ほしくずパンをもとめて
ある夏の日、星の一つ『ミザ』は困り果てていた。
「この川、どうやってわたろう?」
ミザの目の前にあるのは天の川。人たちの夢や流れ星が引っかかって、ゆっくりと奥へと流れている白い川。考えている内にちょっとずつミザは焦ってきた。
それもそのはず、今日は天の川の向こうにある星『べカラ』で美味しい星屑パンが発売される日からだ。ふわふわのコッペパンにはべカラ特製の甘い砂糖をふんだんにかけられていて、一口かじれば空へと打ち上がるほどの美味しさらしい。
そのパンを絶対に食べたい! というのがミザの思い。ミザのお腹も共感したようで声を上げている。
「およげないのに、どうしよう?」
ミザは頭をぐるぐる回転させて閃いた。
「そうだ、星で橋を作っちゃおう!」
思い立ったミザは天の川からいくつか取ると、地面に一つ置く。次は少しずらして上に置く。すると二つの間に綺麗な星の筋ができた。これを続けて橋の形にしてしまおうというが、ミザこんしんの考えだった。
そこからはミザの腕の見せ所。ヒョイと簡単に橋を作ってしまった。
「よし、わたろう! ……うわっ!」
ミザが天の川を渡ろうとしたとき、突然天の川がグググっと幅を広げる。今日は七夕。願いが多くなったせいで、ミザの橋は天の川の中に落ちてしまった。
さっきよりもミザとべカラの距離は遠くなってしまったが、ここで諦めないのがミザ。今度は飛行機にすることにした。
「これだったら天の川がひろがっても、かんけいないよね」
思いついた自分を褒めながら再び完成。星の飛行機は手で動かさなくても考えるだけで動く、素敵仕様。
ミザが飛ぶように考えると、プロペラを回しながら飛行機は飛び立つ。ぐんぐん飛んでいき天の川を越えそうになると、なぜか飛行機はバラバラに分解されてしまった。なんと、偶然にミザへ落ちてきた流星群が飛行機にぶつかったのだ。
「うわぁ、ごめんねぇ」
流星群の星たちは流されながらそう言っていたらしい。
泳げないミザ。必死にかくけれど上がれない。
可哀想なミザ。暴れてみるけれど助からない。
そろそろミザが危なくなってきた頃、ミザに手を差し伸べて引き上げてくれる人がいた。友星の『ヨバ』だった。
ミザが理由を話せば、ヨバは、
「だいじょうぶ、ボクにまかせておいてよ!」
と協力してくれる。
「どうするの?」
「こうするんだよ」
ヨバはミザをおんぶすると天の川を渡っていく。
「ボクはおよげるから、キミをはこべる」
少しずつ進んでいく。どんどん向こうが近づいてくる。ヨバは手を伸ばすと簡単に向こうへ着いた。
「ほら、かんたんにこれたでしょ?」
「ヨバ、ありがとう! それじゃ、いってくるね」
ミザが行こうとすると、ヨバは待ったをかける。
実はヨバもべカラに星屑パンを買いに行っていくつもりなのだった。しかし星屑パンは凄い人気で、先着何名様というのが決まっているから、自分が買うためにはどっちかは諦めなくはならないことも少なくない。
「ここに星があるから、わって、おおきいほうをもっているほうが、かいにいこう」
二人が星の端と端を持つ。そして手を捻ると、パキンと音を立てて割れた。大きい方を持っているのは、ヨバだ。ミザは膝と手をついて落ち込んだ。ミザのそんな姿を見ていると、喜んでいたヨバも申し訳なくなってくる。
「ボクがかいにいくけど、ふたりではんぶんこしよう? いっしょにたべたらもっとおいしいよ」
ヨバの提案にミザは頷く。落ち込んでいたときとは裏腹に、顔は屈託の無い笑顔だ。
「ありがとう、ヨバ」
「どういたしまして」
ミザはヨバがべカラへと行くのを見守っていた。
しかし店先にいる店員さんとヨバが何か話すと、ヨバは俯きながら、トボトボと戻ってきた。
「もううりきれだって……」
「いいんだよべつに。そういえば、メヤがパンをやいてるんだって。いってみる?」
「うん、いこう!」
メヤはミザの友星でヨバとも仲が良く、いつも三人は一緒。メヤが今日、パンを焼くというので待っていたけど、ミザは今日が星屑パンの発売日というのを思い出し、時間もあったので買いに来たという訳である。
そんなとき、声がした。
「あ、ミザにヨバ、こんなところでなにやってるの?」
話に上がっていたメヤだ。紙袋を持っている。家に帰るところだったらしい。
「星屑パン……たべたかったな」
「え、それってこれのこと?」
メヤの持っている紙袋、中身はなんと星屑パンだった。しかもご丁寧に三つも。
「あっ! ほしくずパンだ!」
「あの、もしよかったらふたつ、ボクらにくれないかなって」
ヨバが頼み込む。するとメヤは何でもないように、
「いいよ。アタシの家でふるまおうかと思ってたけれど、いまたべても、だれもわるいこといわないし」
そうして、偶然に、二人は星屑パンにありつけたのだった。
「やっぱり、ほしくずパンはおいしいな」




