53彼女らの隠れ場所
『セレナ?どこにいる。』
腰の辺りから振動がした。おそらくコアからの連絡だろう。
無線機を取って口元に近づけた。
「最上階に向かってる。」
いつものような甲高い声が安心感を与えた。
『了解。上で待ってる。』
軽く返事をした。
私は左手に無線機を握りしめながら階段を登った。まるでお城のような白色のレンガ製の階段はかなりの体力を食った。明日には脚がパンパンに膨れ上がりそうだ。
鼻先についた二人の血をサッと拭った。その時、袖に返り血がたくさん付着しているのに気が付いた。
小さなため息をついて頭の後頭部を派手に掻き回した。
「コア?上まで来たけど、どこにいる?」
『ハシゴの上の隙間の部屋にいるよ。迎えに行くわ。』
私は周りを見渡してハシゴというやらを探した。
すると、廊下に続く道の角の壁に、白色の壁と同化した木製で出来たハシゴがあった。壁と同じ色で設置されて一眼では分からなかった。
「セレナ!こっち!」
ハシゴの上には小さな扉みたいなものが天井に貼り付けられてあった。その中からコアが顔を覗いてきた。
「なんだそこ。」
私はボソッと呟き手に持っていた無線機を腰に戻してハシゴに手を伸ばした。
「すげぇな。」
自動扉を通り抜けると、真っ白な細長い空間にたどり着いた。縦におよそ30メートルしかない謎の部屋。身長180センチメートルのコアがギリギリ立てる高さしかなかった。
「セレナ!」
「アル?!」
そこには、アルチュール、オーディン、ナル、教景がいた。
「お前ら、生きてたのか、よかった。怪我してないか?大丈夫か?」
私は4人の元に駆け寄って肩に触れた。
「大丈夫だ。そっちは?」
オーディンがこちらを見据えて静かに言った。
「こっちは、みんな生きてる。大丈夫だ。それよりコア、怪我は大丈夫か?」
無線機からの連絡で、コアが流れ弾で怪我をしたと知っていた。
彼の方を見ると、確かに太ももあたりの服の布が切れていた。しかしそこまで血も流れ出ていなかったため、私は目を向けて相槌を打つだけで終わった。
彼もこちらを見て小さく頷いた。
「この部屋は一体なんだ。」
私が辺りを回しながら呟くと、コアが腕を組みながら言った。
「おそらく、ここの隙間から俺たちを狙撃していたんだ。」
コアはあるところを指差した。
そこには、銃口が収まるほどの穴が空いていた。
「ここから?」
「うん。多分ね。俺たちはかなり離れていたのに弾が当たってる。相当の腕の持ち主だったんだろうな。」
「そうだな。長銃を操れる女なんてそうそういない。」
私は壁に空いた穴を見ながら苦笑いをした。
「こっからどう攻める。結局そっちにナハトいなかったんだろ?」
コアが腰を下ろして話し始めた。その横に並んでオーディンが座った。
「こっちからは敵の銃声はゼロだった。監視カメラを壊してるから侵入してるのは分かるはずなのに。ラビットアサシン側は俺たちがクララを狙ってるってことは知ってると思うんだ。だから.....」
「ナハトとクララはペアで動いてるってことか。」
教景のそばにぴたりとひっついているナルが言葉を足した。
「あいつらどこにいるんだよ。」
コアが何度も舌打ちをしながら言った。
「豪華な部屋とか、ないでしょうか。」
弱く今にも途切れそうな声で教景が言った。一斉に全員が彼の方を向いた。
教景の目には嘘偽りない純粋な眼差しであった。
「なんでそう思う?」
私はロルバンに向かって言った。
「あの人は幼い頃から姫みたいな生活をしてきた。その影響からか、昔からやたら高価なものを好んでるんだよ。あくまでも予想だけどね。」
「......笑ってんじゃねえよ。」
「え?」
「誰のためにこんなだけの大人が動いてると思ってんだ。」
あぐらをかいていたコアが微妙なパーマがかかった前髪を揺らしながら教景を睨みつけた。
さらにコアは立ち上がり、教景の方に近寄った。
「いい加減自覚持てよ?」
180センチ越えのコアでも圧倒されるほどの高さがある教景は、コアに比べて大人しそうに日和っていた。
「すみません。」
教景は小さくお辞儀をして一歩下がった。
「てめぇ———!」
「コア。」
私はコアの方に行き、彼の方を見て首を横に振った。
コアはもう一度教景を睨んだ後、私の後ろに回った。




