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『もしもし貝ちゃん?』
「どした?」
学校帰り、コアからの電話が鳴った。
『今日、練馬統合に行ってきた。それの報告会を開きたい。今週の日曜日、大磯のアジトに来てくれ』
「了解。今日は行けないからそっちは任せた」
「おっけー」
電話を切り歩いて帰路を辿った。
重たい鞄のせいで肩が痛む。小テストが連続で続き十分ストレスが溜まっていた。
「貝ちゃんまたねー!」
帰って課題を終わらせて、練馬統合について調べて、コアに連絡して。あとは、明日提出の事務関連のものも出さなきゃ。
「貝ちゃん?」
「え、あまたね」
まずい。ぼーっとしてると周りが見えなくなる。最近は運動もできてないせいで代謝が悪い。汗もかきにくくなってるし。
「しっかりしろ.....しっかりしろ」
いつものようにイヤホンをつけて音楽を聴いた。
「ただいま.....はぁ」
帰ってすぐにソファに寝転んだ。手も洗わずに帰宅したままの姿で。
何か作業をしないと。
優先順位としては、第一に練馬統合について。主に勝地が残した走り書きを参考にする。
さらに、練馬統合はなんらかの形で白川家と関わっている可能性がある。白川家の大黒柱である悠仁のすぐ横に、練馬統合のメンバーの名前が書かれてあったからだ。その可能性も視野に入れながら日曜日までに情報を整理しなければ。
起き上がり制服から部屋着に着替えた。自宅用のパソコンを起動させてリアムがファイルに保存してくれた白川家の家系図を開いた。
「やっぱりあるんだよな———」
“神崎三重子”あなたは誰なの?
ピンポーン
「はーい」
作業する手を止めて玄関に向かった。
「はい」
「藤沢、貝さんですね?」
チェーンをつけたまま隙間から見えた姿は、きっと。
「武蔵野警察署の本多です」
口を開け、目を開いた。うそ。なにもわからない。
「何の用でしょうか」
「こちら、令状が出ております」
「令状?すみませんなんのことだか.....」
「殺人罪の罪に問われています。事情は全て署で伺いますので、同行願います」
「いやだから殺人罪とかなんですか?私何もしていません」
「もし君が何もしていないと言うなら、なぜ高校生が殺人罪という罪状を聞いて正気でいられるか。頼む、君の潔白を証明するために来てくれ」
私は、確信した。
「.....分かりました」
「ご家族はいる?」
「一人、血の繋がらない兄がいます。少し複雑な家庭でして」
本多は深く頷いた。
「分かった。お兄さんにはこちらから連絡しておく。それじゃあ着いてきてくれ」
私はチェーンを外して本多との距離を縮めた。彼が目を話した隙に、反射的に下駄箱のナイフを手に取った。
私は部屋の鍵を閉めるふりをしてその鍵をポストの中にしまった。奇跡的にスマホはポケットに入ったまま。しかもダミーのもの。検索履歴を見られても困らない。これでコアに連絡。
しかし汗が止まらない。指先が冷えて感覚もない。
どうしよう、焦る。まずい。
「乗って」
車内にはもう二人の刑事らしき人物がいた。今日の講演会でいた奴。なんで?
目を開き、大きく息を吸った。表向きは平然で、内心は雄叫びを上げている。
「藤沢は、なぜ連れてこられたか、分かるか?」
「全く」
「そうかな———」




