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殺し屋JK、ターゲットは父親でした。  作者: 椿原菜湖
殺し屋JK、ターゲットは父親でした。勝浦編2
57/69

57勝浦相殺事件、終幕


キキィ


しばらく車を走らせた。あるところで車が止まり、体が縦に大きく揺れた。

「着いたぞ。」

コアが低い声で呟いた。私は悪化しつつある二の腕を押さえながら車を降りた。

足が地面についた瞬間、私は生きているんだ、と、深く感じた。月明かりが瞼を照らし、思わず手を伸ばして防ごうとする。

「セレナ、ちょっといいか?」

車内から誰かの声がした。視線の先を夜空から車にやると、中で蹲りながら顔だけをこちらに向けた教景がいた。

「教景?大丈夫か?」

声をかけると、”肩を貸してくれ”と小さな声でつぶやいた。

「もちろん。歩けるか?」

私は教景の腕を自分の肩に回して車から降ろした。教景は立っていられず、崩れ落ちるようにして地面に倒れ込んだ。

「おいおい大丈夫?歩ける?」

「ちょっと厳しいかもな。」

「分かった。少しここで待ってろ。」

一旦教景を車に乗せて待たせた。携帯電話を手にとってある人に電話をかけた。しばらく着信音が鳴った後、聞き覚えのある声が聞こえた。

「もしもし?」

『どうした?』

電話越しに医療部隊のヘッド、林村の声が聞こえた。どうやらゴタゴタとしているようだった。

「忙しい時にすまない。実は今任務の帰りで怪我人が複数出たんだ。私とコアとアルチュールとオーディンが撃たれた。そして依頼主の男は腹部を刺された。歩けなさそうだから担架を頼みたい。それと、私とコアとアルは致命傷じゃない。他の奴らの手当を優先的に頼む。」

『コアから連絡はもらってる。こっちは準備万端だ。今二人そっちに担架を持ってってくれてる。くれぐれも気をつけてこいよ。』

「了解。ありがとう。」

耳からスマホを離して電話を切った。ポケットにスマホをしまい、教景に担架が来ることを伝えた。彼は安堵のため息をついた。

「大丈夫か?」

アルチュールがオーディンの肩を持って車から降りた。次々とメンバーが車から降りてくる中、ナルは一人で反対側に周りトランクを開けた。

「降りろ。」

トランクに乗っていたのはクララとすでに死亡しているナハトの二人。ナルはクララに声をかけてトランクから引っ張り出した。

クララは先ほどの余裕のある感じとは違い、鋭い目つきでこちらを睨んでいた。

「なんだその目は?あ?」

背丈の小さいナルはいくら喧嘩腰になるとはいえ、威圧感もなにもない。ただの男の子の言葉が悪くなったようなだけだ。

私はナルのもとへ行き、やめるよう促した。

ナルはすぐに言うことを聞き、彼女の腕を背中に押し付けながら建物の中に向かって歩き出した。私たちもそれに続いて二人の後を追った。

「リアムたちに連絡入れた?」

「もちろん。全員地下一階の治療室に来てくれって伝言がある。」

「了解。」

私はコアの肩を叩いて前に歩いているナルのそばに行き、リアムからの伝言をそのまま伝えた。ナルはグットサインを出した。私は安心し、そのまま二人について歩いた。

「まっすぐ歩け。」

クララはフラフラとよろけながら歩いていた。今にも倒れそうになっていた。不安定な足元に不安を覚えたが、彼女のことはナルに任せようと思った。なぜなら彼は裏切り者でもない完全なる私の味方だと確信しているからだ。

私たちが今入ろうとしているのは、勝浦のアジトじゃない。

神奈川県大磯町の海沿いにある、Oi殺し屋だ。

このまま勝浦のアジトに戻ってもよかったが、爆破があったラビットアサシンのアジトとものすごく近いため、警察や消防がうろついていると判断し、暗殺者リストに書いてある『最後の赤印』のアジト、大磯の地にやってきた。

もともと私たちが頻繁にアジトを変えるのには意味がある。

あの日の夜、勝地洋輔が撃ってきた銃弾から全てが始まった。初めて味わった撃たれるという感覚。痛みを感じる前に死を目の前に感じた。全身の産毛が悲鳴を上げるような恐怖。暗闇で右も左も分からない状況下の中での戦い。

そこから勝地とジョセフを追い込み、さらには勝地のチームであるラビットアサシンを追い詰めた。

依頼主の応えに答え、影の中を駆け抜け静かに、しかし確実に過去と向き合い、任務を遂行してきた。

今日この日をもって、全ての業務を終える。

師走の月に入れば全ての依頼をシャットアウトする。今回の勝浦相殺事件の真実。それが明らかになる時が近づいている。

この日まで、味方と思っていた人間には裏切られ、敵だと思っていた人間に勧誘をされた。いいように振り返るとはいかないが、充実した一年だったと思う。

一月にコアに出会い、ロルバン、他のメンバーにも出会った。

初めての依頼は剣城忠信の武蔵野市主婦殺害事件。そこから過去を探り、知るべき真実にたどり着いた。

そんなことも、今日で全て終わりか。

「セレナ!担架持ってきたぞ。」

「リネシ、アニア、ありがとう。」

医療部隊のセカンドヘッドのリネシ、サードヘッドのアニア。林村の右腕と左腕としてうちで働いている。私は彼らにお礼をして教景の居場所を教えた。

「あとは頼んだ。」

「了解。」

二人は早足で入り口に向かいエレベーターを使って下に降りてった。

大磯(ここ)、久しぶりに来たな〜。」

周りに敵がいないのを確認して全員が建物の中に入った。

そのままの足でエレベータに向かった。

オーディン

アルチュール

ナル

コア

クララ

生き残った人間がエレベーターの前に立ち登ってくるのを待った。

「全員を治療して完全体に戻す。」

私はその場にいた全員に向かって言った。

「りょ〜っかい。」

「了解。」

「了解です。」

最後にコアが頷いた。


ピンポーン


月日が経ってるとはいえ、このエレベーターはまだまだ現役であった。コンクリート製で作られた頑丈なエレベータに乗り込み地下一階ボタンを押した。

大男が何人もいるこの空間は、肌身でも感じる狭苦しい空間だった。

「着いたっと。」

地下一階に着き、扉が開いた。

一斉に降りて治療室の扉を開けた。治療室はエレベーターを降りてすぐ目の前の部屋にある。

「おい!」

私は中にいる人間に声をかけた。

「こっちにも負傷者がいるんだ。教景(そっち)が終わったら手当てをしてくれ!」

一瞬部屋が静寂に包まれた。しかしすぐに忙しさを取り戻した。

「怪我をしてる人はこちらに!早く!」

リネシが正義感を纏って患者を呼び寄せた。

うん。このまま順調にいけば大丈夫なはずだ。

「コア。」

「うん。」

私たち二人は怪我人を彼らに任せて治療室を後にした。

部屋を出て再びエレベーターに乗り込む。延長モードにしておいて正解だった。

「クララはどうする。」

「う〜ん。明日にでも事情を伺おう。明日なら、怪我なんて治ってるだろ。」

「そうだな。なんだってアイツ、防弾チョッキ着てたんだろ?」

「ははっ。それも面白い話だよな。」


ピンポーン


次は3階についた。ここはいくつもの会議室がある階だ。ここで今からホシの情報を再確認する作業に入る。

「これから仕事か〜!頑張るぞ!」

暗黒の廊下を少し先に進むコアが両腕を伸ばしながら言った。私は2歩下がって3歩進むようにして彼の後ろを追いかけた。


『何度でも立ち上がれ。』


何度でも立ち上がれよ、剣城(• •)












「お待たせ。」

「遅いよ貝ちゃん!もうすぐで始まるよ。」

私はごめんごめんと言いながら会議室Aに入った。


ガチャン


扉を勢いよく閉めて誕生日席のキャスター付きの椅子に腰掛けた。フカフカの私特製の椅子だ。

「よし。全員いるな。オーディン、アルチュール、ナル、ククリ、リアム、ジェイコブ、モク、ジャック、コア。」

生存しているki殺し屋のメンバーが全員いることを確認した。

「それでは、今回の依頼主である、白川教景。ホシの白川春綺に対する質疑応答を始める。」

私は教景に手招きをした。

彼はスッと立ち上がり、クララの目の前に立った。彼女は椅子に固定されており、身動きが取れない状況だった。その周りに複数のメンバーがトカレフを構えていた。


「久しぶりだな。お姉ちゃん。」

「.....あぁ。久しいな。こんなことしやがって。」

漂う不気味な緊張感。自然と背筋が伸びた。

「ここまで、お前を追い詰めるのにどんな葛藤があったことか。お前には分からない。姉さんが家族を殺した後、フィリピンに逃げただろ?なぜ出頭しなかった。」

「そんなの、捕まるからに決まってるじゃーん。」

彼女は反省の意を見せるどころか、敵である弟を煽っていた。教景の拳は今にも動き出し、殴りかかりそうになっていた。

「じゃあ一つ聞く、これが一番、今まででいちばんっ!聞きたかったことだ。」

「ほぅ。なんだね。」


「.....なぜ、家族を殺したんだ?」


この会議室には窓なんてない。ないのに綺麗な空気が頬を撫でた気がした。

クララの方を見ると、彼女は下を向き、静かに、サッと顔を上げた。

そして一言。


「.....私たち以外、全員が敵だったからだよ。」


「え?」

教景は少し間をおいて困惑した表情を見せた。

「どういう....」

「外部は黙ってろ。」

コアが聞こうとした瞬間にクララによって遮られてしまった。

「敵って言っていいのかな、私たちはお前を含む8人兄弟だっただろ?そして母親と父親。お前から見れば下3人が奴隷のように扱われいた。その3人以外の上の兄弟たちは、お前ら3人を殺そうとしていたんだ。」

「お前、なに、言ったんだよ。」

「まだ分からないのか?私たちの父親の弟の存在が、どれだけ邪悪なものだったか。」

父親の弟の存在?それって.....

白川路行(しらかわろこう)。元ki殺し屋のサードヘッドだ。そして、私たちの手下でもあった男。お前も会ったことあるだろ?あの大男を。」

「路行さんって、あの、路行さん....?あの、たまにうちに来てた、人だよね?」

クララはゆっくりと首を縦に振った。彼女は続けて発言をした。

「路行が父親を仮洗脳状態にしたんだ。路行の目的は、自分の手は汚さずに私たちを家族を殺すことだった。その話は路行が何者かと電話をしている時に知ってしまったんだ。」

「何者って?」

「電話の相手は分からないんだ。ただ、路行が私たちを殺そうとしていたことは事実に変わらない。」

今更だが、路行とは、”ロルバン”の本名である。やはり彼が白川家の大黒柱、白川悠仁と兄弟関係であったことは間違いないようだった。

「それを聞いた途端、私は怖くなり、その話を聞いたその日の夕食の日に、台所から包丁を持って家族を威嚇したんだ。お前たち3人を救うために。」

教景の手の拳は徐々に開き、平常心を保ち始めた。

「僕たち3人を、救うため?」

「紀香を殺してしまったのは、当時の私の思い違いによるものだった。この通りだ。本当にすまなかった。」

クララは椅子に締め付けられたまま頭を下げた。

「なんだと.....」

私は教景を睨みつけるように見た。微かに唇が動き震えている。

「思い違いで、僕の妹を殺すなっ!」


ガチャァァン!!!


「はっ?!教景落ち着け。」

教景はクララを椅子ごと蹴り倒した。

彼女は小さな悲鳴をあげて深呼吸をしていた。

「思い違いなんかで済まされると思うなぁ!お前の!不要な行動でどれだけ俺の心に穴が空いたか.....」

私とコアで教景の腕を押さえた。教景は何度も離せ!離せ!と叫んだ。

「ひっく、ひっく———」

会議室には教景の鳴き声が響き渡った。全員が目を見合わせ、彼の顔色を伺った。

これはまるで、果てしない答えの入口なのかもしれない。

『続いてのニュースです。

6年前、千葉県勝浦市で起きた『勝浦一家相殺事件』について、新たな動きです。

この事件で家族7人が死亡したとされる一連の殺害について、警察はきょう未明、白川春綺しらかわ・はるき容疑者を殺人の疑いで逮捕しました。

白川容疑者は当時、家族を刃物で襲い、逃走した疑いがもたれています。捜査関係者によりますと、これまで行方が分からなくなっていた白川容疑者が、県内のアジトに潜伏していたところを確保されたということです。

警察は、事件の背景や犯行の動機について、詳しく調べを進める方針です。』



「ちっ。どいつも使えない奴らばかりだな。この女も使えると思ったんだけどね〜。ロルバン君の体調はどうだい?」

「回復に向かっています。」

「そうかいそうかいよかった。まだまだ彼にはやるべきことがあるからね。」

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