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【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~  作者: ハムえっぐ
第2章 英雄の最期

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第17話 来訪者

「ローゼさん、ここにいたんすか? そろそろ食事っす。……もしかしてベッドで寝なかったんすか?」


 本を山積みにして書斎の机で涎を垂らして寝ている私を見つけて、小首を傾げフィーリアが声をかけて来た。


「ほえ⁉ はっ! ね、寝てないよ‼」


 私は慌てて涎を拭って誤魔化すと、フィーリアは苦笑いした。

 危ない……危うく本を読みながら寝落ちするところだった……

 いや、寝ていたか。


 結局昨夜は、あてがわれた部屋がわからなかったので、勘で間取り的にここだろうと思った書斎を見事引き当てたのだ。

 さすが私だ。


「まあ、父ちゃんが許可していたっすから、別にいいっすけど。そんな寝る間も惜しまれるぐらいに読むなんて、ローゼさんてやっぱり変人すね」


「いやいやいや、普通でしょ。人の歴史には伝わっていない事実が多すぎて、本を読むのが止められないだけだよ」


 私はそう嘯くが、フィーリアはジト目で私を見る。

 まだ11歳のくせに相変わらず勘がいいというか、察しがいいというか。


「で、読んでどうだったっすか?」


 ギクッ。


「ええっと、シュタイン王万歳! シュタイン王最強! とか。ドワーフの造る武器は世界一いいいいいいい! とか、大陸の酒一万撰とか……なんか、ね」


「そりゃそうっすよ。表の書棚にあるのはそういう本ばっかっす。自分がローゼさんに見せようと思ってた本は、裏側にあるっすよ。自分か父ちゃんに一言告げれば教えたっすのに」


「ほえっ! そうなの⁉ あっ! でもでも、七英雄のアランの最期が詳細に書かれていた箇所が、酒一万撰にあってビックリしたよ。人類に残っている資料だと、暴王の千の兵に包囲され戦死したって書かれているんだけど、これだと避難する民に矢が降り注がれて、民の盾となって戦死したって書かれてた。……まあその土地の地酒紹介のついでだったけど」


「はへえ、その本は自分読んでなかったから知らなかったっす。七英雄アランの最期についてはシュタイン様の回顧録にもあったすが、何故俺を待たなかったという後悔と無念が書かれたぐらいだったっすねえ」


「ということは、シュタインも大乱に参戦してたの⁉」


 私は興奮してフィーリアの手を掴む。大発見な事実だ。

 大乱終結後に、ドワーフ族が人類史に介入した記録は一切ない。

 どうしてそうなったのかを、一刻も早く知りたい知識欲が私の身体を突き動かす。


「ま、まあ、ともかく食事の後にしてくださいっす。リョウ様は、父ちゃんと庭で朝練とやらをしているので、呼んできてくれるとありがたいっす。ついでにベレニスさんも起こしてくださいっす」


 そう一方的に言って、フィーリアは部屋から出て行った。


 しょうがないかあ。

 ま、後のお楽しみに取っておくとして、英雄アランの最期に思いを馳せる。


 70を過ぎた高齢でも、アランは多くの弱き立場の人々を護ろうとして、華々しくはないけど、らしい最期を遂げたんだ。

 かつて七英雄と呼ばれし時代の仲間のような存在が、この時のアランにいたのだろうか?

 もしいたならどんな思いで、全身に矢を浴びて絶命するアランを見たのだろう。

 護ってくれてありがとうなんて、多分思ってない。

 私なら、きっと仲間を護れなかった己に絶望するかもしれない。

 もしリョウやベレニスが目の前で殺されたら、私は私を保てる自信がないかも……


 ブルンブルンと首を振り、余計なことを考えていた思考を一掃する。

 切り替えよう。こんな気持ちの良い朝なんだし。


 書斎を出て廊下を歩いていると、外から剣戟音が響いてきた。

 覗いてみるとリョウの剣が、クルトさんの斧と激しく打ち合っている。


「ハッハッハ、楽しいぞ小僧! 酒も飲めぬ小僧の分際で、よくぞここまでやりおるわ! だが、まだまだだぞ。儂もドワーフの戦士の端くれだ。小僧ごときに後れを取るわけにはいかんからな」


 と言いつつ、クルトさんは余裕でリョウの剣戟を捌いていた。


「大陸はやっぱり広いな。俺の知らない技術が、まだまだ沢山ある」


 そう言うとリョウは、クルトさんの斧の返しをギリギリで回避すると、懐に潜り込む。

 そのまま脇を駆け抜けると、クルトさんは慌てて振り返る。

 その隙にリョウの剣が、クルトさんの首筋に当てられた。

 だが……クルトさんはニヤッと笑うと、リョウの肩を叩いた。

 その途端、クルトさんは斧を大きく振ってリョウの剣を遠くに弾き飛ばした。

 あんな重そうな武器を、軽々と振り回すなんてドワーフ恐るべし……


「小僧は戦闘中に色々考えておるようだな。今みたいに油断を誘い急所を狙うのは良いが、それで仕留め切れねば命取りになるぞ。小僧の敗因はそこだな」


 クルトさんは、そう言うと豪快に笑った。

 リョウは、フウっと息を吐き呼吸を整えると一礼した。

 そしてクルトさんは、斧を肩に担ぎ直すと私に気づいたようだ。


「朝ご飯の支度が出来ているから、リョウもクルトさんも早く来てくださいね」


「もう、そんな時間か。ほれ小僧、汗を流して来るぞ。小娘、先に行っておれ」


 朝風呂か、いいな。私も食後に入ろう。

 と、思っていたらゲッペンさんら数人のドワーフの戦士が慌てた様子でやってきた。


「クルト! それに人間の小僧、ちょっと来てくれ」


 なんか、あったのかな?


「ローゼは先に朝飯を食べていてもいいぞ」


「私も行くよ。気になるし」


 ゲッペンさんたちは、別に私がいるかいないかはどうでもいいみたいだ。


「それで? 何があった」


「ザガンから使者が来おったわ。人間の癖に案内もなく、我らが里に辿り着くとはのう」


「相手は何人ぞ?」


「1人は男で騎士風じゃな。もう1人は黒フードを被っているが女じゃな。どっちも人間よ」


「ふむ、ならば敵対ではなさそうじゃな」


「それが、小僧に会わせてほしいんじゃとよ。まだ何の用かはわからぬ」


 リョウに? なんだろ?

 私たちではなくリョウだけにというのも気になるけど、人間に知られていないドワーフの隠れ里にリョウがいると知って、わざわざ来訪するってどういうことだろう?


「リョウ、心当たりある?」


「いや、特にないな」


 不思議に思いつつ、私も一緒に行くことにしたのであった。

 

次回第18話「伯爵領からの依頼」

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