68ベッド消滅
「林村!」
「はいはい落ち着いて。どこを撃たれた?」
「胸の出血がひどいんだ」
まずい。撃たれた箇所が悪く、意識がない。車内で止血はしたものの、途中で意識を失った。
なぜ遠くの大磯まで来てしまったのだろう。
「セレナはどうなる?!」
「最善は尽くす。だが———」
「え?」
♢
「うそ...だろ?」
「間に合わなかった」
セレナに触れると、指先がひんやりとした。まるで氷を触っている感覚に陥った。
「セレナ?依頼がきてるぞ。早く、行かないと」
彼女が溶けてから依頼が立て続けにきて、手が回らなくなっている。
「仕事だぞ。ほら、セレナ———」
「コア?」
アルチュールが話しかけても応答はない。
コアの動きが止まり、両手を彼女の頬に当てていた。
「冷たいなぁ」
「.....」
治療室にいたアルチュールと林村はセレナではなく、生存しているコアを見つめていた。
「席を外す」
部屋に取り残された二人は、去っていく彼に何も声をかけられなかった。
コアは治療室を出て、行き先も分からないままとりあえずタバコを手に取った。
「ふぅ...はぁ」
廊下を徘徊しながらタバコを吸い裏口に出て地面にしゃがんだ。
夜空を眺めながら白い息を吐いた。目の前が暗くなり、クソと一人嘆く。
「は。どういうこと。死ぬ?」
このタバコは安心するためじゃない。落ち着くためのタバコだ。
俺は今、夢を見てるのか?だとしたら悪い夢だ。さっさと覚めて顔を洗いセレナと仕事に行かないと。
ヨレヨレになりながらも立ち上がり、再び建物の中に戻った。
『セレナ?』
『ん?』
『今日の依頼はすぐに終わらせるぞ』
『は?なんで』
『だってアルとご飯屋予約しちゃったんだもん』
『おぉ〜やるじゃん。アルとのご飯会が世界で一番楽しいんだよな』
『ガチでそれ』
「分かった。ご飯屋予約しておくから、来いよ」
体は芯から冷めきっていた。背筋も伸ばすに筋肉も凝縮している。
「コア?!」
俺はいつの間にか、廊下で寝転んで倒れていたらしい。
セレナが死んで5日が経過した———




