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殺し屋JK、ターゲットは父親でした。  作者: 椿原菜湖
殺し屋JK、ターゲットは父親でした。武蔵野編
2/69

2コアの話

2コアの話





セレナと別れを告げ、少し高級なイタリアンに向かい始めた。昼はオムライスを食べて夜はイタリアンを食べるなんて、デブ活だ。

春輝とは一昨日に会っている。周造然の依頼で接触したからだ。その時の春輝の目は堕ちたような目をしていて、痩せ細り前までの筋肉質な身体はなくなっていた。柔道を得意とした俺でも勝てないような相手だったのに。今やればあっという間に倒せそうだ。

夕食に向かう前に、母の墓所に行ってから会いに行く予定だ。母は去年、自ら首を吊って死んだ。母とは疎遠だったから母の死は春輝から教えてもらった。

寒くてコートでは寒さを凌げない日だった。


『久しぶり、兄さん。』

『のうのうと連絡してきあがって。』

『ごめん。兄さんに教えておかなきゃいけないことがあって。』

『手短にしてくれ。』

『母さんが死んだ。』

『死因は?』

『首吊り。』

『分かった。またおいおい連絡する。』

その時、一気に過去の自分が脳裏に思い浮かんできた。


俺は、優しい母と頼りになる父のもとに生まれた。専業主婦の母が作る豚バラと白菜の鍋が異様に美味しかった。

父は朝日新聞の自営業をしていた。小さな会社の社長だ。新聞紙を印刷したり、朝刊や夕刊を配達したり。父の仕事場は遠い場所だから働いている姿は見たことなかったものの、母曰く、汗流しで商談をしているらしい。

幼い時から何不自由ない暮らしをして育っていった。普通に幼稚園に入学して普通に小学校に入学して。おそらく誰もがやったことのあるカラーテストも99%百点だった。

俺が十歳の時に、歳の離れた弟、春輝が生まれた。

初めて春輝の顔を見た時、疑問を抱いた。

誰コイツ?

鼻は低く、ぱっちりとした一重瞼。おまけに目の色が左右で異なっていた。右目が水色で左目は茶色っぽい黒色。オッドアイだ。父親も母親もぱっちりとした二重瞼に茶色の瞳孔だ。鼻もシュッとしており美男美女だ。

生まれたての赤ん坊なんてこんなもんかと思うようにしていた。

春輝が家に来てからは平和だった。しかし、春輝が年々歳をとるごとに俺への愛情は薄れていった。

『はる!体調大丈夫?』春輝は幼い時から身体が弱かった。過度な運動をすればすぐに咳き込んで熱を出していた。手も洗ってうがいもしているのに定期的に風邪を引く。

春輝は運動会で行う騎馬戦の練習をどうしても断れなくて無理に練習に参加したら、四十度の高熱が出たことがある。『また風邪ね。運動会はお休みした方がいいわね。』『分かった。ちゃんと寝るよ。』またか。こんなに身体が弱くても弱音一つ吐かないなんて。本当に寛大な弟だなと思った。

俺は春輝と喋る機会は少なく、徐々に一人の時間を増やしていった。だって、両親は春輝のことを想って春輝につきっきりになっていたから。

特に母が春輝にべったりであった。母が食卓に料理を出す頻度が日に日減っていくのを感じていた。父も仕事から帰ってくると一目散に春輝の方に駆けていった。

『母さん。今日の夕飯何?』『春輝が熱出したから自分でやって。』

『父さん。こないだの期末テストの国語が91点だったんだよ。クラス一位だった。』『それくらい取れて当たり前だ。弟の春輝に教える身だぞ?』

もう、何言っても無意味だな。この男女には耳が生えていないのか?

なぜこんな事を言われなきゃいけないんだ。俺だって少しは構ってほしい。長男なめんなよ。何を言っても自分の努力を踏みにじりにされたような気がした。


“生まれつき”体の悪い春輝に構いすぎじゃないか?生まれつきってずるいよな。そう言えば何でも通るとでも思ってんのかねぇ。長男うざいから口実として使ってるようにしか思えない。

母が料理を全くしないものだから料理が得意になった。母さんが料理をしなくなってきたからしばらくはコンビニ弁当や近所の人たちの差し入れを食べていた。不幸中の幸いなのか、近所の人たちは俺の味方でいてくれた。

ゴミ出しも買い物も全て俺がやっているため、事情を尋ねてきた近所のおばさんに事情を話した。

しかし、自分の肌が荒れてきたのを境に、流石に栄養がないなと思い、父が持って帰ってくる新聞紙のレシピを見ながらいろんな料理を覚え始めた。

オムライス、すき焼き、お好み焼き、鮭のホイル焼き、豚バラと白菜の鍋。

最後のは見て覚えた一品だ。

よくセレナに料理を作ってやるけど、その度にすごい!美味しい!と褒めてくれるのだ。俺は素直にありがとうと言うが、内心はそこまで嬉しくなかった。別に覚えたくて覚えた訳ではないのにと叫んでやりたい。しかし、セレナの機嫌を損ねるわけにはいかず、自分の心情は言わないようにしていた。


中学三年生の時、奨学金制度を使い私立高校に入学した。両親と口論になった時に言い訳として使えるようにするためだ。

校内での交友関係は薄く、特定の人間としか会話を交わしていなかった。

同時に家族と話す機会も少なく、高校を卒業したら直ぐにでも家を出て独立しようと思っていた。地元からなるべく遠くに行こうと思っていた。そのため、高校時代は金儲けできるアルバイトをいくつも掛け持ちしていた。


『俺、一人暮らしがしたい。』


バチン!


頬に衝撃が走った。

『んなこと許すわけねぇだろう!金はどうすんだ?家の家事どうすんだ?誰がやるんだよ!』

俺は父に平手打ちを喰らった。

『直之を育てたのは私なのよ?それに今あなたが出て行ったら春輝の』

『うるせぇよ!』

俺は今まで我慢していた感情をぶちまけた。

『何で春輝の世話だけすんだよ!母さんが最後に俺に飯を作ったのはいつだ?父さんが最後に褒めてくれたのはいつだよ?俺はここの家政婦じゃねぇ!洗濯に料理に買い出しだって、俺が全部やってんだよ!俺はこの家から出てお前らとも縁を切る。もう出て行く準備も出来てる。』

俺は自室に向かい、まとめた荷物を持って玄関に向かった。

『直之!あんたどこに行くつもりなの?!お金はどうすんのよ?本当に出て行く気?もう直之の気を悪くしないから。大好きなのよあなたのこと。だから』

『まだ分かんねぇのかよ?今更大好きとか母親ぶんな。知ってんだぞ?俺はお前の子供じゃねえだろ?俺はお前が他の男と作った子供なんだから。』

母親の顔が一気に青ざめた。

二日前、ある一人の男が家を訪ねてきた。


『どなたですか?』

『私はここのお母様の不倫相手の斉藤です。突然の訪問、申し訳ありません。』

その男は前髪が長く、左右の目の色が異なっていた。

『斉藤さん?初めまして。不倫相手?ちょっと待っててください。』

俺は動揺を隠せなかった。母親の不倫相手?どういうことだ?

『母さん、斉藤って奴知ってる?』

母親は呆然とした様子だった。心当たりがあるのか。

『何であんたが知ってんの?』

『今、下にいる。』

母親は光の速度で一階に降りた。俺の目には、涙が浮かんでいた。

下の階から怒号やら泣き声やらが聞こえてきた。

様子が気になり、息を殺して一段ずつ階段を降りた。

『警察だけはお願いします。本当にごめんなさい。あの子はどうにかするから!』

母親は知らない男に土下座をしながらひたすら謝っていた。


『どうして、そんなこと言うの?』

『どうしてって、よくそんな面して言えるな。あんたが男と遊んでる間に警察やら弁護士やらが来てたんだよ。俺はその対応をしてた。何で息子の俺が母親の不倫の対応をしなきゃいけねぇんだよ。もう俺は関わらない。連絡もしてこないで。』

『ちょっと!』

最後に言う言葉はちょっと、か。せめて名前で読んで欲しかったな。

俺は大家に借りた小さなアパートに向かった。


その後は大学には進学せずにPC関係の大企業に勤めることになった。別にPCが好きというではなく高収入を得られるというパンフレットかなんかを見たことがある。今は金だ金。一人暮らしの金が必要。安全に稼げるなら何でもいい。

しかし、蓋を開けてみれば長時間労働に残業祭り。いわゆるブラック企業というやつだろう。何をしてもダメと言われ、上司の気を損ねる。辞職届を出しても目の前でビリビリに破り捨てられる。これが人間地獄というものなのか。

『ただいま。』ただいまと言う習慣は一人暮らしになっても変わらなかった。母親が俺に教えてくれたことだ。ただいまとおかえりは絶対に言わなくてはならなかった。

一人になった部屋でパソコンを開いた。ビールを片手に明日までの資料作りを始めた。


『ダメだろこれぇ。もう一回。早くやれよ役立たずが。』

え?マジでなんなのこのハゲ。くたばれよ。そのうち痛い目あうぞクソ野郎が。

もう何もかも嫌になってある一つの決断をした。

それは、仕事の大一番の会議中に上司の全てを晒しだすことだ。

計画としては、各部署の代表が集まる収入報告会でパソコンに繋いだ画面に録音したものを流すという計画だ。なかなか狂ってやがると自分でも思っている。


次の日からいつも通り会社に行ってぐちぐち言われている時に録音をし始めた。こんなに叱られるのが楽しいなんて初めてだった。少しずつ証拠を集めて最後に繋ぎ合わせて完成だ。もともとこの会社は辞めて転職する予定だったし、どうなったってどうでもいい。

『こないだと変わってねぇじゃん!え?君バカ?なぁんで言ったことが出来ねぇんだよ!クソが!役立たずが!クビにすんぞ!お前は!金をもらってんだよ!このまま役立たずなら消えろ。消えちまえこんな奴。』

うっひょー!今日のハゲはいつもよりエンジンかかってんな。あぁなるとも知らずにな。


『この度はお集まりいただきありがとうございます。本日は報告前に皆様にお見せしたい映像がありますのでご覧ください。』

ついにこの日になった。楽しみで仕方ない。この右手の人差し指を押せば、クソ上司の怒号が再生されるのだ。全身の筋肉を人差し指に集中させ、脳も集中させる。


カチッ


『お前は一生ここの奴隷だ。俺の引き立て役で、逃げ場のない虫。分かるかぁ?アホだから分んねぇか!アホがなぁ。』

その時の上司の顔は今でも忘れられないなぁ。あの焦った顔っ!笑い止まんねぇよ!

各部署の代表たちはヒソヒソと喋り始めた。その間も上司の甲高く手下を見下す声明が流れ続けた。

『これは、僕が受けた実際の声明文です。毎日このようなことがありました。他の部下にも同じようなことをしております。』

ハゲ野郎は大量な汗を流していた。

そして、会社の社長がスッと立ち上がり、俺の元にゆっくりと歩いてきた。おそらく定年を過ぎているであろうお爺さんだ。

『申し訳ない。彼はクビにする。』社長は深々と頭を下げた。俺はその姿を見て余計に頭に血が上った。社長が謝る?平社員の俺に?つまんねぇ。

『あなたが謝ることはあなたの自由ですが、あなたが謝ったところでこちらの苦しみは消えません。彼をクビにするかどうかはそちらにお任せするので私は退職させていただきます。もうすでに職も見つけていますので。』俺はイライラを抑えるためにその場から立ち去り、上司の机の上に辞表が書かれた白い封筒を置いた。定時の時間にもなっていないのに帰る平社員の姿を見て他の平社員は驚きを隠せないのか俺のことをひたすら観察し続けた。さらばだなクソ会社。

とはいっても、新しい職なんて見つかっていない。意地張って言ったばかりに。これからどうしたらいいか。まだ二十歳そこそこの男が何をしたらいいのか。

じっくり考えた結果、かつて柔道をしていた経験を活かして、柔道教室のコーチになろうと思った。それなら安定した金も貰えるし何だって趣味なんだから楽しいに決まってる。

昼過ぎに自宅に戻る自宅は最高そのものだった。暖かな日差しが受け入れてくれた。

俺は携帯を取り出し、近場の柔道教室の募集を探した。

しばらく検索してみると、吉祥寺駅近くの柔道教室が見つかった。電話をして、二日後に面接をすることになった。

これで俺は本当に退職した。今日は記念日だ。いつもは一本の酒も二本も三本も飲んだ。


二日後、早速柔道教室に行き、ここで教えたいと申し出た。

彼の名前は高野秀吉。

一人で柔道教室を営んでいるという。これが俺とジョセフの出会いだ。ジョセフの本名は高野秀吉。将軍の名前でかっこいい。第一印象はこれ。

面接では人間性と技術を見られた。

『うん。君、合格で。今日から入ろっか。』

面接にはあっさり受かってしまった。こんなで、いいのか?

まったく話したことのない男をすんなり採用していいのか?申し込んだのは俺なんだが今となっては謎に包まれてきた。

そこから弟子入りし、最上級まで技を磨いた。もとがいいから技術を磨けばさらに上達すると秀吉さんに言われた。

『おぉ!昨日より上手くなってんなぁ!でもまだまだ僕には届かん!』

俺は秀吉さんに褒められることが嬉しかった。会って日の浅い人だが、彼の言葉には重みがあり、自分の非を正してくれる。イケボだし。

しかし、いつまで経っても俺は生徒に教えることは出来なかった。秀吉さんが一人で教えている状況だった。どんなに技を磨いても、どんなに秀吉さんを倒しても、教えることは出来なかった。

『今日もありがとうございました!』

『息子さん、新しい技をたくさん覚えて実践できますよ!今後に期待だな!』

ある日、道場に通う一人の男の子に目線を揃えて、話していたのを見たことがある。男の子の母親もご満悦な表情をしていた。

秀吉さんは目元が緩やかな人で少し焼けた肌が似合っていた。俺も幼い時からこの人に教えてもらえば良かったと思う。

もし、俺が両親から愛を受けて育ったら?春輝が生まれて来なかったら?俺が次男だったら?両親に柔道をやりたいと言っていたら了承してくれたのかな。

俺は俺に丁寧に接してくれる人と出会うとすぐに両親と比べてしまう。悪い癖と分かっているが直せない。

何が何でも今、秀吉さんと出会えてよかった。心の底からそう思える。


秀吉さんの元に弟子入りしてはや一年が経った。俺は二十一歳になり、この一年でさらに磨きをかけた。

いつも通り一人で稽古の練習をしていると、顔を暗くした秀吉さんがやってきた。

『直之。話がある。』秀吉さんは胡座をかいて改まった表情をしていた。俺は緊張してしまい、正座をしてしまった。

『どうしたんでしょうか?』何を言われるか怖い。

『もしこの話を聞いて嫌になったら弟子を辞めてもいい。それくらい深刻だが聞いてくれるか?』俺は何を言われるのかと思ったが興味深く、聞いてみることにした。

『はい。』

『実は、俺、殺し屋のボスなんだよ。』

‥‥‥ん?

俺はしばらく硬直状態になってしまった。殺し屋?目の前にいる師匠が?ボス?一体何のことだ?

『そして、お前に副リーダーをやって欲しい。この通りだ。頼む。』秀吉さんは、初めて俺に土下座をした。あの、厳しすぎるで有名な秀吉さんが俺にだ。

『もし、断ったらどうなりますか?秀吉さんの側を離れなくてはいけないのですか?』秀吉さんは首を振り断っても何もしないと言った。その眼には少し、涙が溜まっていた気がする。どんな涙かは分からない。そこで知る必要もなかった。

ってか殺し屋って存在すんの?え?まじどゆこと?

俺は、秀吉さんに助けられた。あの生き地獄から逃げ出していきなり申し出てきた輩の願いを引き受けたのだ。

殺し屋のボス?もし断ったら?もしここを辞めなければならなくなったら?俺は殺し屋をやる恐怖よりも秀吉さんの側を離れる恐怖の方がデカかった。依存しているんだ、高野秀吉に。

そして、俺は秀吉さんに告げた。

『秀吉さんのもとで働かせてください。』秀吉さんは本当か!と言って肩を叩いた。俺はその瞬間に大量で謎の涙が溢れ出てきた。『男がグスングスンと泣くんじゃねえよ。』

秀吉さんがいなかったら今の俺はいない。ほぼ虐待の家庭で育ち両親と絶縁した一人男を助けてくれた。

俺にとって本当の父親。一生着いていくと決めた。秀吉さんのことはいつでも見捨てない。

肩を叩かれたとき、初めて認めてもらった気がした。ひたすら技術を磨き続けるだけの人生を与えるような人間ではないことを俺は知っていた。秀吉さんは俺の父親だから。


『お前、もうすぐ二十八かぁ。七月生まれだもんな。お前のことを勧誘したのも七月だったよ。暑くて溶けちまうかと思ったわ。』『そうだねぇ。』

アジトの近くにある井の頭公園で煙草二箱を二人でたいらげた。

俺は煙草を吸い始めて五年ほどしか経っていないが、ジョセフは三十年は吸っている。俺とは比べもんにならないほど肺が死んでるだろう。

二人で何か話す時はここって決まってる。ジョセフはここが落ち着いて好きらしい。

『ふぅ~、ありがとな。こんなクソみたいな仕事と俺についてきてくれて。そんで、今日から殺害部隊のサードになる奴を紹介しようと思う。一旦帰ろ。』

俺は二十歳の時に殺し屋に加入し、その時から今まで殺害部隊のセカンドヘッド。何度も人を殺してきて大金を得てきた。才能も技術もない奴は次々と辞めていき、替え玉として出頭されていった。そんな仲間たちを俺はずっと見てきた。

そして、今日からまた新しいサードヘッドが入るらしい。どうせ無能なヤツなんだろうなと思っていた。セカンドヘッドとサードヘッドは相棒にあたる関係だから月替わりな奴は嫌なんだ。固定でいて欲しいんだ。

俺は同い年くらいの男を想像した。歴代の人が全員若い男ばっかでルール破りや普通に捕まりそうになったこともある。

一番信頼できる手下、ロルバンがサードヘッドになるかと思っていたが違うと本人から否定された。彼こそ相応しいのに。

ジョセフの大きな手で殺害部隊専用の仕事部屋の扉を開けた。

『こいつ。セレナだ。彼女は今、高校一年生だ。仲良くやれよ。』紹介されたのはなんと女子高校生だった。

『よろしく。』

俺は極力感情が顔に出ないように明るく振る舞った。『よろしく!俺、コアっていうの!本名は加藤直之ね!』

セレナの困った顔は好きだ。オドオドしてて、眉を寄せる顔。それがなんとも可愛かった。Ki殺し屋に新たな風が吹いたなと思った。

さっそく殺害部隊の仕事部屋に案内し、やることを説明するとセレナはありがとうと一言言って空いている椅子に腰掛けた。そして、彼女は小さなその手で自分のトカレフを改造していた。器用に自分の使いやすいように改造した跡がいくつもあった。俺は気になって聞いてみた。

『そんなに改造してどうすんの?』セレナはトカレフを見ながら答えてくれた。

『ただ貰ったもんで人を殺すのはつまないでしょ?殺すなら自分が満足いくように殺したいんだよ。』

俺は、女子高校生であるセレナの言うことは大人だなと思った。ただし、高校生がいうセリフではないが。

俺もその隣に座り改造の仕方を教えてもらった。顔をまじまじと近づけて、また、彼女を困らせた。

『名前は?』

『セレナって言ったやん。』

『そっちじゃなくて。』

『貝。』

『貝?かわよ!じゃあ貝ちゃんて呼ぶね。』セレナはコクンと頷き、俺に改造の仕方を教え始めた。


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