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【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~  作者: ハムえっぐ
第1章 復讐の魔女

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第31話 もう1人の復讐者

 ベレニス対ジーニアの戦いが始まった時、私はディアナと向かい合っていた。


 遠くに見えるは、意識を失い倒れたバルドさんとヴィムの姿。

 そして、リョウがオルタナさんと戦いを繰り広げている姿がある。

 血を流し、肩で息をするリョウの姿に心が締め付けられる。


 戦況は絶望的に思えた。


 ディアナの魔法を防ぎながら、その隙をついて魔法陣破壊を試みるが、ことごとく躱されるか相殺されてしまう。


「あらあら、やっぱりこの程度ね。いつまで無駄な抵抗をするのかしら? もうそろそろ諦めて死んでほしいわ。そうすれば私は死なないで済むのよ? ローゼちゃん」


「……嘘ですね」


「……何が?」


「貴女は自分が死のうとしてる。……ベレニスから教えてもらったんですけど、言葉は魔法の詠唱と同じ。綻びがあれば魔法は発動しない。……貴女の言葉は、嘘だらけです」


 ディアナは目を見開き、私の言葉に反応を示した。


「だから! 何が嘘なの? 貴女に私の何が解るの⁉」


 ディアナの上空を旋回する本が眩い光を放ち、強大な魔力弾を撃ってくる。

 それを魔力障壁で防ぎつつ、私はこの贄の魔法陣が何をもたらすのかを推測する。


 私はディアナを倒そうとしているのではない。

 彼女を救いたいのだ。

 だから、説得を試みる。


 私は言葉を紡ぐ! 彼女の心に響くように……

 ディアナに私の想いが届くことを願って……


「私が存在していることで、この魔法陣は効果を発揮する。……いや、私がディアナさんを殺すことで完成するんじゃないですか? そして、この贄の魔法陣は貴女を生贄にして発動する。……魔女ディルによって、私という10年前に病死したことになっている存在が、本当は生存していると世界に認知させるための魔法陣。……それが贄の魔法陣の正体なんじゃないでしょうか?」


 ディアナは攻撃の手を止める。


「ウフ、ハハ、アーッハッハ! 中々頭が回るじゃない? さすがはあの糞魔女の教え子よね。でも、50点ってとこね」


 そして、高々と笑った。


「たしかにこの魔法陣は、ローゼちゃんの生存を世界に認知させるためのものよ。でもそれだけじゃないわ」


「ノエルのため……そしてディルへの復讐のためですか?」


 ディアナは黙った。

 それは肯定を意味するものに他ならない。


「魔女ディル! 書物でしか登場しない魔女の分際で! ノエルがやった偉大なる暗殺をなかったことにして! ふざけないで! ディルとかいうわけわからないイレギュラーで病死にされる? ……ノエルはディルの改竄された世界の中心にいた影響で気が狂って自害した。許せない許せない許せない! でもディルはどこにいるかわからない。占ってもディルの仕業としかわからない。どこにいる? どこに隠れてる? 占って占って占ってようやく出たビオレールという地名。そしてついに魔女ディルの教え子を名乗るローゼちゃんに出会った! ええ! 貴女は死なせないわ! 私の復讐は、あの糞魔女の改竄を打ち消して、矛盾を世界に示すのだから!」


 ディアナの瞳に狂気の色が宿る。

 本は再び光を放ちだす。その魔力量は膨大で……


「勝手なことを言ってくれるけど、私は両親を貴女たちの下らない理由で殺された。これ以上の勝手を許すわけにはいかない!」


 私は杖をディアナに向けると、周囲に幾重もの魔力障壁を展開したのだった。

 それからは、私とディアナの魔法の打ち合いだった。

 だが贄の魔法陣というハンデがある以上、防戦を強いられるのは私だ。

 このまま消耗戦を続ければ私は敗北する。

 それを避けるにはこの言葉を紡がなくてはならない。

 魔法の詠唱のように繊細で、それでいて強力で戦いに決着がつく一言を。


「さっきの貴女のセリフ。あれも本音ではないんでしょ? ディアナさんは、ただノエルに生きていて欲しかっただけ。ただ幸せに2人で生きていたかった」


 ディアナの魔力弾が私の魔法障壁を貫き、右肩に直撃する。

 痛みで思わず膝をつきそうになるが、歯を食いしばり耐える。


「私は、貴女もノエルという両親の仇についても何も知らない。でも、貴女の大切な人だったのだと推測する。ノエルとの想い出が貴女にとってとても大事な、そして幸せな記憶なんだということも……」


「知ったような口を聞くな!」


 ディアナの叫び声と共に魔力弾が私を襲う。

 弾き飛ばされた私は地に倒れ伏した。


 ***


 いたぶるように、漆黒の剣でベレニスの上着を少しずつ斬り裂いてゆくジーニア。


 手枷を嵌められ、レイピアを振るうことも魔法を詠唱することも出来ないベレニス。

 それでも、キッと鋭い視線で睨みつけることで抵抗する。


「キヒ♥ 良いねぇ、そのほっそい手足に白い柔肌、そしてちっこいお胸具合がたまんないねぇ♥ ほらほら、早くごめんなさいジーニア様、許してください。って言わないとぉ、もっと虐めちゃうぞぉ?」


 ジーニアの剣が、ベレニスの胸元から臍のあたりまでなぞる。

 ビリッと音がして、服は裂け、そこから白い肌と青い下着が見える。

 ギリリと奥歯を噛み、恥辱に耐えながらもベレニスは視線を逸らさない。


「ホント良いねぇ♥ あんたみたいなプライドが高そうな女を屈服させるのは最っ高♥」


 ジーニアは剣先をベレニスの臍にあてると、ぐりっとその切っ先を押し込む。


 痛みに顔を歪めるベレニスの表情を見て、口笛を鳴らすのだった。


「……あんたみたいな人って不思議でならないわ。その剣の腕前と魔法の腕前があるなら、冒険者として有名になりそうなのに。……何でこんなことをやってるの?」


 蹲りながらベレニスはジーニアに問う。


 その質問が意外だったのか、ジーニアは一瞬キョトンとした表情を見せるが、すぐにニヤリと笑い返答する。


「キヒ♥ 決まってるじゃん。……人間が大っきらい……人間が大っきらいだからだよ‼」


 ジーニアの脳裏に浮かぶは人が人を殺し、その日の一食分にも満たぬ糧を得るために、命の灯火を消していく。

 多くの命を犠牲にしてでも生きたいと願う、人々の浅ましい姿。


「そっ……なら、私の真逆なのね。『風の精霊よ鋭利な刃となりて我を縛る手枷を外せ!』」


 風の魔法により手枷は真っ二つに切断される。


 自由になったベレニスは、距離をとってレイピアを構え直す。


「ちっ、まだそんな余裕あったのかよ。だけどさあ、距離を取っても詰めて平伏せさせれば良いだけだしぃ♥」


 ジーニアが瞬く間に目の前にやってくる。

 さっきと同様に何が起きたかわからず地に叩き伏せられるベレニス……のはずだったが……


「はあ⁉」


 叩きつけられたのはジーニアだった。


「テメエ! クソチビエルフ! 何しやがった‼」


 倒れ伏すジーニアの首元に、レイピアの剣先を当てながらベレニスは嘆息して告げる。


「あんたが使った魔法って土魔法と風魔法の応用でしょ? 土を揺らせてバランスを失わせて風で加速させるってやつ。だから私は風の精霊にこうお願いしただけ。『私を護って』って」


「はあ? 何じゃそりゃ! そんな意味わかんねえのであたしの魔法が……⁉」


「……私は人間が好きよ。里から出てすぐにローゼと出逢えて良かったわ。見てて飽きないし。……ついでにおまけに傭兵もね。その差があんたの敗因よ♪」


 ドヤァとベレニスは胸を張る。


 そこでジーニアは悟る。目の前の小さきエルフがただのエルフではないと。


「テメエ……ハイエルフって奴か。精霊や女神に近い存在ってか? ヒャハ♥ 傭兵やお姫様だけじゃなくテメエにも敗れたのも納得よ。ま、あたしはここまででいいわぁ。生きててなんぼのこの人生よ」


 ジーニアの身体が光に包まれ、消える。

 転移魔法で逃亡したのだった。


「はあ? 逃げるの? ふざけないでよ! ちょっと、どうしてくれんのこの服! 高かったのよこれ!」


 ベレニスの絶叫が響き渡るのだった。

 

次回第32話「物語のように」

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