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殺し屋JK、ターゲットは父親でした。  作者: 椿原菜湖
殺し屋JK、ターゲットは父親でした。大磯編
64/69

64本多vs藤沢

「着席。」

学級委員が声をかけると同時に全員が腰を下ろした。窓際の席になると、座っているどんな時でも優しいそよ風が頬を撫でる。髪をかき上げたところで意味はない。

少し段差がある教卓で担任が話をし始めた。

「今日は午前中に地元の刑事さんと講習会があります。みんな失礼のないように。」

クラスの雰囲気がパッと明るくなり、授業がないことをみんなで喜んだ。一軍男子たちは猿のように叫んだ。女子たちも彼らに便乗して互いに喜び合った。

「お前ら真剣に取り組めよー。」

担任が声をかけても収まらない。うちのクラスは学年の中でも問題児が多いとされている。全学年の教員から常時ロックオンされているのだ。

「それじゃーホームルーム終わりまーす。はよ号令。」

「起立、礼。」

学級委員が号令をし終わると、みんな各自行動に出た。友達の元に行き机上に頬杖をついて団欒を楽しむ生徒。大人数で廊下に出てトイレに行く生徒。定規戦争をし出す生徒。対して私はどうだ。一人虚しく席につき本を読んでいる。今の状況で平常心を保ち他の生徒と喋れるわけがない。もう少し時間が経てば刑事たちとご対面なのだから。

腕時計を確認すると針は8時半になろうとしていた。

「あのさ、講習会って何時からだっけ?」

「9時に整列完了だよ〜。」

「ありがとう。」

後ろにいる私と同じような読書好きな女の子に話しかけた。彼女は躊躇いもなく質問に応答してくれた。彼女を見るたびに、私もこんな無垢な心を手に入れたいと思う。

「お前ら時間だぞ。はよ並べ〜。」

突然教室の電気が消された。何事かと思ったがただ担任が迎えに来ただけだった。

クラス中がワッと盛り上がりを見せた。めんどくさいと少し前までの興奮はどこかに消えていた。

「ぐちぐち言わなーい。」

私は人混みの中に沿って教室を出た。出席番号順に整列するもすぐに解けて各自自由な位置に立つ。藤沢の”ふ”は比較的後ろの方だった。担任と話すのが嫌いなので、私は持ち場よりもさらに後ろに下がった。

狭苦しく変化していく廊下で何十人もの人間が進行を始めた。



「それでは、本日お世話になる武蔵野警察署の皆様です。」

鬼の顔をした主任が刑事たちの紹介に回った。

「本日は武蔵野警察署から3名の方々がお越しになりました。右から、自己紹介をお願いいたします。」

ガタイのいい男が3人横並びに並んでいた。左に一番背丈のある刑事、中央に本多(あいつ)、その横に本多よりも少し高い刑事がいた。

「はい。武蔵野警察署、組織犯罪対策部に所属しています。木村沢朗(きむらたくろう)です。本日はよろしくお願いいたします。」

「同じく組織犯罪対策部の本多(ほんだ)と言います。」

チビのくせに偉そうにしやがって。何が、本多と言います、だ。その名前を名乗るな塵カスが。

澤村恭輔(さわむらきょうすけ)です。今日は皆様に不審者に襲われた時の護身術を学んでいただきます。」

順調に進む講習会。意外にも耳を澄まし沈黙して話を聞く生徒たち。全てが重なり苛立ちを覚える。

「それでは、隣の子とペアを組んで今見せた手解きをやってみましょう。」

あーめんどくせぇなー。

こんなことよりもコアたちは上手く潜入操作できてるかな。アルチュールとは仲がいいから連携は取れてるはず。それよりも練馬の保険会社が用心深く、私たちの正体がバレなきゃいいが。

コアは今年から共に仕事仲間として走り続けてくれた。優柔不断な私を裏から支え、時には頼れる先輩となっていた。互いに父親を失った時も互いの穴を埋めるようにした。

アルチュールは本当に縁の下の力持ち。もうこうとしか言いようがない。彼は表向きに活動することが極めて少ない。彼は幹部の中で唯一の既婚者であることが理由である。私やチームなんかよりも家族を重宝している。

今年は”変化”としか自分を言い換えられない。普通の高校生だった私を殺し屋という道に連れて来たジョセフ。彼に育てられいなかったら今の私はいない。と、思うかな。

「あの.....白夜さん?」

「え、あごめんなさい。えっと、手解きだっけ?」

私は隣の生徒と手を組みいつもより力を緩めた。

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