79侵入者①
「誰だ」
アルは声を低くして言った。
『侵入者、一階フロア侵入。一階フロア侵入』
「一階フロアは誰だ?」
『ナル?敵はまだ遠い。警戒』
「ナルか」
狙撃の天才、コープスがいなくなってから遠距離攻撃が乏しい。射撃の上手いセレナもいない。俺たちで敵をどうにかしなくては。
パァン!
『ナル!?大丈夫か?』
『あぁ。ちょいとかすった』
無線機からナルの声がした。続けて。
『全員聞こえるか?俺が囮になるから、その間に一階に集合してくれ。挟み撃ちする』
「了解」
アルチュールは弾数を確認してから一階フロアに向かった。
俺も同じように向かった。
「ククリも撃たれてナルも負傷。一体どんなやつなんだ」
「会ってもすぐに撃っていいからね?アルは優しいから」
「分かってる」
俺たちは小走りで南門に急いだ。この間はナルが時間稼ぎをしてくれている。俺たちがなるべく早く行かなければ、ナルが危険だ。
パァン!
「ナル!?」
『あ…..あぁ———これで2人、死んだ。お前らが俺らに銃口を向けるなんぞ早すぎる』
「あんた、誰だ?」
『知りたければ、大人しく藤沢貝を渡すんだ』
———は?
藤沢、貝だと?
なんで名前を知っている?
誰だ、どこから漏れた。
『侵入者、1名負傷』
「負傷者の特徴は!?」
『小柄で短髪。黒スーツにローファーを履いている。右肩を負傷している。もう1人は身長推定180超え。黒スーツに同じくローファー。短髪で前髪を七三分け』
「くっそ…….」
「刑事だな」
隣にいたアルチュールが呟いた。
もうこの特徴は、刑事に他ならない。
「他に援護はいないのか?本当に2人だけ?」
『各方位門、他の侵入者なし』
ナル、ククリは撃たれた。
たった2人なのに、なぜこちらが優勢ではない?
この状況を打開できる策はないか?
どうする、どうする?
その時、アルチュールがトカレフの弾数を確認した。
「弾数…….」
あの隙を狙えば———!
「リアム?侵入者が撃った弾、どっちが何発か覚えてるか?確か合計で3発だ」
『小柄が2発、もう1人が1発だ』
「奴らが持っている銃のタイプは?」
『2人ともピストルだ』
ピストルなら経口によって弾数は異なる。多くて20発。少なくて7発だと思う。
2人とも同じピストルなら、小柄の男の弾数は多くて18発、少なくて5発。もう1人は19発、もしくは6発。
「リアム?流石に経口は見えないよな」
『経口は厳しい』
20発で考えるか、7発で考えるか。
確率は二分の一。
「どうするコア?」
「…….奴らにも球数の限界がある。弾を補充するタイミングを狙う。リアム?いま奴らはどこにいる?」
『侵入者、一階階段踊り場にいる。1番近いのは、ジャックだ』
「了解。ジャック聞こえるか!?」
『聞こえてる』
「なるべく敵の弾数を減らして欲しい」
『了解。北門に呼び寄せればいいんだよな?』
「あぁ。俺たちの方に向かって来い」
ここで一度、無線を切った。
作戦はうまくいく。
ジャックを囮に出来るだけ相手の弾数を減らす。
ピピピピ!!
『ジャック!逃げろぉぉぉぉ!!!』
「えっ?」
パァァァァンン!!
「なんだ今の銃声は?」
リアムの叫び声と共に、明らかにピストルではない音がした。
『は———?』
「何が?何があった!?」
『侵入者の、1人が撃たれた』
「んだと?ジャックが撃ったのか?」
『いや…..違う。遠距離攻撃だ』
「遠距離…….?そんな奴いないはずだ」
『じゃあ、一体誰が———』
パァァァァンン!!
「おっけぇぇぇ!!久しぶりに撃ったけど、ぜっんぜん衰えてないわぁぁ!」
「敵、倒れた」
「無線機もらっておいてよかったなぁ!」
「敵、あと1人」
「あのでっかい方か!任せなって———」




