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【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~  作者: ハムえっぐ
第3章 公爵令嬢の選択

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第5話 気になる依頼書

 ここは?

 そうだ。王宮の中庭のお花畑だ。

 色とりどりの花が咲いていて、私の近くには小さな女の子が2人いた。


 1人は紺に近い青髪が腰まで伸びた、青色ドレスの女の子。

 1人は赤い髪をポニーテールにした、赤色ドレスの女の子。


 あ、目線が同じだ。

 手のひらをマジマジと見て、自分もちっちゃい女の子の姿だと理解する。


 これ、10年前の王女だった頃の夢だ。

 意識がクリアだし、夢を見ている自覚があった。


 青髪の女の子が、そっと近付いてきて抱きついてくる。

 う……私って子供体温だからあったかいけど、この子も温かいな。


 赤髪の女の子も近寄ってくるので、頭を撫でると嬉しそうに笑うのであった。


 2人の女の子に挟まれて、お花畑を歩いていく。


 青髪ロングヘアは、ヴィレッタ・レスティア公爵令嬢。

 赤髪の長いポニーテールは、シャルロッテ・ルインズベリー公爵令嬢。


 うん、覚えているよ。忘れるもんか。


 会いたいなあ、会って3人で遊びたいなあ。

 でも、私が死んだはずの王女だとバレたら、色々ややこしいことが起きてしまう。

 2人の今の日常に迷惑をかけてしまうだろう。


 私のそんな気持ちが夢でも伝わったのか、2人が近寄ってきて顔を覗いてくる。

 2人とも涙ぐみながら私を見つめていた。


 ごめん、ヴィレッタ、シャルロッテ。

 そんな顔をさせてしまって。

 ……あれ? この場面は実際にあったことだとは覚えているのに、この後どうなったんだっけ? 思い出せないや……


 ***


 目が覚めると、ベレニスとフィーリアの両足に挟まれている、いつもの私。

 おにょれ2人とも、毎朝の恒例行事にしおってからに。


「あれ、朝っすかあ? ん、ローゼさん涙の跡があるっすよ?」


「え? ああ、うん。……あくびをしたからかな?」


 慌ててフィーリアに取り繕うも、フィーリアは訝しげに私を見つめる。


「生まれ故郷で忘れられた王女様っすからね。色々感情が入り混じっているって感じっすかね。まあ、ローゼさんなら大丈夫だろうっすから心配はしないっすけど、何か手伝えることがあれば、遠慮なく言ってくださいっすね」


「うん、ありがと、フィーリア」


 高鼾のベレニスを起こして、やっぱり宿の裏手で剣の稽古をしていたリョウを誘って朝食タイム。


 朝食を終えて冒険者ギルドに向かうために、乗り合い馬車なる乗り物に乗り込んでいった。

 中には長椅子が並んでおり、向かい合う形で座った。


 へえ~、こういう乗り物もあるんだ。

 知らないおっさんたちも乗っているから、目立たないように静かにしていよう。


「なあ聞いたか? ザガン領へ行く山道に居座っていた盗賊が、退治されたってよ」


「ああ、なんでもアランの傭兵や冒険者がやったらしいな」


「ありがたいねえ、北へ行くルートが確保できたのはデカい」


「ちゃんと維持してほしいがなあ」


 おっ? おっさん2人が、私たちの活躍の話をしているぞ。

 この噂はもっともっと広めてね♪

 ベレニスもムフン♪ として聞いている。


「それはそうと、今年も小麦の収穫がどこも悪いな。ますます値上がりしてやがる」


「人災だよなあ。……おっと、下手なことを呟いて、牢に入れられたくはねえから黙ってなきゃな」


「あの噂は聞いたか? ローゼマリー姫殿下が生きてるって話」


「しっ……陛下にも宰相にも都合が悪かろう、あまり口にしないほうがいいぞ」


 なんとも言えぬ馬車内の空気になった。


 ベレニスは、自分たちの活躍の話題が一瞬で終わったことにちょっとふくれっ面。

 リョウは防具を磨いているし、フィーリアは街の光景を眺めながらペンを走らせていた。


 歩けば1時間以上かかるギルド街に20分程で到着した。


 降りてすぐにあった看板に、地図とあちこちのギルド名が書かれているので迷うことはなく進んでいける。


 入った冒険者ギルドの中は、ビオレールの街のより少し大きいかな?

 さすが王都だ。でも活気はあんまりない感じだった。


 ギルドに入ると、やっぱり物珍しそうに見られている。

 まあ、少年剣士と、エルフとちびっ子少女と、私の組み合わせが珍しいってのはわかるんだけど。


「まずは掲示板で、教会関連があるか探しましょ。あとは邪教が関わってそうな依頼ね」


「それと稼ぎがいい依頼もよ。ここベルンでも、ビオレールのように私の名前を轟かせてやるんだから♪」


 自信たっぷりに言い放つベレニス。

 まあ、心意気やよしだから何も言うまい。


「リョウはアランの傭兵の肩書で情報収集よろしくね」


「ああ」


 大丈夫かな? リョウって自信たっぷりでいるとだいたい失敗している気もするけど。


 掲示板で、教会関係の依頼書を探す私とフィーリア。

 ふむふむ……掃除係募集中に、神聖魔法の使い手募集中に、寄付金募集中。

 ……なんかどれもパッとしない。


 ベレニスは掲示板の前のテーブル席に座って、受付嬢に何やら武勇伝を語っているし。

 リョウは、冒険者のおっさんたちが座るテーブルで腕相撲をしているけど……何故にそうなっているのだ⁉


「ローゼさん。これ、どうっすかね?」


「どれどれ……教会に務めていたシスターが1人行方不明……か。うん、手始めにこれから行ってみましょうか」


 受付に行ってギルドカードを見せて、魔女のローゼですと名乗る。


「申し訳ありませんが、こちらの依頼は爵位のある方の許可がないと立ち入れない貴族街での任務となります。どなたか貴族の方の紹介状はお持ちですか?」


 なんとね。私は一応王族の血筋だけど、ベレニス……頼むから黙っていてよね?


「はあ? めんどくさい街ね。てか傭兵! こういう時のための傭兵でしょ? なんとかしなさいよ!」


「無茶を言うな。俺に貴族なんかの知り合いがいるわけないだろ。……どうするローゼ?」


「う~ん。行方不明の人のことを知っちゃったし、放って置くのもなあ。……なんとかして入り込もう」


「自分もローゼさんに賛同っすね。そもそも、ローゼさんやリョウ様の目的を達成するのに、貴族街の教会は避けては通れないっす。ですので、後回しにしても再びこの問題に直面するだけっす」


 さすがフィーリア。

 その言葉にリョウもベレニスも力強く頷いてくれた。


「でもどうするの? 入れなきゃ意味がないじゃない」


「う~ん」


 手はある。


『父であるアデルを訪ねたまえ、父には文を出しておこう』


 と、ビオレールを出る時にオルタナさんから言われている。

 なのでアデル・アーノルドの名前を出せば、上手く事が運ぶかもしれない。


 でも、王女生存説が流れている今の王都で、唯一あの惨劇の目撃者であり、私が魔女ディルに預けられたのを見た人物に会うのは心が重い。


 いや、めっちゃ会いたいよ?

 会って無事を喜び合いたいけど、ディルの魔法の影響でアデルの記憶も全て書き換えられている。


 会っても、私は見知らぬ魔女の少女ローゼという認識になるだろう。

 でも、万が一があるのだ。

 噂が広まっているのは、ディルの魔法の効果が薄まっているのかもしれない。


 私を見て、アデルはどうなるだろうか?


 救国の英雄、大陸七剣神の1人と呼ばれているアデルだが、身分は準男爵で、政治的には微妙な立場にいる。


 私と関わって、邪教関連まで巻き込ませるわけにはいかない。

 そんなことを考えていると……


「ほお? その依頼ですか。では私が許可を出しましょう」


 突然、優雅な声が聞こえてきた。

 振り向くと、長身で整った顔立ちに優し気な目元の、いかにも貴族であろう赤髪の青年の姿が目に入った。

 

次回第6話「オルガとポール」

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