敗したのか! 絶対失敗しないと思ったのに!
「この海ねぇ、飛び込む人多くて、めんどくさいからすでに神界に繋いであるんですよー」
「え、だれ? 神様?」
「いえいえ、神様補です」
「ほ?」
「はい、規定の現場経験が必要なものでまだ"補"です」
「な、なるほど……頑張ってくださいね」
「ありがとうございます、それでですね、えーっと」
神様補の方が書類らしきものをペラりとめくる。
「すみません、補さん」
「その呼び方やめてもらえます? ウェストファリアです」
「名前負けしてません?」
「大きなお世話ですね。いずれ本柱になりますので問題ありません」
「では、ファリアさん、まず現在の状況についての説明お願いできますか?」
「必要あります? あなた自分で飛び込みましたよね?」
「あ、はあ、なんかすみません」
ちなみにファリアは見た目は人間、藍色の髪が綺麗な美人だ。ただ中性的で男性か女性かの判断はつかない。
「えーっと、それでですね。取り立てて大きな気の毒エピソードがないようですが間違いないですかね?」
「気の毒エピソードですか?」
「ええ、要するに救済が必要かどうか? ということなのですが」
最近よく見る毒親とか過労死とか神様のミスで死ぬとかその手の話か?
「はい、それは間違いないです」
「結構多いんですよねー。漠然と勢いで飛び込んでくる人」
全く困ったもんだとめんどくさそうな顔を隠しもせずに続ける。
「こんなご時世ですので、最近のトレンドはこのまま日本での転生なんですよ」
トレンド……
「へぇー、そうなんですねー、転生というと異世界一択だと思ってました」
「異世界ご希望ですか?」
「いえ、私は漠然と勢いで自分で飛び込みましたので、転生はしなくて大丈夫です。やり直したいとかではないので」
「そうですか、それは話が早くて助かります」
「はい……ん?」
「近年人材の有効活用というのが神様界隈でも問題になっておりまして、あなたには私の元で働いて頂こうと思っております」
そういうの全部めんどくさくて死んだのに。
「いや、あなたねぇ、死んだらのんびり天界でスローライフでも送れると思ったんですか?」
「いえ、そういうわけでは。なんというか、死んだ後があると思わなかったんですよ」
死んだら終わり、って思うよね? 普通。
「そもそも救済案件でもないあなたは地獄行きですよ?」
地獄はイヤかも。
「それともなんです? 勇者とか聖女とかなんちゃらチートとか欲しかったんですか」
なんかこの人、神様になってないのは妥当な気がしてきたな。
「いえ、そういうのは大丈夫です……」
「納得していただけたようでなによりです」
納得した覚えはないが……
神様補は咳払いを一つして、書類をくるりとこちらに向けた。
フラフラっと冬の日本海に飛び込んでご臨終した私は、このちょっと感じの悪い神様補のウェストファリアの元、神界に再就職することになりました。
最後まで読んでいただきありがとうございます。続きを読んであげてもいいよ?という優しい方、ブクマ、評価、よろしくお願いします。




