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殺し屋JK、ターゲットは父親でした。  作者: 椿原菜湖
殺し屋JK、ターゲットは父親でした。勝浦編1
33/69

33その声は、敵か味方か

「パソコンの情報は正しかったのか‥‥。」

私は軽くため息をついた。

「そもそも、誰が家系図をパソコンに入れたんだ?」

コアは眉間に皺を寄せながら言った。

確かに、もともと私のパソコンにはラビットアサシンの内部情報が書かれたファイルが保存してあった。私は普段、パソコンを家に持って帰ることはない。仕事部屋には鍵を何重にもして閉めているし、誰かが侵入できるわけでもない。

ki殺し屋内の人間全員に聞いてみたが、誰一人として殺害部隊の仕事部屋に入った人は確認できなかった。

だとすると、外部しか考えられない。

何者かが仕事部屋に入った時点で全メンバーに連絡がいき、直ちに結集され侵入者を確保する。その連絡がここ最近はパタリとなくなっていた。

過去に何度か警察が入ってきたりはあったが。

「誰かはいいが、こちらからしたらかなりの好都合だ。私は家系図について詳しく解析する。直は他の資料を解析してくれ。」

コアは、おっけー、と言って自分の席についた。その大きな体と椅子がマッチしていないようだった。

今度、椅子を買ってあげようと思う。

私は自分のパソコンに入っている白川家家系図と、コアが成城で回収した白川家家系図を見比べた。

「印刷してくるね。」

「うぃーっす。」

私は席を立ち、パソコンと資料を持って仕事部屋を出た。


コツ、コツ、コツ


「あ、あぁ‥‥かっ‥!」

印刷機が置いてある資料室に向かっている途中、再び激しい頭痛に襲われた。


ガチャン!


「くっ‥‥あぁ‥!」

私はパソコンをそっと床に置いた。そして、床に膝をついた。

「はぁ、はぁ、はぁ。」

しばらくすると、この頭痛は治る。一度に信じられないほどの痛みが私の頭を攻撃するのだ。

それはそれは、言葉では言い表せない痛みである。

私は床に置いたパソコンを拾い、無理やり体を立ち上がらせた。

こんなとこで、ジッとしてても何も始まらない。誰かに見られたらたまったもんじゃない。

ki殺し屋のトップが頭痛で倒れる?たかが頭痛で倒れるなんて、笑われるに決まってる。


コツ、コツ、コツ


私は再び資料室に向かって歩き出した。

すると、廊下の一角からアルチュールが出てきた。

「お疲れ様です。」

彼は深々とお辞儀をしてきた。

「お疲れ様。」

私も軽くお辞儀をした。

「どこ行くの?」

「資料室。アルは?」

「俺はオーディンと飯に行こうと思ってて。」

「こんな時間から?」

今の時刻は22時を回っていた。

「うん、まぁ。気をつけろよ!」

アルチュールは私の頭を撫でて私とは反対方向に歩き出した。

「はぁ。」

危ない。私がもう少し蹲っていたら、変に思われるとこだった。

しっかりと立ち上がれ。私はki殺し屋のヘッド、セレナだぞ。


コツ、コツ、コツ


ガチャ


すぐにでも辿り着けるはずの資料室でさえ、果てしない旅路に感じた。

私は資料室の奥に行き、コピー機のある場所に向かった。

コピー機の蓋を開けてパソコンと連動し、カラーコピー開始ボタンを押した。コピー終了まで残り五分、と表示がされたのを確認すると、私は近くのパイプ椅子に腰掛けた。

「はぁ‥‥。」

何に疲れて、何に悩んでいるのかが自分の中で明確になっていないのに、ここ最近ため息が止まらない。


『お前はいつも無茶ばかりしているな』


「え?」

私は咄嗟に後ろを振り向いた。しかし、誰もいない。

なんだ、空耳か。相当疲れているんだな。


『お前を生かしたのは誰だ?俺だろ』


「え?」

やっぱり声がした。私の耳元で、誰かが喋っている。しかし、後ろを振り返っても誰もいない。

何これ?すんごい怖いんだけど。


『藤沢貝、お前は命を張る価値がある。死のうなんて思うなよ。生きて生きてひたすら前を向くんだ』


「はぁ、はぁ、はぁ!」

私は両手で耳を塞いだ。誰の声?誰の声なの?パイプ椅子から崩れるように倒れた。

耳を塞いでも聞こえてくる謎の声。これは、幻聴というものか?

「‥‥クソが。」

しばらくすると、幻聴はおさまった。


ピピピピピ


コピー機からコピーが終了した音が部屋に響いた。

その音のおかげで、私は気を逸らすことができた。

「‥‥。」

無言のまま、ただ無心でコピー機を開けて中身を取り出した。

パソコン通りに綺麗にカラー印刷されていた。

私はパソコンと資料を持って、出口に向かった歩き出した。まるで何事もなかったかのように。


ガチャン


扉を閉めて行った道を戻る。


コツ、コツ、コツ


私は常に怯えていた。いつくるか分からない頭痛に、常時恐怖を感じていた。頭痛は予測できないものだ。自分で制御することも極めて難しい。

誰もいない廊下を、ひたすら歩き続けた。

「‥‥あ‥あぁ‥!」

くる。これは‥‥くるぞ。


ガチャン


「あ、お疲れ様です。」

廊下に接している部屋から、ロルバンが出てきた。

「あ、あぁ。お疲れ。」

ふと視界に現れたロルバンのおかげで、なぜか頭痛が治った。ありがとう、ロルバン。

「何してるの?」

「あぁ、資料をコピーしてた。」

「そっか。それじゃ、また。」

ロルバンは私に小さくお辞儀をした。そして、再び私の行った方向に歩き出した。

危なかった。頭痛が来る直前に、突発的な何かが起これば治るのか。うん。多分そうだ。

私は仮説を考えながら仕事部屋に向かって歩き出した。



コンコンコン


『うぃ〜。』


ガチャン


「返事くらいきちんとしろ。」

「はーい。」

こいつには礼儀というものが存在しないのか?まぁ放任家庭で育った彼には難しいのかもしれないな。

「何か分かったことあった?」

「やばい情報はいくつかあるよ。」

コアはパソコンを見つめながら答えた。

「どんな情報?」

「まぁ座れって。」

コアはそう言いながら隣の椅子に座れと指示をした。

私は自分のパソコンと資料を机の端に置き、席に着いた。コアはパソコンの画面を私に見せながら説明をしてきた。

「ここに書いてある通り、教景の父親『悠仁』とロルバンが兄弟関係であることはほぼ確定。」

「それは本人に聞かないとはっきりしないね。」

私はコアの目を見て言った。

しかし、コアは無言のままパソコンの画面を見続けた。

彼は一拍置いて、私の目を見て言った。

「それだけは、だめだ。アイツにこの案件のことを話すことだけは絶対に避けろ。」

「え?」

その声は低く、いつも甲高い声を出すコアが出せるような声じゃなかった。まるで別人。

「一度、ロルバンが疑われた時あっただろ?アイツは、俺らのために情報を集めていると言っていた。俺は本人にどんな情報が集まったのか聞こうと思って、ロルバンのいる所に行ったんだ。そしたら‥‥」



2025.5.31

俺は依頼の資料を整理するために、資料室に向かった。

「ふんふふ〜ん。」

口笛を鳴らしながら優雅に歩いていた。

資料室までの道は意外と遠い。口笛でも鳴らしとかないとつまらない旅路になる。

俺はぼーっとしながら資料室の前まで来た。


ガチャ


鍵を取り出して部屋に入った。資料室に鍵がかかっているということは、俺以外には誰もいないということが大前提だ。

俺は軽い足取りで目的の資料があるところまで向かった。


『‥‥あぁ、そうですか‥』


「?!」

俺は何者かの声に反応して身を隠した。

誰だ?部屋の奥から何者かの声がした。俺の耳に微かな声が聞こえた。

資料室にいるのは俺だけのはず。

誰だ?誰なんだ?

まだ確定したとはいえないが、確かに聞こえた。空耳じゃない。幻聴でもない。

現実味のある不気味な男性声が聞こえたんだ。


カチッ


俺は懐からトカレフを取り出して装置を作動させた。少しずつ前に進み、声のする方に進んだ。


『‥‥そうなんですよ。少し危なかったです。』


「‥‥。」

無言のまま、ひたすら声のする方に進んだ。やはり、俺の耳は信用できる。

前に進むごとに声が大きくなっていった。


『‥俺は、殺してもいいと思いますけどね。』


ついに、声が間近で聞こえる位置に来た。

俺はトカレフを構えたまま、壁一枚を挟んで耳を極限まですませた。


『いつになったら、アイツらは殺せるのか。No.2のコアって奴は案外容易い相手だ。でも、中々厄介な奴がいまして、女子高生のセレナって奴です。コイツは身体能力も高けりゃ銃術にも優れています。そう簡単に倒せる相手じゃぁありません。」


この声は、ロルバンの声だ。そうだ。絶対に、そうだ。この低い声、人を嘲笑うような声。



「ロルバン?」

「あぁ。あれは絶対にロルの声だった。」



『まずはコアの方をやりましょう。すぐにでも殺せる準備をしておきます。』


「ロ、ル?」


ガチャァン!


『あ?これは‥‥。』


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ!」

俺は資料室から飛び出した。遠くに遠くに。とにかく遠くへ。資料室から逃げた。



「ロルバンが、誰かと通信していた?」

「多分、俺らの敵位置といえる奴だろう。」

私は息を呑んだ。

「それじゃあ、ロルバンは‥‥」

「‥‥敵だ。」







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