61練馬統合保険会社
「それと、セレナたちが侵入して手に入れた勝地の走り書き?みたいなのも分析した。」
「あぁ、そういや頼んでたな。なにか書いてあったか?」
リアムは私のそばから離れて本棚に向かった。彼はいくつかの本を取り出して机に置いた。古書や新聞雑誌、4コマ漫画総集編というものもあった。それは昔ジョセフが好み読んでいた漫画と同じであった。視界に入れた瞬間、彼を思い出さないわけにはいかなかった。
ある程度の本を丁寧に取り出すと、暗証番号を入力する装置が現れた。リアムは慣れた手つきで”4649”と打ち込んだ。
『暗証番号を確認しました。』
ぴー音の後に本棚が音を立てて手前に動き出した。
「すげぇな。」
「本棚俺が作った。」
ドヤ顔でガッツポーズをしてきた。はいはいと大雑把に対応すると悲しそうな声で泣くフリをした。
「か〜な〜し〜い〜!」
「めんどいめんどい!」
リアムは私の椅子を押し引きしてきた。リアムの頭を叩くとようやく分かってくれたのか、だる絡みをしてくるのを辞めた。
彼は自動で開いた本棚に向かった。私も椅子から立ち上がりリアムについていった。
「失礼しま〜す。」
本棚の奥にはさらに部屋に繋がっており、扉が2枚あった。リアムと私はその前で立ち止まった。
一枚の扉には(2.5)もう一枚の扉には(2.6)と書かれてあった。
「2枚、扉がある。」
私がつぶやく頃にはリアムは私より前に一歩出ていた。私と身長差がほとんどないのに頼もしく見える。筋肉質で筋トレが趣味の彼が前に立てば誰でも惚れる。
「これどっちに行けばいいの?」
リアムに問いかけても無視。何をしているのかと思い彼の顔を覗くと、なにかをブツブツと呟いていた。
「3x2−12x+6=3(x2−4x)+6 =3(x2−2・2x+22−22)+6=3{(x−2)2−4}+6は、ここがこうでこうなるから.....」
「あんた何言ってんの?」
「答えは(2.6)。だからこっちだ。ついてこい。」
リアムは左の扉を開けた。
『正解です。』
美しい女性の機械音が鳴った。邪悪な耳を浄化してくれるような声帯だ。扉が開き、暗い部屋に続いていた。
「毎日の頭の運動として問題を解いて正解しないと部屋には入れない仕組みになってるんだ。」
「だからってなんで平方完成?」
「よく分かったね。」
「数学のここの分野は好きだったからね。」
一応まだ、私が高校生であることは隠し通している。サードヘッドのリアムは信頼できる相手だから、のちのち言おうと思う。
「ここに、保管しておいたんだ。」
リアムは手のひらで部屋の中を見せてくれた。部屋の中は暗闇に染まり、リアムの目に映る自分を見るので精一杯だった。
「ごめんごめん。電気つける。」
リアムはポケットから小さなリモコンを取り出して天井に向かって電源を入れた。すると、部屋の電気が一斉についた。
「まぶし。」
「大事そうな資料は全てここに収納してある。」
部屋の一角にある私たちの膝丈ほどの宝箱のようなものがあった。リアムはそこの目の前に立ち鍵を開けた。
後ろからその中の様子を覗くと、一つ一つくぎられていた。看板代わりといってはなんだが小さな紙にその資料のタイトルが書かれてあった。
「これこれ。」
リアムはそう言いながら私にある一つの資料を渡してきた。それは透明のファイル、中を開きページを巡っていくと、最初にリアムが書き込んだであろうメモが大量に挟んであった。そして一番後ろのページに私が資料として渡した勝地の走り書きが挟んであった。
そして、ある一つのページに辿り着いた。右下を確認すると13ページ。
「練馬、統合保険会社?」
練馬統合保険会社。聞いたことのない会社名が書かれてあった。そのページを指でなぞりながら下に見ていくと、内部構造のようなものが書かれてあった。
「あぁ〜”魔の13ページ”見つけちゃった?」
「魔の13ページ?」
「まぁまぁ一つずつ説明するからこっち来て。」
リアムは立ち上がり出口に向かった。私もそれについていくように部屋を出た。彼は本棚を動かして元の位置に戻した。私はファイルを持ったままソファに腰掛けた。リアムもパソコンを持って向かいに座った。
「それじゃ今から、資料の結果報告をします。」
「はい。」
リアムは真剣な眼差しでファイルとパソコンに視線を行き来した。
「まず勝地の走り書きについてだが、その場で書いたものと判断した。書いたのは、2025年の1月20日と見た。」
「睦月の20日って.....」
「そう、セレナが勝地に撃たれたあの日。その直後に書いたものと見られる。」
確かに、あの時撃たれた直後に逃げたが勝地は追いかけてこなかった。不自然とは思ったが、何かを書くためだったってことか?
「内容は?」
「人の名前がいくつも書かれてあった。それがこれだ。」
リアムはファイルを次のページにめくった。そこには、私がついさっき見た相関図のようなものが書かれてあった。
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東京都練馬統合保険会社
メンバー
あの方 鬼嶽
副社長 吉丸真互六
専務 天ノ橋領負
会計 神崎三重子
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まさに上記の通り、書かれてあった。神崎三重子という女は知っている。しかし他の3人は初めて書く名前だった。
「ちょ急に登場人物多過ぎて無理なんだけど。」
「俺も最初は戸惑った。でも一つずつ説明してく。まず、勝地の走り書きには上から人物名が書かれてあった。それがこの練馬統合保険会社。この会社、俺も初めて聞いた。調べてみると、意外とちゃんとしたサイトに飛んだんだよ。それがこれ。」
リアムはパソコンの画面を私に見せてきた。そこには練馬統合保険会社と書かれたホームページが映し出されていた。内容は.....
「お困りの相続問題、保険金問題についてプロが徹底サポート。なんだこれ。なんで勝地がこんなものを書いてんだ?」
「そこまでは分からない。でも勝地と繋がるって良いことないだろ?」
「確かにね。勝地が意味もなく書くわけない。この会社怪しいな。調べ尽くしてみよう。」
私たちは机上に広がる資料に手を伸ばした。




