43交錯する忠誠
私は、コアと共にロルバンのいるであろう場所に向かった。その場所とは、殺害部隊の仕事部屋だ。彼はいつもそこで仕事をしている。ジョセフが死んでから、仕事部屋にいることが増えた気がする。
私たちはヨナスの協力のもと、ラビアサの在処を突き止めてクララに話を聞きに行こうとしていた。聞きたい内容は以下の通り。
•柳小春との関係性
•二人はどこで出会ったのか
•なぜ戦闘中に教景に謝ったのか
主に聞きたいことはこの三つだった。この中でもさらに枝分かれした先の質問も用意している。おそらくだがクララとの対話を実現させるのはほぼ不可能に近いと思う。
私がラビアサのアジトに連れ去られた時、一度は牢獄のような部屋に連れて行かれたが、それ以降の四日間とコアたちが助けに来てくれた時はかなり高級な部屋に連れて行かれた。その風景は今でも記憶に鮮明に残っていた。両サイドに黒い二人がけのソファーが置いてあり、中央に平べったい机。入って一番に目が入る壁は窓で出来ている。その窓から私とコアが脱出したのだ。
「今思えばすげぇ偶然だな。」
コアが腕を組みながら呟いた。
「何が?」
「だって、たまたま俺らのアジトが勝浦に移ってたまたまラビアサのアジトも勝浦にあったんだろ?こんな偶然ありえるか?」
確かに。
剣城忠信とジョセフが火の渦の中最期を共にした以降、鎌倉のアジトは放置している。そのすぐ後に火事が起きたとニュースになっていたが、アジトに置いてある資料や武器は回収済みだったたため、鎌倉の地下ビルが放火した、とだけしか報道されなかった。特に発火した理由が公開されることもなく、あっさりと終わった。
「あの時までロルバンはいい奴だったのかもしれないな〜。」
「そうだ。ロルバンのこともあったのか。結局アイツは何者なんだろうね。」
コアは両腕を天井に伸ばして背伸びをした。
「分かんねぇけど、俺らとは敵なんだろうな。」
ロルバンは私がki殺し屋に所属するずっと前から有能な手下として仕えていた。コア自身もロルバンのことを相当気に入っていたみたいだった。でも、ジョセフがロルバンとコアを相棒関係にすることはなかった。殺し屋に入ってからは基本的に私がコアの相棒となった。ジョセフ曰く、私は今までこんな人間見たことないから、コアと相棒にしたらしい。
確かにそうだ。私は周りよりも運動神経が良いし柔道も得意。高校では弓道部に所属したおかげで銃術にも慣れていた。環境に恵まれていたかもしれないが、私なりに努力はしたのだ。結果は必ずつく。そんな思いだった。
「ロルバンがグルって確定した時、貝ちゃんはどうする?」
「手放したくないけどね。最後まで利用して使いモンにならなくなったら捨てる。」
「こっわ〜!」
そっちが聞いてきたんだろ、と思ったが口には出さなかった。また余計なことを言えば会話が長引くだけだと思ったからだ。
「ねぇねぇ聞いてる?着いたぞー。」
コアが私の顔を覗いてきた。一気に顔が近づいて私は一歩引いた。
「あ、あぁ。もう着いたか。」
私たちは仕事部屋の目の前についた。
「待ってコア‥‥」
ガチャン
「お疲れロルー!何やってんのー?」
コアは躊躇なく部屋に乗り込んだ。少しは警戒しろよと言おうとしたのに。コアは聞く耳を持たずにロルバンの元に行ってしまった。
私は少し遅れて部屋に入った。
「お疲れ。」
これでki殺し屋のトップ3が出揃った。二人がデカいのに対して私はチビな奴に見えただろう。
ロルバンはいつも通りパソコンに向かって何かを打ち込んでいた。
「な〜にやってんの?」
コアがロルバンのパソコンをジロッと覗き込んだ。
「ちょっと調べごと。」
「どんな調べごと?」
「ラビットアサシンのだよ。」
「ラビットアサシンの何?」
コアはロルバンに対して何度も詰問をした。その度にロルバンは返答はするものの、なんだか紙一重な答えばかりだった。核心をついた答えというものがないのだ。
「何でそんなに気になるんだよ。」
「だってお前が全く情報共有してくれないからだろ!早く教えろよな!」
話を聞いているうちに、ついに二人は言い合いのような形になってしまった。
私は仲介をしようとしたものの、それが火種となったのかさらに勢いを増していった。
「はぁ?俺が調べてないとでも言いたいのか?」
「んなわけねぇだろてめぇぶっ殺すぞ?!」
ついにロルバンがコアの胸ぐらを掴んで顔を近づけた。
「ぶっ殺すだと?もう一度行ってみろ!!!」
コアも負けじとロルバンの胸ぐらを掴んだ。
「何度でも言ってやるぜ。てめぇをぶっ殺してやる!」
パァン!
「てめぇら、耳障りなんだよ。」
私はトカレフで壁を撃ち抜いた。
二人は互いの胸ぐらを離した。
「俺らは今からラビアサのアジトに行ってくる。」
「んなこと興味ねぇ。」
ロルバンは相変わらずコアに対して反抗的な態度をとっていた。
その姿に少しの苛立ちを覚えたが、私は冷静になってロルバンをただただ見つめた。
そして、予想外のことを思ってしまった。
気づいた時にはもうすでにそれを口にしていた。
「ロルバンもだ。ロルバン、お前がラビットアサシンのアジトまで連れて行け。」
「は?」
ロルバンは上からこちらを見下すような目つきで見つめてきた。
こんな器の小さい大男に怯んでる場合か。私も上を見て睨みつけた。
その瞬間、少しだけだがロルバンの眉が微かに動いた。
「何言ってんだよ。俺がラビアサのアジトまで?なんで行かなくちゃ行けないんだよ。」
「別に行けなんて言ってない。案内しろと言ってるんだ。お前ならヨナスに聞かなくても分かるだろ?」
私はポケットに両手を突っ込んだまま片足に体重をかけて立っていた。
そのすぐ側にコアがいたが、おそらくこちらを見つめている。
「一体何の話をしているんだ?」
「とぼけんなよ。ロルバン、あんたはラビットアサシンのスパイなんだろ?」
「あ?」
ロルバンは口を開けて右眉を少し下げた。
私は隣にいるコアを見た。案の定、コアは私を見てぽっかーんとしていた。
「貝ちゃん何言ってんだよ?」
「隠す必要ない。ある証拠で確定した。」
そう言いながら私はポケットから小さな盗聴器を取り出した。そして、再生ボタンを押した。
『‥‥そうなんですよ。少し危なかったです。』
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『‥俺は、殺してもいいと思いますけどね。』
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『いつになったら、アイツらは殺せるのか。No.2のコアって奴は案外容易い相手だ。でも、中々厄介な奴がいまして、女子高生のセレナって奴です。コイツは身体能力も高けりゃ銃術にも優れています。そう簡単に倒せる相手じゃぁありません。』
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『まずはコアの方をやりましょう。すぐにでも殺せる準備をしておきます。』
ロルバンの声が仕事部屋に派手に響いた。これは、かつてコアが言っていた話だ。
「ごめんコア。あの部屋に盗聴器を隠しておいた。だからコアからこのことを伝えられた時、私はすでにそのことを知っていたの。」
コアは目を見開いたまま一ミリとも動かなかった。
「ってことなんで、ロルバン、あんたは裏切り者?」
「‥‥ほんとに、感激するよ。もうこれ以上手が上がらねぇ。」
ロルバンは瞼に涙を溜めていた。私の頬にロルの少しばかりの涙がこぼれ落ちてきた。
「セレナ、コア。俺は、ラビットアサシンのスパイだ。」
部屋の空気が揺らぐ。
この瞬間は、二度と忘れることはないだろう。




