20仲間を信じる
自分の鼓膜を疑った。
「撃た、れた?」
「聞いてねぇのかよ。スマホに連絡入ってたぞ。コアが追ってた多田が銃を持ってたみたいでな。遅れて合流したロルバンが行った時には救急車が来てたって」
「うそ......」
急いでスマホを確認すると、通知がきていた。
“コアが多田に撃たれた”
「アルっ!?今すぐコアんとこに向かえ」
「無理だ。この状況でコアのところに行くアホたらどこにいんだよ。今は警察がうろちょろしてる。俺らも早く撤退した方がいい」
私は、何も言い返せなかった。
背もたれに寄りかかった。
———放心状態
「セレナ.....」
「アル、中野区総合病院1-2-34」
「え?」
「メイが運ばれる病院だ。そこに向かってくれ」
アルチュールにメイが運ばれた病院の住所を伝えた。せめて、ウメをメイの元に連れて行くことができれば。
「分かった。オーディン、向かってくれ」
「言われなくても分かってるよ!」
オーディンは速度を早めて病院に向かった。
「.......」
「コアは死なねぇよ」
「.......」
「そろそろ着く」
後部座席と運転席では天と地の差のテンション感。
「あ、あぁ」
車は病院内の駐車場に入って行った。ほとんど車はなかった。
「この辺で」
「ありがとう。じゃあ、ウメ、メイのとこに行ってあげて......ウメ?」
「.......」
私は先に降りてウメ側の扉を開けた。
「ちょっと何やってんのあんた?」
「無理だよ.....メイのとこ行くなんて」
「.......」
パチン!!!
「亀橋梅花!!!」
「えっ?」
ウメは頬を抑えて私を見つめた。
「早く降りろこの野郎!!」
ウメは目に涙を溜めた。
「降りて。アル!ちょい待ってて!」
アルチュールはグッドサインを見せ、笑顔を向けてきた。
「大丈夫だよ。メイも今頃ケロッと意識戻ってるっしょ」
私たちは病院内に入り、ウメを待合席に座らせ受付カウンターに向かった。
「夜分に失礼します。柳小春さんと知り合いの者なんですけど.....」
私が言いかけた瞬間、受付のお姉さんが驚いた。
「や、柳さんの!ご案内いたします!!」
「ウメ、行くよ」
私はウメの腕を引っ張った。ウメは泣くどころか無になっていた。
仏だった。
エレベーターに乗り、地下一階に着いた。
「担当の者を呼びますので、こちらでお待ちになってください」
「ありがとうございます」
看護師さんは小走りでどこかに行った。
当たり前に周りに人はいなかった。
「....はぁ」
私は小さくため息をついた。
背もたれに寄りかかり、上を見て、天井のシミを数えた。
「行ってきな。こっちは大丈夫だから」
「え?」
「コアのとこに、行けって言ってんだよ」
はっきりとした口調で、そう言った。
聞き間違いじゃない。
はっきりとそう言った。私は思わず驚いてウメを見つめた。
「.....なんだよ」
「いや」
私はウメに伝えた。
「本当に、いいの?もしものことがあったら———」
「もしものことなんて、あるわけねぇだろ。さっさと消えろ」
「だよな。じゃあ、メイは任せた」
私はエントランスに向かって歩き出した。後ろを振り返ると、こちらを見つめるウメがいた。
手で”さっさと行け”としていた。
今にも溶けてしまう氷は必死に自分を冷やしていた。
私は自動扉を抜け、アルチュールが乗っている車に乗り込んだ。
「お待たせ」
「メイは大丈夫なのか?」
「まだ分からない。メイのことはウメに任せた」
「そうか」
「一旦アジトに戻ろう。このこと、ジョセフに伝えなきゃ」
私がスマホを取り出そうとすると、オーディンが話をしてきた。
「あいつ、今日は空けちまってるよ。こんな大事な時に何やってんだか」
あ、そっか。
ジョセフは日中から夜まで他の部署の何人かと打ち合わせがあるって、言ってたっけ。
しょうがない。
一応ジョセフのLINEに連絡を入れておいた。
暗黒に染まった中野はもう、滞在することすら出来なかった。




