62潜入捜査作戦
「練馬統合保険会社?なんだそれ。聞いたこともねぇわ。」
「う〜ん、私も分からないんだけどね。今調べてるところ。」
キャスター付きの椅子のタイヤの音が仕事部屋内に響いた。私がうるさいと言えばコアは眉間に皺を寄せてその場に停止した。
私はリアムのいる仕事部屋にコアを呼び出した。ちょうど彼も仕事部屋にいたため、すぐに来ることができた。
私のことを学校からアジトまで送ったあと、家に戻るのが面倒だからって仕事部屋にこもって仕事をしてくれていた。
ここ、大磯町のアジトは全ての部隊の仕事部屋が隣接している。一番奥の部屋から緊収、死体処理、事件後処理、そして殺害部隊だった。コアはずっと殺害部隊で仕事をしていたと言う。
「練馬って、ちと遠くな〜い?勝地は多田とずっと一緒に行動してたわけだから....吉祥寺だから近いっちゃ近いか。」
「そもそも、走り書きなんてどこで書いたのか分からないし。発見したのは成城の家だったからそこで書いた可能性が高いけど、なんでこの会社名を書いたんだろうな。」
「勝地はラビットアサシンの当主であった。そして同じチームメンバーだったクララの家族である白川家の大黒柱の白川悠仁の隣の欄に練馬統合保険会社の女の名前が書かれてあった。それが、神崎三重子。すなわち勝地は練馬統合保険会社となんらかの関係性がある。」
私は呼吸を止めることなく話続けた。コアはパソコンに情報を打ち込みながら時々目を見て頷いた。隣にいたリアムも感慨深く話を聞いてくれた。
「ホームページを見たところだと、住所は練馬区練馬1-3-3。駅のすぐそば。電話番号は03-1234-5678だ。」
自身のパソコンで調べたホームページを見ながらコアがゆっくりと情報を教えてくれた。私は急いでペンを取り出して得意の速記術を使ってメモを取った。この姿を見たコアは目をまんまるにして声を高くして言った。
「うわ〜!なにそれ?!いつの間にそんなことできるようになってたの〜!」
「速記?セレナすごいね?」
態度や声が大きいコアと小さいリアムとでは全く違う反応を見せた。対極的な人間を比べると第三者からは面白い。
「最近見たドラマで速記やってたのを見たのさ。自分で調べてやってみただけ。」
「全く読めない。あなたが何を描いてるのかも分からん。」
私は自分が分かればいいと伝えて仕事に集中した。コアは相変わらず怪奇な高い声をあげて叫んだ。私とリアムはいつもの如しフル無視をかました。
「まぁ〜とりあえず凸ってみようぜ。行ってみたら分かることもあるかもしれないし。」
「そうだね。相続に困ってますって適当な口実作って会いに行く?」
私は腕時計に視線をやった。時刻は17時半過ぎ。あたりもすっかり暗くなり冬季を匂わせた。
隣に座っていたコアが私の言ったことに反応してきた。
「そうだね〜。もしね?!もしここの会社が本当に普通の保険会社だとしたらめんどくさいから、こちらもガチで変装して講座とか作らないとだな〜。」
続いて隣にいたリアムが話しかけてきた。
「相続に関する資料とかは緊収で作成する。作って欲しいものとかあれば連絡しといて。」
「了解。コア、行こう。」
「うぃーっす。」
私たちは立ち上がりパソコンを持ってリアムにお辞儀をして部屋を出た。リアムは右手を挙げて相槌を打った。
「なんかリアムまた身長縮んでなかった?」
「お前静かにしろっ!」
私はコアの背中を力強く叩いた。コアは泣くそぶりをしだした。まぁいつものことだから無視無視。
ガチャン
殺害部隊の仕事部屋に足を踏み入れて持ってきた資料をもとにこれからの計画を立てた。
「本当は貝ちゃんに潜入捜査してもらいたいけど、学校との釣り合いが大変だから俺が行ってくる。祖父祖母が死んで兄弟との相続問題で困ってますって。兄としてアルチュールを連れてくよ。あいつが偽装資料をもろとも作ってくれるだろうから。」
アルチュールは本当に艤装資料を作るのが上手い。自然な演技も魅了させるほど。彼を連れて行くのは健全な判断だろう。
「いつ行く?日にちを教えて欲しい。」
「明日、アルチュールに予定組んでもらって行ってくる。」
「了解。」




