90 2人だけの秘密
「練馬統合のトップだと?」
ヨナスは持っていたコーヒーを置いた。
「勝地が残した走り書きに、そう書かれていた」
「やはり全て勝地が裏で.....」
「お前と勝地は関係が深いだろ?何か知ってることはないのか?」
「強いて言うなら、勝地とクララはチーム内でも深い繋がりがあった。よく2人で話すのは見かけていたな」
「そこでの会話は、何か知らないのか?」
「知らないね。その時は生きることに必死で、逆らおうともしなかったから」
「そうか.....」
俺は作業する手を止めて、もう一度ヨナスの方を見た。
「それで、白川宅で手に入れた資料は、クララたちに見せたんだよな?」
「あぁ。その時の反応は、普通、ではなかったな」
『もしもしクララ?いま、そっちに戻ってる』
〔どうだった?〕
『ki殺し屋たちに、先越されていた』
〔クッソ.....間に合わなかったか〕
『一応、重要書類は持って帰ってきた。でも、一部は回収されているみたい.....』
〔分かった。帰ってきたら確認する〕
俺は電話を切り、ブレーキを踏んだ。
『俺ら、帰ったら、何か言われるのかなぁ』
独り言のはずが、ニクラスに反応して欲しかった。
『だい....じょーぶ』
ニクラスは不器用に答えた。
『俺には、この仕事が何のためにしてるのか、分からない』
『うぅん....』
『でも、今はこうするしかない。生きるために。もうお前を苦しめたくない。人を殺してほしくない』
ニクラスは何も言わなかった。
ただただ窓の外を眺めていた。
コンコンコン
『帰ったぞ』
『遅かったな』
仕事部屋には、クララ、ナハト、フーリン、そして勝地がいた。
勝地は深く帽子を被り、コーヒーを嗜んでいた。
『座れ』
『......』
『持ってきた資料を出せ』
カバンの中を漁る手が震える。
全て出さないと、何をされるのか分からない。
正直に...正直にならないと———
『回収したのは、この2つだ』
俺は4人に、”白川家 食事管理表”と、"各メンバーの詳細記録”を提示した。
『本当に、これだけか?』
『あぁ。これ以外は全て、奴らに回収されていたよ』
『.......カバンの中を確認しても?』
『問題ない』
クララはフーリンに目配せをし、フーリンにカバンの中を探させた。
『......』
『......』
『あぁ.....』
ガン
俺はニクラスの足を踏んだ。
『クララ、これで全てだ』
『そうか.....』
『すぐにでもクララの保護体制に入ろう。kiたちもいつ動いてくるか分からない』
ニクラスの足は踏んだまま。
『kiのトップの女!名前なんだっけ〜』
フーリンは椅子グラをしながら言った。
『セレナのことか?』
『奴が1番厄介者なんだよなー!』
ラビットアサシンではつい先日、ki殺し屋と衝突があったばかり。
『今日は解散だ』
勝地が場をまとめ、1人立ち部屋を出た。
『じゃあ、また。いくぞ』
俺はバッグを持ち、ニクラスの腕を引っ張り部屋を出た。
ガチャン!
俺は反射的にニクラスを見た。
『.....っ!!』
『あぁ!うぅ!!』
『これは、墓場まで持っていこう———』
ニクラスのカバンには、”白川悠仁 仕事記録”が入っていた。




