27もう一度、拳を握るために
「かかってこいよ。」
「容赦しないからね。ねぇ、ニクラス。」
ドン!!!
「うわっ!」
いきなりコアが倒れてきた。私は押し潰されるように倒れた。何が、何があったんだ?
「よくやったニクラス。こんな塵共、さっさと殺しちまえ。」
「コア!コア!」
「うぅ、う、」
だめだ。コアは頭を打った衝撃で動かなくなっている。コアが邪魔で戦闘体制に入れない。
徐々にニクラスが近づいてくる音が聞こえる。その巨大な足と体が近づいてきている。
「あっさりしてるねー。」
あぁ、もう、だめだ!
その時だった。
「おらっ!」
「うっ!」
ゴン!ドン!
「コア!」
コアが一気に飛び上がりニクラスを蹴り飛ばしたのだ。私は急いで体を起こした。そして、銃口をヨナスに向けた。
「あっちゃー。ニクラスそんなもんかよぉ。もっといけるだろ?」
ヨナスの呼びかけのおかげで、ニクラスは体を起こした。なんだこの化け物は。コアの蹴りを喰らったら普通は起きてはいられないぞ?何なんだ?
「コア、ヨナスをお願い。私はニクラスを倒してからそちらに加勢する。時間稼ぎをお願い。」
「りょうかいっ!」
コアは光の速度でヨナスの方に向かった。猪突猛進だ。
私もニクラスの方に向かった。
「こんにちは。今日は、負けを存分に味わってもらうよっ!」
私はトカレフを懐にしまいニクラスの足元にしゃがんだ。ニクラスの弱点は足だ。相手より常に低いところにいればきっと倒せるはずだ。
ゴン!
「うおっ。あっぶねぇ。」
私はニクラスが足を上げたことを見逃さなかった。
「さっさとくたばれ!」
私は不良共がやるような殴り合いが好きだ。絶対に負けないからね。
私はニクラスのグーパンを華麗に避け、彼の肩を持ち、右蹴りをした。
「ぐあっ!」
ニクラスはクラッとよろけて倒れ込んだ。
私は床に着地した。危うく頭を打つとかだった。
ニクラスは何も言わず、ただただ殴っているだけだった。私はそんなニクラスが、憎らしかった。
「さっさと死ね!」
ガン!
「ぐわっ!」
バタン
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。」
私はその場に座り込んだ。ニクラスに蹴りを入れるのは高さが必要だ。それに加えて力強さも重要。私は疲れ果ててその場に座り込んだ。
コアとヨナスはどこに行った?この家デカすぎだろ。
私は階段を上り2階フロアを探した。すると、キッチンからコアが履いている靴がチラ見した。
「コア!」
ゴツン!
「ちょっと。俺とこいつの邪魔しないでぇ。」
階段の陰からヨナスが蹴りを入れてきた。
「痛ってぇなー。ちょっくら本気だしちゃうけど?」
「へー。アンタってそんなに強いんだ。確かに、ナハトに蹴りを入れてのびたって聞いたしね。まぁ、楽しませろよ?藤沢貝。」
「先にお前が死ぬよ。川蔵。」
「チッ。その名を呼ぶなっ!」
きた!かなり速いスピードでこちらの顔下まできた。
「ふっ!」
私はヨナスの蹴りをかわした。今度はこっちの番だ。
「しねっ。」
「おー!良い蹴りだね!」
そしてヨナスが再び蹴りを入れてきた。こんな感覚は初めてだ。
「いいぞ!もっとこいっ!藤沢!」
誰も関与できない空間で、私とヨナスの殴り合いは続いた。もう、仲間のことなんてこれっぽっちもなかった。
「ふじ、ふじ、さわ!」
ヨナスは突然にして殴る手を止めた。そして、ひらひらと床に倒れそうになった。
「終わりだ!」
コアがヨナスの肩を支え、包み込むように抱きしめた。
は?なぜだ?どけよ。こいつがコープスを殺したんだろ?さっさと死にやがれよ。
「もうお前の勝ちだ!これ以上やったら死ぬぞ!」
「それがなんだ。こいつが、コープスを殺したんだぞ?てめぇはそれが分からないのか?」
「俺たちの目的は生きてこいつらを捕えることだろ?別のことやろうとすんな!」
私は、ふと我に帰った。
「え、あ、また、だ‥‥。」
「こいつはお前が殴り続けたせいで意識がない。すぐにアジトに連れていくぞ。」
顔が傷だらけになったコアが目を光らせて言った。この眩しすぎる眼差しに勝てるほどの殺気はなかった。
「お前、ニクラスもやったのか?」
私はゆっくりと頷いた。コアは驚いて笑った。
「本当にお前すげーな!どんだけ強いんだよ!」
大袈裟に笑うコアを見て私は安堵した。彼は無理矢理でも私を我に帰らそうとしたんだ。なぜだ。なぜ気づかなかったんだ。
「こっち待つよ。」
私はヨナスの右肩を持った。
「ありがとう。」
コアは再びニコッと笑った。
ピー、ピー、ピー、ピー
私は意識を失ったヨナスとニクラスの様子を見に行った。二人は呼吸気をつけて眠っていた。
「カスが。」
私は扉を強く閉めた。あーイラつく。
そのまま足でコアのいる仕事部屋に向かった。
コンコンコン
『はーい。』
部屋の中から声がした。私は扉を開けた。部屋の中にはパソコンと睨めっこをしているコアがいた。
「何してんの?」
「春綺についての調べ事。」
「あとどれくらい?」
「5分。」
「了解。」
私は自席についてトカレフを弄り出した。早い弾を撃つよりも正確に弾道を合わせる方が戦略的に強い。勝ちにつながる。私はトカレフの内部に作為を加えた。
「終わったー!」
「じゃあ行くよ。」
私はトカレフの蓋を閉めて懐にしまった。
「今日って俺らだけ?」
「あとはジャックが来る。もう向かってるってよ。」
「了解。」
私たちはコアの車にたどり着いた。黒塗りがイケてる車体だ。
「気ぃ引き締めていけよ。」
「分かってるって。」
コアは車のスピードを上げた。
私たちはある場所に向かっていた。
それは、
ガチャン
「お疲れー。」
私とコアは車から降りた。六月なのにも関わらず暑い日が続いている。苦しいばかりだ。
「あいつも喜んでるよ。」
私は、コープスの墓に花を飾った。
「‥‥。」
コープス、お前を殺した奴、捕えたぞ。見てるか?必ず納得のいく結果にするからね。見ててね。
「コープスっていい奴だったよな。」
「うん。」
プルルルル
「ごめん、ちょっと。」
コアは電話のため離席した。
私はしばらくジャックと話した。近くのベンチに座って。
「貝は、よくコープスを見ててくれたよな。あいつもお前のこと良く話してたよ。多分、日本で一番舵をとれる高校生だって。」
「そう言ってもらって嬉しいよ。でも、あいつが思ってるのはそんなことじゃない。」
「無理すんなよ。油断したらすぐに死んじまう世界だからな。」
私はジャックを見てコクリと頷いた。
「はぁ、はぁ、はぁ、!貝ちゃん!ヨナスが目覚ましたって!」
何て空気が読めないんだこの男は。
「了解。じゃまたな。ジャック。」
「またな。」
私は立ち上がりコアの後ろをついて行った。
「ありがと。」
コアに助手席の扉を開けてもらいお礼を言った。
「電話の相手がロルだったんだけど、ヨナスがなんかやべぇ発言したんだってよ。」
「え?何て?」
「クララの弟はとっくに殺したって。」
私は、背筋が凍った。




