41兎は闇に生まれる4
『おいニクラス?』
『あ、あぁ‥‥』
ニクラスは小さな声を上げながら目を見開いた。俺はいきなり目を見開かれて少し驚いた。
『お前、やってくれてんなぁ?』
俺はその場にしゃがみながらニクラスの目を見て言った。坊主頭を鷲掴みにして睨みつけた。
『あ、あがぁ。』
『ちゃんと話せ。これだからコミュ障は使えない奴だなぁ〜。お前がしっかりしてればこんなことにはならなかった。ほれ、横を見てみろ。』
俺はニクラスの顔を横に向けた。ニクラスは辛そうな声を出していた。
『見ていたけど、お前はほとんど押されていたなぁ?俺が撃ったのが致命傷になって失神したよ。俺がいなかったらどうしてたつもりだぁ?何もできないような奴は必要ねぇんだよなぁ〜。』
『ごめ、ん。ごめん。』
『‥‥俺は優しい奴だからなぁ。この辺までにしておくよ。立ってクララを運べ。』
俺は坊主頭を弾くようにして立ち上がった。それと同時にニクラスもゆっくりとその巨大な体を持ち上げた。いたるところに怪我を負っていた。おそらくクララにやられたところだろう。
しかし彼女が手を出したのは一度や二度。連続でパンチをしたわけではなかったはず。なのに自分よりも大きな男を失神させるほどの力を持っているなんて、さらに、肩にぽっかりと穴が空いているんだぞ?なぜ普通に会話ができたんだ?やはり彼女が常人ではないのは確かだった。
ニクラスは無言のままクララの体を悠々と持ち上げた。彼にとってクララは米粒程度の重さにしか感じないのだろう。
『着いてきて。』
俺は車の方に向かって歩き出した。その後ろにニクラスが着いてきた。ニクラスは体が大きい分、気配も異常であった。その場にいるだけで、あ、ニクラスがいると思うほどだ。
『ニクラス。』
俺は前を向いたままニクラスの名前を呼んだ。
『お前は、クララのことをどう思う。』
『大事。クララ、強い。生かして、おこう。』
『なぜ、そう思う。』
『クララ、何かある。隠し事。』
『隠し事?』
『家族の、隠し事。僕の、直感。』
俺は、何を言っているのか正直理解できなかった。一応言ったことをまとめてみると、実際にクララと対峙したニクラスの直感ではクララには何か背負っているものがあるという。もう一度言うが、理解ができない。
『俺は、殺したいと思っている。でも、ニクラスのその言葉を聞いて何かが変わった気がした。』
『うれしい。』
『ははっ。初めてお前の本音を聞いた気がするよ。俺はお前に賛成だ。』
俺はニクラスの方を見て少し口角を上げた。
『何か食いたいもんあるか?』
ニクラスは少しの間を与えてから明快に答えた。
『ハッシュドビーフ。』
『了解。』
クララを担いで二人で歩いた地下駐車場の景色を、忘れることは二度とないだろう。
「それから、クララをアジトに連れて帰ったんだ。そして彼女が目を覚ました後、俺らがラビットアサシンのチームとして加入した。もちろん約束通り他のメンバーは解散させた状態で。」
「なぜ、お前らがラビットアサシンに加入したんだ。このままの流れだったらクララがカスクラムに加入するんじゃないのか?」
「それでもよかったんだが、ニクラスがクララのことを相当気に入ってしまってなぁ。俺は反対したんだけど、受け入れた。やっぱり俺にはニクラスが不可欠なんだよな〜って思う。」
ヨナスは窓を見つめて呟いた。
「ここで、ラビットアサシンのメンバー5人中3人が集結した。」
「5人?ラビアサのメンバーは6人じゃないのか?」
「最初に言っただろ?フィリピンの地で出会ったのは勝地を除く5人だって。」
「勝地はどこで出会ったんだ?」
「クララの意向で俺たちが日本に拠点を移した時、柳小春という女に出会ったんだ。」
「は?」
コンコンコン
「お邪魔しまーす。」
俺とヨナスが話をしていた瞬間、扉が開いた。
「話長すぎん?」
「セレナ。」
扉の先から、フードを被ってガムを噛んでいたセレナがいた。
「退屈すぎて資料読み終わっちゃったよ。」
「いや、そんなことよりもヨナスが‥‥。」
「ヨナスがどうしたの?」
セレナは可愛げのある目でこちらを見つめた。
「ヨナスが、なぜかメイのことを知っていたんだ。」
「え?」
やっぱりその反応になるよな。俺も同じだ。
ki殺し屋のメンバーでもない人間がなぜ元依頼人のメイのことを知っているんだ?
「ヨナス、もう一度女性の名前を言え。」
「柳小春のことか?」
「どういうことだ‥‥?!」
ヨナスは怪しいものを見る目をしていた。




