69ロルバンの役目
「コア?!おい、聞こえるか?」
「んん…..あれ」
目を覚ますと、そこにはアルがいた。
「おい何倒れてんだよ!心配したじゃねーかよ!」
「俺って、どうしてた?」
さっきまで貝ちゃんの亡骸が目の前にあった。そこで、外に出て、いや、何日か経って。
「セレナを病室に移した後、廊下に出たらお前が倒れてて驚いたよ」
「倒れてた?気を、失ったのか」
「多分。林村によれば、軽い疲労だとか。何か思い詰めてたのか?」
「いや、思い詰めてたっていうか、セレナって生きてる?俺の中では死んだんだ」
アルチュールはタバコを吸いなながら意味分からないよと言ってきた。
俺のあの彼女の姿は、何だったんだ?
幻覚?夢?
「頭冷やせよ。セレナがいない分、仕事が分配されて負担が増えるからな」
「…..分かった」
そのまま枕元に置いてあった灰皿にタバコを捨てて部屋を出た。その背中のせいで余計に頭が痒くなった。
「はは。セレナは.....生きていたのか」
なんて悪い妄想だ。貝ちゃんは生きている。俺の勝手な世界観だったのか。
ゆっくりと体を起こしていつもの黒色のパーカーを羽織った。サンダルを履いて彼女の元に急ぐ。
道中、笑いが止まらなかった。幸せで、幸せで、嬉しくて。
藤沢貝は、才女であり頂点であるから、絶対に死なない。最後まで自分の使命を貫く。
「セレナ?」
病室に着き、セレナの顔を覗き込む。端正な横顔が風に吹かれてぐっすりと眠っていた。
「よかった.....」
かなり重傷を負ったみたいだが、ほんとに無事で、よかった。林村に酒でも奢らないと。
僅かに泣きながら部屋を出て、仕事部屋に向かった。歩く速度が増してだんだん走るようになった。仕事がこんなにも楽しみなんて、久しぶり。早くパソコンを開いて情報収集をしたい。結果を残してみんなを驚かしたい。さっさと業務を終わらせましょっと。
ガチャ
仕事部屋につきいつもの席に着いて仕事を始めた。
今日の業務内容は、セレナと刑事の本多の接触について。
俺はセレナが武蔵野警察署の前で乱闘を起こした日から2日、気を失っていた。
のちに分かった情報だが、セレナが襲った2人の刑事はどちらとも生存。本多も意識はあるが、全治4ヶ月の負傷。警察署で受付をしていた女は言った。1人は滅多刺しにされ1人は数回刺されたという。一瞬で地獄に変わり戦場に来たような感覚に陥った、と。
しかし全員生還とは、流石はプロ。刑事を甘く見るとすぐに殺されそうだなー。
「ほんだ、ほんだ.....あ、あった」
3人の刑事のうちの1人である本多。奴はかなり厄介な存在になりそうだ。
次は練馬統合と白川家の関係について。
一見、関係なさそうな2組だか、これまた繋がってそうなんだよな〜。
何が繋がってるって、セレナがリアムに鑑定を依頼して出た結果、白川家の家系図。
父親である白川悠仁のすぐ近くに書かれていた練馬統合の幹部らしき人物の名前。確かに練馬統合で働いてた神崎三重子。
そしてこの家系図に書かれている神崎と一緒に書かれていた勝地の走り書き。それは練馬統合に関するメンバーの名前だった。
そこに、トップに君臨してそうな人物がいる。
それが、春綺が言っていたロルバンが電話していた相手に違いない。
鬼嶽。
お前こそが全ての元凶であり、白川家と繋がっていた。
白川家を洗脳していたロルバンが電話していた”あの方”みんな口を揃えてこの言い方をする。ジョセフなんかよりも上の人間。ジョセフはこの業界ではかなりの巨星。俺はジョセフより上の人間を見たことがない。聞いたこともない。
練馬統合は殺し屋を専門とするチームではない気がする。だとしたら俺はとっくに知っているはず。
まずはどう白川家と繋がってたから調べる必要がある。
白川家の情報をもう一度洗い流そう。
全員の個人情報、住所、出身地、学校、年齢、口座...
「口座...こうざ?」
待てよ。ロルバンは昔から先方との交渉上手だった。白川家と練馬統合をつなげる橋渡しの役割を、ロルがしていた?




