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【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~  作者: ハムえっぐ
第2章 英雄の最期

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第19話 盗賊のアジトへ

 真夏の山道だが、木々の葉が陽射しを遮り汗はかかない。

 まるで良いハイキングコースのようだ。

 木々や草花の香りが漂う中、清々しい気分に浸りながら歩く。


「あ~。王都に直結する場所に住み着いているんすねえ。全く困ったもんす。ここら辺の地理なら、自分詳しいっすから案内するっす」


 フィーリアはそう言いつつ、いつの間にやら用意していたピクニック用のバスケットを担いでいる。


「よくあの親が許したわね。危険なことを、あんたにさせないと思ってたわ」


「まあ、ドワーフには関係ないって話でもないっすからねえ。盗賊が蔓延っても、ドワーフの行商人は遠回りするだけっすけど、流通が滞るのは困るんすよ。それに我らドワーフは危険になれば逃げるのが鉄則っすし、手段もあるっすんで」


 フィーリアはベレニスに説明を続けていた。


 手段てなんだろ? あれかな?

 ドワーフといえば穴を掘るのも得意だっけ。

 そこに隠れるとかかな?

 スコップとか持ってないけど、フィーリアのことだ、何か魔導具を所持しているのかも。


「依頼を受けたのは俺だ。危険だと判断したならそれでいい。ローゼもベレニスもな」


「はっ! 盗賊ごとき私とローゼだけで十分よ。傭兵こそ足手まといにならないでよね!」


 ベレニスはリョウに啖呵を切っているが、やる気に満ち溢れているから、まあいっか。


「ところで、そのルシエンって魔女は? ついてこないの?」


「彼女は我らが主ザガン伯爵様から、リョウ殿へ依頼する繋ぎ役ですので。先にザガンに戻られていますよ」


 ベレニスの疑問にナフトさんが答えた。


「しかしエルフの少女までお仲間とは、リョウ殿には驚かされますな。まだお若いので、一瞬不安の顔をした私に、ドワーフの戦士たちから『小僧なら大丈夫だ』と太鼓判をもらいましたが、信頼が厚いのですな」


 ナフトさんが感慨深そうに呟いた。


 この人はこの人で、小規模領主の騎士という立ち位置だからなのか、人の善いおっさんっぽいな。

 謀略や調略に向いてなさそうなナフトさんが派遣されたのも、ドワーフたちは安心出来た材料になったのかもしれないし。


「な~んか、傭兵が私より上みたいに扱われているのムカつくかも」


「まあ、リョウは実績があるし。私とベレニスはビオレールでしか知られていなかったし、これからこれから!」


 拗ねるベレニスを励ます私。


「そっすねえ。でもリョウ様の経歴ならもっと評価されてもいいんすけどねえ。あの性格は損っすね」


「別に俺は評価なんぞ求めていない。それより盗賊についてだ」


 リョウがフィーリアに突っ込みを入れる。

 本気で言っているっぽいのがわかるから、ナフトさんが苦笑しているし。


 まあ、私も評価なんてどうでもいいかな。

 他人から良く見られるより、仲間と一緒にいられる方が嬉しいし。


「リョウ様ってアラン傭兵団だけあって、七英雄アランの伝承に似ているところがあるっすねえ」


 ふと切り出すフィーリアに、リョウはそうなのかと訊く。


「功名心より、戦いが優先ってとこっすかね。半世紀以上を最前線の戦いに費した英雄なんて、アランぐらいっすね」


「ムズカシイ話をしてるけど、七英雄の他の6人はどうしたのよ。フォレスタ様は知ってるけど、特に人間たちのほう。一番有名なのって勇者レインでしょ?」


 ベレニスが話についていけないけど、会話に混ざりたいオーラを放ちながら口にする。


「勇者レインと魔女アニスは、その後の足跡が不明なんだ。魔王討滅後から55年後に人間同士の大乱があって、多くの資料が喪われちゃってね。……でも、魔王討滅前の資料は結構残っているし、民間に散見してる伝承もあるから、30年ぐらいは一緒に旅しているってのは事実と思われてる。もっとも大乱まで生きていたアランのほうが、壮絶な最期もあって悲劇の英雄として祀り上げられたって感じかなあ。直近まで生きていた分、アランを慕う人たちの証言が集まりやすくて資料も作りやすかったから」


 そんな私の説明。


「ふうん? 人間てもう1人いなかったっけ?」


「神官ザックスですね。魔王討滅後、大陸統一王朝ラフレシアの宰相を務め、20年に渡る平和を生み出しましたが病には勝てずに死去された、とは伝わっていますよ」


 ナフトさんも話に加わる。

 リョウは聞いているけど、よくわからんから黙っておこうって顔してるなあ、もう……


「エルフのフォレスタと、赤竜王ドラルゴは早々に表舞台から姿を消したっすね。『いずれ訪れるだろう、人間同士の争いに巻き込まれないように手を打ちやがって』と、シュタイン様の回顧録に書かれていたっす」


「ドワーフだっておんなじでしょ?」


「まあ、ベレニスさんの言う通りっすね。結果的にはそうなっちゃったっす。シュタイン様はアランの死に、かなりショックを受けたみたいっすから」


「かつての七英雄の仲間だった、アランとシュタインは交流が続いてたんだね」


「あはは、喋りすぎちゃったっすかね? 後で本を読むローゼさんの驚き興奮する箇所を、先走って教えたみたいでなんだか申し訳ないっす。ところでリョウ様、アランのような死だけはごめんっすよ。生きてこその英雄っす」


「俺は別に英雄じゃないぞ。英雄というのは、グレン団長やラインハルト王にイリス・アーシャのような人だと俺は思っているし尊敬してる。ラインハルト王やイリス殿には、是非一度お目にかかりたいものだ」


 グレン団長とは、リョウが所属するアラン傭兵団の現団長。

 ラインハルト王は、ファインダ王国の現国王で元アラン傭兵団の傭兵だ。

 ラインハルト王の妃、マーガレット王妃は私の母の妹であるので、私にとっては叔父に当たる。

 会ったことないけど。


 イリス・アーシャは、混乱極まる大陸南部の部族連合国の弱小部族の一つの長の名前。

 年齢はまだ20代半ばの女性だが、弱者が無惨に扱われる南部で、常に弱者を護り強部族を撃破する戦姫と名を馳せた人物。

 ファインダへの留学経験があり、背後にラインハルト王が支援しているとの噂もある。

 私も女性ながら七剣神に数えられているイリスとは、是非とも会ってみたいと思っている人物だ。


「うわ~、さり気なく女の名前を入れて会ってみたいだって~。傭兵ってやっぱりムッツリね」


「イリスさん、めちゃくちゃ美人っすからね。ドワーフじゃないのに、あの膂力はビックリしたっすよ」


「フィーリア、会ったことあるの⁉ てか南部には寄ってないって言ってなかったっけ。ね、ね。どんな人だったの? 戦神戦姫、南部の英雄って‼」


「……ローゼさん。ローゼさんのスイッチ、多いっすねえ。……イリスさんとはファインダで会いましたっすよ。自分の見た目で商人と名乗って、最初から子供扱いしなかったのは両手の指の数程でしたが、イリスさんもそのうちの1人っす」


 うひゃあ、やっぱり素敵な人なんだ。

 南部部族が再統一されないのはイリスのせいだって悪評もあるけど、負けないで頑張ってほしいなあ。


「フィーリアって英雄を探してるんでしょ? なら、そのイリスってのが適任じゃないの?」


「う~ん、ベレニスさん、そう単純じゃないんすよ。イリスさんは南部部族の問題で手一杯っすし、他の七剣神て呼ばれている方々も、すでに役割ってのがあるっすからねえ。まあ、大陸最悪の人物、ノイズ・グレゴリオみたいに行方不明もいるっすが、論外っすからねえ」


「拝聞しましたが成程……フィーリアさんは、リョウ殿こそ英雄の器と思われているようですね。これは是非とも、盗賊退治が終わればザガンに来てもらい、領主様に盛大に歓待するように進言せねばなりますまい」


「ナフト殿、からかわないでください」


「そうよフィーリア。英雄なら私がなるから十分よ!」


「はは、まあ、傭兵に魔女にエルフの組み合わせは驚いたのは事実っす。皆さんとひと月以上旅をして、普通ではないってのは確信はしたっすねえ。……エルフってどうしようもない怠惰ってのもっすが」


 ソっと顔を背けるフィーリア。

 カチンとするベレニス。


 2人の口喧嘩が真夏の山道で響き渡る。


 そんなこんなで、私たちは南東へと進んでいった。


「そろそろっすね。人の依頼が絡んでいるんで、ドワーフである自分はここで待機しているっす。皆さん、ご武運を」


 山道の途中、少し開けた場所でフィーリアは私たちにそう告げる。


 盗賊が潜んでいるであろう場所に、案内するわけには行かないからだ。

 万が一討ち漏らした盗賊が、ドワーフが関与していたと騒げば一大事になってしまう。


 まあ、フィーリアがドワーフだって見た目じゃ全然わからないからその心配はないとは思うけど。


 でも念には念を入れるのが、道案内の役目をする際にクルトさんやユーリアさんから出された条件だし仕方がない。


 私たちは頷き合い、フィーリアと別れて更に進むのであった。

 

次回第20話「発動する策謀」

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