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殺し屋JK、ターゲットは父親でした。  作者: 白雪菜胡
殺し屋JK、ターゲットは父親でした。鎌倉編
16/44

16撃つしかなかった世界で

『続いてのニュースです。神奈川県鎌倉市の海岸沿いで車二台が絡む玉突き事故がありました。


昨日午後三時ごろ、砂浜を散策していた人から通報がありました。

警察は砂浜での玉突き事故は不審然と判断し事件性があるとみて捜査を進めています。

玉突きをされた車の側には成人男性の遺体があり、事故による死因ではないということです。』


「派手にやってんねぇ。」

「これって例のka殺し屋って奴ら?」

「多分ねー。こいつらのせいでうちらに依頼が全然こないんですけどー。」

「そのうち来ますよ。」

「なんでぇ?!」

「うちらと同じようにka殺し屋の奴らをよく思わない奴らがいるから。そいつらを利用する。」

「へー!頭いいね!!その仕事私にやらせてよぉ!」

「それじゃあ、あとでコハクに資料渡すね。」

「おっけぇーーー!!楽しみー!」

パァン!


ビチァァァ


「あっ」

勝地の血飛沫が私の顔面に飛んできた。


バタン!


銃声と共に一瞬にして、勝地が消えた。

「セレナ!コア!」

あまりにも突然のことすぎて理解が追いつかず目だけでひたすら追いかけてる状態だった。

「セレナ!セレナ!」

私は、あるところに目がいった。

それは、海岸上から銃を構えたリアムだった。

「大丈夫か?!」

リアムは階段を降り車の前まで小走りで来た。

「降りろ。」私はリアムに言われるがまま車を降りた。

車を降りた瞬間、衝撃的なものを目にした。

「これ、勝地?」

そこには血塗りされた勝地がいた。今にも息絶えそうだった。

私は怖くなりその場を離れた。

「セレナ、落ち着け。俺はお前達が心配で後をつけてきたんだ。そして、セレナが勝地に銃を向けられてるのを見て俺が発砲した。勝地はもうじき死ぬ。ジョセフは車と車が衝突した衝撃で気を失っているよ。」

ふと後ろの車を見ると、窓ガラスは飛び散り、ほんの僅かに血がついた車のフレームだけが残っていた。車体自体木っ端微塵に吹き飛んでいたが、ジョセフは無傷に近いようだった。

おそらくだが、私たちの車と衝突する瞬間に扉の外に出たのだろう。

リアムが言っていた車との衝突ではなく、車から落ちた時の衝撃で気を失っているのだろう。

「コア、大丈夫か?」コアは目元を抑えながら車を降りた。

「あぁ。眉にガラスが刺さっただけだ。足腰は平気だ。それより、急いでこの場から離れよう。」

確かに、この現場を誰かに見られたら終わりだ。

「急いで着いてこい!」リアムは私たちを誘導した。それと同時に、ジョセフを担いだ。

私は歩いている間も、車に乗り込むまでも、目の前で人が死んだことを想像してしまう。

「ほれ、血ふかないと。」

コアは袖を私の頬や額に当てて血を拭き取った。

「ちょっと痛い。」思ったよりも強く拭かれて押される痛みが発生した。

「ちゃんと拭かないと可愛いお顔が勿体無いよ?」

コアはこの状況でも私を肯定してくれた。

海岸上の道路脇に一台の車が止まってあった。リアムの車だ。トヨタマークXの黒塗り車を愛用している。リアム曰く、車が人生で一番の買い物らしい。

「みんな乗った?」

リアムが確認をし車を出発させた。

「何で着いてきてくれたの?」私はリアムに問いかけた。

「セレナが勝地に会いに行くなんて言うからだよ。セレナがみんなから責められて後輩を失っていきなりホシと会いに行くなんて無理にもほどがあると思ったからね。」リアムは幹部の中でも私に忠実な人だった。みなコア側についた中、彼だけは私側の人になってくれた。

「本当に助けられたよ。お前がいなかったらセレナも俺も殺されてた。」

リアムは、『どーも』と言った。

しばらく車を走らせた。ka殺し屋には戻らず、東京都八王子市内にある一つの偽アジトに向かった。

ここはほとんど使われたことがなく、どの部隊も立ち入ったことがない。私は一度だけコアとの資料集めのために行ったことがある。

記憶上では、汚く、臭く、今にも壊れそうな建物だった。

「着いたぞ。」

到着した。想像してたよりも綺麗に保たれてあった。事件後処理部隊と医療部隊のメンバーが定期的に掃除をしてくれているらしい。

「とりあえず、全員に集合かけといたから。それまでジョセフのことを監視しよう。」

リアムは正しい行動力がある。彼は死体処理部隊だが殺害部隊に入隊してもいい。私はそう思っている。

「ありがとう。あと、コアの顔の手当てを。」

リアムは了解といってコアを連れて部屋を出てしまった。

私は一人になり天井を向いた。

勝地死んだ。

メイ死んだ。

オーディンとアルチュールとウメは目を覚さない。

これって全部、多田と勝地のせいでしょ?

何でこんなことするの?

何が彼らを変えてしまったの?

彼らにとって一番大切だったのは私たちではなく、お互いだったんだな。


ガチャ


「セレナ!無事か?!」

まず最初に来たのは緊収のナルだった。たまたま八王子におり、連絡があり一直線で来たらしい。

「まぁ、私は無事だけどコアが少し怪我したくらい。リアムが助けてくれたんだ。」

ナルはそっか、と言って席に着いた。

その後、続々とメンバーが到着した。みんな第一声は大丈夫?と心配してくれた。

たとえ、意見が対立しても、仲間意識が消えることはなかった。

「あ!みんなヤッホー。」

眼帯をつけたコアが階段から降りてきた。

「リアムは?」

「ジョセフのこと監視してるよ。」

「そっか。」

「リアムが情報共有をしといてって。」

私は軽く頷き話を始めた。

「みんな急な連絡に来てくれてありがとう。伝えておきたい情報がいくつかある。一つは勝地が死んだ。私とコアが彼の自宅を訪問したところ遭遇。決戦の末、後から合流したリアムが仕留めてくれた‥‥」

私は一連の流れを話した。頷く者もいればただこちらを見ている人もいる。

「リアムが仕留めたねー。」

ナルはリアムを睨んだ。リアムが私側の人間というだけで敵意識が生まれてしまった。仲間内での揉め事は時間の無駄だ。

「とりあえずリアムには感謝を伝える。ありがとう。この後、ジョセフが目を覚ましたら話してくる。私とコアで話してくる。その間は各自作業をしておいてくれ。」

部屋の中にみんなの返事が響いた。

私は自分用のロッカーに行き、パソコンを取り出した。みんなも取り出して作業を始めた。

業務内容は、主に今後予定されている依頼のチェック、依頼者情報の整理などだ。


ガチャ


「セレナ、コア、ジョセフが起きたぞ。」

リアムが知らせてきたのはジョセフを確保してから五時間後のことだった。時刻は17時30分を回っていた。

流石に作業も終わっており、メンバーと雑談を交わしていた。

「了解。監視してくれてありがとう。」

私とコアは立ち上がり、必要な資料を持ち部屋を出た。

向かっている最中、寒気と恐怖で倒れそうになった。

私は部屋を出た直後、すぐにコアの袖を掴んだ。

「貝ちゃん、怖いのは分かるけど部屋に入ったらしっかりするんだよ?」

私はコクンと頷いた。

コアはいつでも私に優しさを与えてくれる。それは多分、ジョセフがコアにそうしていたからだろう。

何だってジョセフはコアのお父さんなんだから。

私のお父さんでもある。育ててくれた。

「ジョセフって、私たちのこと嫌いだったのかな。」私はポツリと呟いた。

「嫌いなんかじゃない。嫌いにならなきゃいけなかったんだよ。好きじゃなきゃ俺たちの面倒見てくれないよ。」

「嫌いにならなきゃいけなかった?どうゆうこと?」

コアは黙ったまま前を向いて歩いた。


ガチャ


「ジョセフ。」

遂にジョセフのいる部屋に着いた。ジョセフとは約四ヶ月ぶりに会う。

目の前にいるジョセフは特に変わった様子もなく顎がシュッとして鼻が尖っていた。綺麗な顔立ちは継続したままだ。

「よいしょ。よぉジョセフ、いや、多田総?高野?どれでもいいが。まずはゆっくりと話を聞かせてもらおうか。」

私はコアの隣にそっと座った。

「ジョセフ、何で、なんでこんなことしたの?」

ちょうど今から、彼の過去が明らかになる。




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