49襲来①
ダダダダダダダダダダダダダ!!!
「いつまで続くんだよ。」
終わりの見えない銃声音に、身動きが取れないでいた。
ロルバン曰く、今撃っているのはトップ3のフーリンこと瀬戸風華。
彼女は現在の当主であるナハトを囮にした時に、トリガーを引けなかった臆病者だ。彼女は銃を構えると手が震えていた。
きっとそれは、対面で人を殺したことがないからだ。慣れていないだけだと思う。
「フーリンは基本的には狙撃派なのか?」
「うん。毎朝地下にある狙撃場に行くと必ずフーリンがいた。メイクも髪型も整えないでただひたすら練習をしていたよ。」
私は”メイクは関係ないだろ”とツッコミをいれた。ロルバンは苦笑いをしながら、すいやせん、と言った。この状況でも笑っていられる彼もツッコめる私もおかしいと思う。
私は階段下から顔を出して辺りを見回した。
彼女の姿は捉えられない。ただただ銃声音だけが聞こえるだけだった。
単発で撃たれるときもあれば、連射して撃たれる時もある。
単発で撃たれる時は間隔が短い。きっと次の弾を用意しておいてすぐに装弾できるようになっているんだろう。
連射して撃たれる時は逆に間隔が長い。連続して撃てることはいいことだが、その分装弾する時間が長くなる。
彼女は基本的に連射して撃つことを気に入っている。
「フーリン....」
何かいい作戦はないか?彼女の暴走を止められる、何かいい方法。
考えろ、考えろ考えろ———!
あ、この間隔を利用すれば.....。
「おいみんな聞こえるか?」
『緊収聞こえてます。』
「私たちのところには多分だけどフーリンがいる。てことはそちらにはナハトかクララがいると思うんだ。でも、私はクララのことを撃とうとしたことがあるからラビットアサシンも警戒してクララを匿っていると思う。だからそちらには、消去法でナハトがいる。」
『各地に狙撃手がいる、ってことか。』
私は横にいるロルバンにナハトが使っている銃種を聞いた。
「ナハトが使ってる銃はなんだ。」
「あいつは、スイス製の拳銃を使ってる。現代のやつだ。」
「拳銃?遠距離武器は使ってないのか?」
「ナハトはチーム内でも狙撃が苦手なやつなんだ。だから拳銃とか小型のものを好んでいた。」
私はロルバンの話を聞きながら無線機でアルチュールに連絡を入れた。
「アル?ナハトはスイス製の小型拳銃を使う。だから狙撃銃を使うとなっても、的に当たる確率は低い。時間帯はズレるが、そのまま最上階に向かってくれ。」
『おい!セレナたちはどうやってそこを突破するんだ?』
「オーディン?」
電話の主が、アルチュールからオーディンに変わった。オーディンの突然の怒鳴り声に私は肩を震わせた。
「私たちは、すぐに合流する。ナハトやもしくわ他のメンバーに気をつけて道を進めよ。」
『おいセレナ——!』
私は無理やり無線機を無効化にした。隣にいたロルバンが不安そうな目でこちらを見た。
ダダダダダ!!!
再び銃声音が響いた。私は目を背けて頭を抱えた。
「なにか、なにかないか?」
「フーリンは狙撃がうまい。フィリピンにいた時、数百メートル離れてるところからヤクザを殺したって、現地のメディアで噂になってた。」
数百メートル.....
「おい、フーリンのライフルはマックスで何発撃てる?」
「確か、20とか、10なんとか。」
「20....ロル、私が合図をしたら、銃の連射音を数えてくれないか?お前は耳がいいだろ?」
ロルバンは眉を寄せて困った顔をした。
「合図をしたら、ここを出るぞ。」
「はぁ?なに言ってんだよ。」
私はトカレフを取り出して残りの弾数を確認した。あと、4発。
「援軍が来るのを待つのが一番いいだろ!」
「お前、声がでかいと仲間にバレるよ。」
ロルバンは辺りを見回した。
「それに、お前はあくまで囮だ。えらそうなこと言える立場じゃねぇんだぞ。」
裏切られるということの重さを、私たちはよく理解している。
裏切りが生きているうえで隣り合わせの職業だからだ。
「それ、俺のトカレフ。」
「ありがたく、お前の使わせてもらってるよ。それじゃ、いくぞ。」
その瞬間、彼が少しばかりニヤけたのを、私は見逃さなかった。
「3、2、1、走れ!」
私はロルバンの腕を掴んでその場を立ち階段に向かって走り出した。
ダン!ダン!ダン!
私たちは反対側の階段下に避難した。
「セレナ!」
「コア?!お前生きてるなら無線機反応しろよ。」
「いや、ここに隠れた時に壊れちゃって。」
幸いなことに、相棒であるコアは反対側の階段下にいた。私は安堵し、軽く腰を下ろした。ロルバンも同じように横で休んだ。
「3発だったな、きっとまたすぐ撃ちにくる。」
「はぁ、どうすんだよこっから。まだまだ遠いぞ。」
コアが髪をかきあげながら呟いた。先ほどの私を見ているようだった。
しかし今は、思いつきの作戦があるので身体的にも精神的にも軽い。
「装弾している時を狙う。」
「装弾?」
コアがはてなな顔をしてきた。
「彼女の使ってる銃はライフル銃。最大で20発装弾できるものだ。遠距離銃を使うお前ならよく分かるだろ。」
「装弾するにの時間がかかる。それを利用するのか。」
「きっと、単発の場合だと小分けに撃たれるからトリガーを引ける時間が長い。けど連続だと一度だけを乗り越えればあとは装弾に時間を要する。今は単発で撃ってるからもうそろそろ連射してくるだろう。その時になったら私たちも動く。」
私は早口でコアに作戦を伝えた。
「了解。このことは緊収には。」
「伝えてある。あいつらには先に上の階に行かせた。」
コアは頷いて音を立てずに立ち上がり私の前に膝をついた。そして、こちらを向いてグットサインを出してきた。
「セレナ、お前は必ず俺が守る。」
こんな時に限ってかっこつけやがって。
私も戦闘できる体制に入った。
「ロル、音を聞くんだ。彼女が装弾する音を。」
カチッ
「今だっ!」
ロルバンの叫んだ合図で、私たちは一斉にその場を飛び出した。
四方八方に散らばり彼女を惑わした。
ダン!ダン!ダン!
やはり今は単発の状態だった。連射のときなんかよりよっぽど当たりは悪くなる。
どこにいる、どこにいる?!
ナハトシュペーアは一体どこにいるんだ?
「ナハト!」
誰かが彼女の名前を叫んだ。
「俺はここだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
それは、ロルバンだった。
ダン!ダン!
彼に向かって銃弾が撃たれた。
私はその向かいにいる方向に目を向けた。
そこには、黒帽子を深く被った何者かがライフル銃のようなものを構えていた。異様な威圧感を感じた。
「セレナ!いけっ———!」
ロルバンの体には、いつの間にかいくつもの穴が空いていた。




