9自宅にはないはずの、暗殺者リスト
私は、衝撃した。
なぜなら、目の前には血だらけに染まったジョセフとウメがいたからだ。
「ジョセフさん意識ありませんが脈が回復してきています!ウメさんは脈打っていますがかなり弱いです!こちらにも援護お願いします!」
殺し屋の医療部隊のメンバーが次々と作業を行っていた。
殺し屋の医療部隊は、歴が短いものの、名のある医師たちが裏社会の怪我人のために結成された精鋭部隊である。
私は二度三度セレナと呼ばれなければきっと気づかないでいただろう。
「セレナ!セレナ!その男をこちらに運べ!」私は動揺しつつも頷き、新調された白いシーツの上に剣城を運んだ。
「彼の名前は剣城忠信、51歳。持病はなし。」医療部隊のセカンドヘッドの林村剛努はありがとうと一拍置き再び作業へ戻った。ジョセフとウメ以外にもジョセフの手下である5人が治療を受けていた。
「セレナ、ちょっと。」私はコープスに呼び出され、コープスとともに事件後処理部隊の仕事部屋に向かった。ここの仕事部屋に行くのはこれが二度目。一度は私がホシを殺す直前にコープスに連絡を入れなかった時だ。私はコープスに死ぬほど怒号を浴びさせられ一週間の謹慎をくらった。とんだ失敗だと今でも反省している。
「入って。」コープスと私の身長は粗方変わらず、同じくらいだ。私の身長が164㎝でコープスは166㎝となっている。
「話って何?」私から会話をスタートすると、コープスが膨大な情報を私に伝えてきた。
「いくつか伝えておく情報があるからよく聞け。まずジョセフの手下5人のうち3人が即死。2人が意識を取り戻した。ウメとジョセフはさっき見た通り。そしてジョセフがセレナに渡した紙切れ。その紙切れには住所が書いてある。間違いないか?確認させてくれ。」私は内ポケットから一枚の紙切れを取り出し中身を開いた。
東京都武蔵野市東町●ー●●ー●
「何の住所だこれ?」
「これは、私とジョセフの家の住所だ。」コープスは興味の目を示した。「お前ら一緒に住んでんのかよ。てか何でここにそんな住所が書いてあるんだ?」私もなぜか知りたい。ジョセフがどんな意図でこんなものを渡してきたのか。その後に続くメッセージ的なものがあれば指示に従うのに。
ドンドンドンドン!
「何だ?」仕事部屋の扉が根気強く叩かれた。私は不安になりながらもトカレフを構えた。
ガチャ
「大変だ!ジョセフが、ジョセフが!」扉を開けた向こう側にいたのは林村だった。鬼の血相をしてジョセフが!ジョセフが!と繰り返し訴えた。
「落ち着け!ジョセフが何だ!」コープスは林村の両肩を掴み動揺を抑えようとした。
「ジョセフが、消えたんだよ!」
私は耳を疑った。ジョセフが、消えた?!
私とコープスは急いで部屋を飛び出て地下室に向かった。ジョセフは意識がないはず。なのに消えた?逃亡するのも不可能に近い。完全に密閉された地下室から逃げるなんて。脚を損傷しているのに階段を上がることも出来ない。私はひたすら考えた。
「ジョセフ!」私は叫んだ。本当にどこにもいない。どこに行った?アイツはどこに行ったんだ?!
「セレナ!これが、、、」私は林村にあるカードを渡された。そこには兎のような絵柄が書かれており、中には小さな地図が入っていた。日本地図の一部だ。千葉県から北に向かって伸びている。まるで大日本沿海輿地全図だ。木製色で作られている。にしても、なんでこんなものが部屋にあるんだ?その前に私はやらなければならないことがある。
「みんな、おそらくジョセフは逃亡した。多田総は敵認定する。みんなにジョセフの写真を送信する。似たようなやつや少しでも異変を感じるようなやつがいたら私に連絡してくれ。」その場にいた人間は私に返事をした。
ジョセフ、あんたのことは信頼していたよ。でも、もう、大っ嫌い。
私は謎のカードと地図を握りしめて部屋を後にした。医者たちは少しばかり落ち着き怪我人の手当てを始めた。ウメの容態は悪化したままだ。アイツ、許さない。殺してやる。
ピンポーン
押しても返事がない家に帰宅した。あれからアジト周辺をくまなく捜索したが、ジョセフ逃亡事件に繋がる手がかりは見つからなかった。
カチッ
私は玄関入り口でトカレフを構えた。部屋の中は鈍い空気が漂っていたからだ。
「誰もいない。」この空気で誰もいないなんて不自然すぎる。私はそう感じた。
私は机の上に地図を広げた。と同時にカードに目移しをした。カードには、四角に兎のマークが書いてあり四行のメッセージが書かれていた。
『殺し屋JK
お前には失望した。お前の家にリストを隠しておいた。ジョセフは頂く。俺の名前は勝地洋輔。お前ら殺し屋はいずれ消滅する。気をつけろよ。』
「何なんだよ!」私はカードを床に叩きつけた。怒りが込み上げてきた。怒りが止まらない。なぜだ。なぜこんなにも怒っているんだ?
「クソっクソ!勝地、勝地!」
全ては勝地の思惑通りなのか。私に酒をかけたのも、ジョセフを逃したのも、ウメを撃ったのも!あれは、手下が撃ったんじゃない。ウメの急所を少しずらして撃てるのもあの男しかいない。勝地は射撃の天才だ。コアの情報収集の一つにそう記されてあった。
あの時、勝地はあえて急所を外して撃った。私を落とし入れるためか。どん底に落とすのか。精神的にも肉体的にも。ジョセフと勝地は常に行動を共にしていたのか。そうだったのか。
にしても、何の地図だこれ?赤いマークをしてある所をまとめると、千葉県の勝浦市、神奈川県鎌倉市、大磯市、東京都八王子市、武蔵野市の五市だ。武蔵野市と鎌倉市以外の三市はまったく私にゆかりがない。私に地図を渡すということは奴らの狙いは私。この市が何を表しているかなんて行ってみないと分からない。私が各市に行ったタイミングで私を殺すなり何なりするのだろう。あの二人の思惑通りにはさせない。
「ふんっ。殺してやるよ。」
私は青ペンで鎌倉市に三角マークを書き足した。次の決戦地は鎌倉ということか。
私は部屋の明かりを消し、LED懐中電灯を口に咥えながら部屋の捜索を始めた。
リスト、リスト、リスト。どこにその”リスト”があるんだ?勝地のメッセージが本当とは限らないが、信じる余裕はある。嘘かもしれない。でも、嘘でも本当でも私は信じる。人はみな嘘をつかないと生きていけない。なぜなら、嘘がないと何も守るものがなくなってしまうからだ。勝地もその一人だ。
私は自宅の棚や引き出しを捜索した。ベッドの下、冷蔵庫、テレビ台。引き戸がある家具を全て探した。
どこにもない。全て探したはずだ。どこだ?思い出せ。探していない場所、何か見落としてないか?どこだ?どこ‥金庫扉か?!
私は冷蔵庫裏にある金庫を取り出した。
重たい。でももうここしかない。
「ロックがかかってる。パスワードは、多分だけど、7326478。」
カチッ
開いた!私は金庫の扉を開けた。中にはファイルと拳銃が入っていた。拳銃に弾は入っていないようだ。
ファイルの題名は、『暗殺者リスト』
「見つけた。」私は暗殺者リストを開いた。おそらく全てのページに左上に顔写真、個人情報が書かれてあった。殺したであろう人間には顔写真に赤バツがされてある。暗殺者リストはおそらく2015年に作られたものだ。最後のページに製造年と兎のマークが書かれてある。これも勝地の仕掛けなのか。
私は黙々と暗殺者リストを見ていると、衝撃的なページを見つけた。それは、柳小春と書かれているページと藤沢貝と書かれているページだった。左上には私たちの顔写真が貼ってある。これは、暗殺者リストだよな?なぜ私たちの名前が書いてあるんだ?理解ができなかった。ただひたすらになぜだ?と疑問が沸いた。
バン!
勢いよく扉が開く音がした。私はすぐにLEDライトの灯りを消して冷蔵庫裏に隠れた。
トコトコ
革靴のような足音が近づいてきた。誰だ?一体誰だ?鍵を閉めたのに、一切の音を立てずに侵入してきた。一般人ではないことは確かだった。
「セレナ!」何者かが私の名前を叫んだ。この声って‥まさか、
バン!
「動くな。」男は冷蔵庫を撃ち、私を威嚇した。まずいな。私が冷蔵庫裏にいるということがバレている。
私は男の姿を捉えるために眼鏡をかけて、緊急事態収束部隊のサードヘッドであるナルに連絡をした。私がかけた眼鏡には超小型監視カメラが導入されており、いつでも誰にでも画像をリアルタイムで提供することが出来る。オーディンとアルチュールは治療を受けているため連絡不可能。死体処理部隊と事件後処理部隊は怪我人の治療で手一杯。消去法でナルしかいないのだ。
私はカメラをオンにし、立ち上がった。
カチッ
「私がセレナだ。お前は、何者だ?」
「ふんっ。俺はな‥」
彼の口元がほんのり緩み、トリガーを引いた。黒煙の夜に光速の光が私を貫通した。
パァァン!




