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殺し屋JK、ターゲットは父親でした。  作者: 椿原菜湖
殺し屋JK、ターゲットは父親でした。勝浦編2
54/69

54信じる者

「ここで言い争っても意味ない。」

私は二人に向かって言った。教景は腕を組んで反省している素振りを見せた。コアは無駄に頑固な性格が滲み出ていた。

「とりあえずクララの元に行かなくちゃね。」

あぐらをかいていたナルが勢いよく立ち上がった。大きく背伸びをして白い部屋の中をゆっくりと回って歩いていた。

「早くしないと逃げるか殺されるかになるよ。」

ナルは壁に少しずつ触れながらハシゴに向かって歩いていた。

「俺たちはあっちから登ってきたんだ。」

ナルが指差した。私たちが反対側から登ってきたハシゴとはまた別のハシゴから彼らはここに来たらしい。

「裏口からここまで何分かかった?」

私は緊収のメンバーが登ってきたというハシゴを覗いた。

私たちが登ってきたハシゴとは違い、頑丈な鉄製で作られていた。少し触ってみると、頭をぶつければ即死するほどの硬さで作られていた。

「随分と頑丈に作られてるな。こっちは木製で作られてるのに。」

なぜ二つのハシゴは違う材料で作ったんだ?同じ木製か鉄製で作った方が資金も安く済む。わざわざ作る意味が分からない。

私は再び木製で作られたハシゴに目を向けた。

すると、後ろからコアが叫んだ。

「セレナ伏せろっ———!」

「え?」


バン!バン!バン!


「ひゃっひゃっひゃっ!ここにいたのか〜。」

ハシゴから気味の悪い笑い声が聞こえた。コアが私の前に立ちトカレフを構えた。

「セレナ、逃げろ。」

「は?」

私はコアを見上げた。

人間の見える範囲というものは、案外広い。好きなものも見えれば、嫌なものも見えてしまう。

白い壁や床に、目を背けたくなる残酷なほどに血塗りがされていた。

これは絵の具なんかじゃない。

人の血だった。

「アル?」

床には完全に意識を失っているオーディンとまだ意識はあるアルチュールが重なるように倒れていた。

「アルっ!」

私は前にいるコアを押しのけて床に倒れているアルチュールのそばに行った。

「セレナ行くな!」

コアの注意喚起なんて無論耳に届かなかった。

「アル?アル?!」

アルチュールは少し間をおいて”あぁ....あぁ”と言った。もう間も無く息が途切れそうになっていた。

「この期に及んで自分より仲間の命を見るのか!」

私は視線の先をアルチュールから声のする方に向けた。

そこには、茶色に焦げた前髪が目先までかかった女がいた。

「お前が藤沢貝か!なかなかのべっぴんさんだねぇ!」

声のキー自体が高くて耳を塞ぎたくなる。コアなんかよりももっと高音の声。


「お前は....ナハト。」


「ピンポーン!ナハトですっ!」

その女はラビットアサシン当主、ナハトシュペーアだった。

もともと当主であった勝地洋輔が死んだ今、繰り上げで当主になったのが元No.2である彼女だった。

「そんな悲しい顔するなよー!私はあ・な・た!と話したくてここまで派遣されたのにー!」

ナハトはそう言いながらハシゴから大ジャンプをして部屋の中に入ってきた。

私はアルの体を持ち上げて引きずりながら後ろに後退した。

ナハトは小型の拳銃の銃口をこちらに向けた。


『ナハトはチーム内でも狙撃が苦手なやつなんだ。だから拳銃とか小型のものを好んでいた。』


私はロルバンの言っていることを思い出した。彼女は本当にスイスの国旗が描かれてある拳銃を使っていたのだ。

「kiって奴らは地味な奴が多いんだな。悲しい。」

ナハトは嘘くさい演技をして頭を抱えていた。

私たちは一体、何を見せられているんだ?

「セレナ。」

後ろからコアが私の肩を思い切り持ち上げた。初動的な行動に体が追いつかず、私はその場に座り込んだ。

「あっは〜ん!そんなに貝ちゃんのことが好きなのか!えっと、なんだっけ君の名前?」

「お前に名乗る必要などない。俺の仲間を撃ちやがって。」


カチッ


コアは自身のトカレフを彼女に向けた。

ナハトは決して動じることなく、拳銃をユラユラとちらつかせていた。

「お前らっ!もしかしてクララ(あいつ)が目的で来た感じですか?!」

この建物の中に入り、およそ30分が経とうとしていたが、初めてホシの名前を敵から聞けた。

「空気が揺らいでるな〜!的中しちゃったね!」

ナハトは私たちに銃口を向けて何度もジャンプをした。

この人、こわいこわいこわい。

「連れて行ってあげよっか?その、春綺のところに。会いたくてここまで来たんでしょ?」

ナハトはまるで他人かのようにクララのことにふれた。

「仲間が死んで、それどころじゃないけどさ!私も仲間を亡くしてるからね。私たち、五分五分だよね?」

仲間が死んでいる?

「ロルのことだ。」

後ろで膝を立てていたコアがボソッと呟いた。

「あいつはアルコールが入ってる。」

加えて言った。

「お前は、嘘はつかないか?」

「もちのろん!つかないよ!」

私はコアの話を無視して彼女との会話を膨らませた。

「それじゃあさ、春綺って人?のところに連れてってよ!」

隣でコアが私の名前を呼んで静かに叫んだ。

「いいよいいよー!」

「やったー!その代わりにさ、交換条件で、お互い武器を捨てて行くってのはどう?」

ここは彼女のテンション感に合わせることが最適だと判断した。

「この子は私の大好きな大好きな拳銃(この子)は離せないな〜!うーん、でもいいよ!はい!」


バタン!


ナハトは持っていた拳銃をその場に落とした。

私は口角を上げて豪快に笑ってみた。

「よく出来ましたっ!それじゃあ案内お願いします!」

「かしこまりました!」

この状況は意味不明だ。私自身も何をやっているのか分からない。

しかしこれが今は最善としか思えなかった。

私はコアの方を見た。彼は何をやってんだという怪奇なものを見るような目をしていた。

「おーい!行くぞ!」

ナハトはいつの間にかハシゴを降り始めていた。

私は立ち上がり、コアの方を見た。

“教景を連れて行け”

指と口を使ってそう合図をした。

この部屋には立って動ける人間が私含め4人しかいなかった。正直言って、完全体で動けない人間は興味ない。ここに留まってもらうしかない。

と、言いたいが、いま怪我をしていないのはナルと教景だけだった。

私とコアはフーリンの流れ弾によって少しばかり負傷している。

加えて私はオーディンを見た。

“迎えにくる、ここで待ってろ”

オーディンはふくらはぎと二の腕を撃たれていた。撃たれていない方の腕でふくらはぎを強く抑えていた。彼は私に向かって首で行けという合図を出してきた。

私は軽く頷いた。

その間に何度もナハトに呼ばれた。

「今行きまーす!」

私はトカレフをその場に置く音をさせた。

ハシゴから降りようとする時に、彼女の置いていった拳銃を手に取り足首の靴の中に入れた。


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