エピローグ
ビオレールより遠く離れたレアード王国の小さな街に、一組の冒険者夫婦が居着いた。
かつてビオレールで冒険者として活躍していたが、ある事情でレアード王国に移住したのである。
「よお、聞いたかい? ベルガー王国のビオレールって街で領主が殺されたらしい。あんたらベルガー王国の出身だろ? ビオレールってどんな所なんだい?」
「そうだなあ。北は人の立ち入りを許さないスノッサの森、南は険しいボルガン山地、南東は広大なとこしえの森、そして西は平原が広がっている。東はダーランド王国との国境で、その先には大森林が広がっている」
酒場のマスターにそう答えると、冒険者の夫はエールをグイッと呷る。
妻もエールをゴクリと飲み、夫に同調した。
そして2人は話を続ける。
2人の会話は周囲の冒険者たちの耳にも入り、やがて酒場の喧騒に溶け込んでいったのだった。
「しかし犯人がわからないって、ベルガー王国は大丈夫なのかい? また戦争になるとか勘弁だぜ」
マスターは、ダーランド王国の謀略説を信じているようだった。
流布された噂は尾ひれが付き物。
そんなマスターの話を受け、冒険者の妻である女がエールをグイッと呷って答える。
「謀略じゃないから大丈夫よ。女癖の悪いハインツ伯爵だったもの」
「おや? 何か知っているのかい? 知っているのなら教えておくれ」
マスターは情報を聞き出すため、女の話に乗った。
だが夫婦は時間を確認すると、マスターからの奢りの酒を断り席を立つ。
「アンナ、そろそろ宿に戻るぞ。明日も早くから仕事だ」
「そうね。マスターさん、また今度ね。じゃあ帰りましょうか、クロード」
クロードと呼ばれた冒険者は、マスターに手を挙げて酒場を後にする。
「なあ、アンナ。ハインツ伯爵の件だが…」
「あら? 私たちにはもう関係ないもの。それとも、ビオレールに戻りたい? バルドさんやディアナ……クスッ、それに魔女のローゼちゃんと傭兵クンも元気かしらね?」
「いや、今更戻ってもな。ここで頑張ろう」
クロードはアンナの手を引き、帰路につく。
月明かりの夜道。
背後の妻の口が、夜空に浮かぶ三日月のように歪んだのを知らずに。
お読みいただき、心より感謝申し上げます。
魔女ローゼ、傭兵リョウ、エルフベレニスの物語はまだ続いていきます!
彼らの新たな冒険がどのような展開を迎えるのか、どうぞご期待ください。
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