Lo96.アンコロモチさんのパーフェクト神術教室
そんな感じで(どんな感じ?)で必然の流れとして、これから一週間神帝様のお屋敷で修行編することになったんですけど。
……前みたいな地獄のブートキャンプはやだなぁ。
さて、ちょっと知りたいことが色々あるんですよね。この際聞いちゃいましょうか。
「私よく分かんないんですけど、【神気】の他にも【魔力】とか【闘気】っていうエネルギーみたいなのありますよね?」
「あるねー」
「あれって結局何が違うんですか?」
はい。この世界に来てから聞いた概念です。【神気】【魔力】【闘気】……なんか色々あるんですけど、なんか違うんですかね? 全部同じじゃないですか?
なんでこんなに種類あるんですかこの世界?
「よくわからんが似たようなもんじゃろ」
「全然違うでござるよー」
サクちゃんとあんころ餅さんが正反対の答えを言います。いや、どっちなんですか!?
「ほら、こういう雑なところがサクちゃんが教えるのに向かないところでござる」
「別に知らんでも生きていけるからのぅ」
なるほど。わからないことがあったらあんころもちさんに聞いた方が良さそうですね。
「モチさんは違いが分かるんですね」
「違いの分かるあんころ餅じゃな」
「ふむ、それでは説明するでござる。まず【闘気】とは生命力をパワーに転化したものと言われているでござる。誰もが生まれつき持っているものでござるが、自在に使えるようになるには身体を鍛える必要があるでござる。闘気が使えてこそ一流の戦士といえるでござるな」
ふむふむなるほど。ようするにマッスルパワーですか。私には無理ですね。
「そして【魔力】とは魔法を使う為のエネルギーでござる。誰もが持っている力なのでござるが、魔法を使えるようになるには一定以上の魔力と素質が必要でござる。魔法が使えるのが魔法使いでござるな」
ふむふむなるほど。ようするにマジカルパワーですね。よくわかりません。
「そして【神気】とは……」
「ふむ、神気とは……?」
「【神の力】と云われているでござる」
「つまり……ゴッドパワーですね?」
「そういうことでござる」
ふむふむなるほど……いや全然分かりませんよ!?
「あの、神の力って具体的に何ですか?」
「ふむ、神気はとりわけ不思議な力でござる。生まれつき持っている人もいれば、持ってない人もいる。後天的に身に付ける場合もあり、不思議なことが出来るでござる」
「あの……もうちょっと具体的に……」
「改めて説明するとよく分からんでござるな……神気って何でござるか? チーちゃん神は神様なのできっと分かるはずでござる!」
「いや分かりませんよ!?」
質問を質問で返されました! 結局よくわからないようです!
「こほん。説明を続けるでござる。魔法は基本的に1人1種。炎の魔法使いは水の魔法を使えない。そういう風に決まっているのは知っているでござるな?」
「あ、そうなんですか? 知りませんでした」
「ふーん、そうなんだ……?」
全く知りませんでした。反応を見るにユーくんも知らなかったようです。なんか魔法ってもっと複数の属性が使えて当然のものかと……
意外と自由度が低いんですね?
「その反面、神気は『何でも出来る』のでござる」
「え、何でも出来るんですか!?」
「大体何でも出来るのぅ。魔瘴を浄化するのが主な使い方じゃが、空を飛んだり武器を作り出したりもするしのぅ」
じゃあ私もその気になればサクちゃんみたいに空を飛べたりするんですね!
「とはいえ、神気で出来ることは大体決まっているでござる」
「え、何でも出来るんじゃないんですか!?」
「なんでも出来るけど、人によって得意不得意があるってことでござる」
「得意不得意ですかぁ」
「ここからは拙者の独自理論になるでござるが、神気の使い方……すなわち【神術】には主に3つに大別出来るでござる。すなわち【強化】【感応】【奇跡】ござる」
「らいず、せんす、みらくる?」
急に横文字が出て来ましたよ!? よくわかりません!! そういう専門用語増やさないでくださいよ!!!
サクちゃんは説明を聴きながら、「モチはそういう風によく分からん言葉を作るのが小賢しいのぅ」とボヤいています。
はい、全く同じ感想です。アラサーの頭は柔軟じゃないので、よくわかりません。
「【強化】は自身を強くするやつでござる。肉体を強化したり、武装を強化したり。まぁやってることは純粋に戦士でござるな」
「闘気と似てるね」
「まぁ闘気と似てるでござる。違いは魔瘴に強いところでござるな」
ふむ、なるほど。マッスルゴッドパワーですね。分かります。
「【感応】は感覚が鋭くなり、見えないものを感知する術でござる。感じるだけなので神気の消費は少ないでござるが、使うにはセンスが必要でござるな」
「あー、それも神術だったんだ」
思い当たるのはシャイナスさんのことです。目の見えないシャイナスさんが見えないものを色々見てるのも、神術だったんですね。
センスが必要みたいですし、なんか難しそうです。ゴッドセンスですね。
「最後に【奇跡】は一番神術士っぽいでござるな。神気を消費して色んな奇跡を起こすでござる」
「えーと、具体的には?」
「傷を癒したり、空を飛んだり、結界を作ったり、台所の汚れを落としたりでござるな」
「台所の汚れ!? 最後だけめちゃくちゃ庶民的ですね!?」
「拙者の得意とする神術でござる」
「えーと、それってすごいの?」
「初代神帝様にも真似出来ない凄い術でござる」
「確かに使えたら便利ですけど!?」
どうやら台所の汚れを落とすのは相当高度なことだそうです。いや、ゴッドパワー使ってやることですかそれ?
まぁ……要するにゴッドミラクルですね!
「神術は何でも出来るけど、それが修行する上で罠なんでござる」
「罠なんですか?」
「実際は何でもやろうとするより得意なことを伸ばしまくった方が良いということでござる」
「えー、でも何でも出来た方が良くないですか?」
「例えば、【運動】と【料理】と【音楽】と【絵画】を全部できる環境があるとして、それらを全部プロ並みになるまで練習する時間あるでござるか?」
「それなら……絵だけ描きたいです!」
「そういうことでござる」
そういうことですか!分かりやすいですね!
要するに特化した方が良いんですかね?
「じゃあどうやって修行すればいいの?」
「それにはまず、自分がどういうことがやりたいかを明確にするでござる」
「自分のやりたいこと?」
「例えば、サクちゃんは鬼強でござるけど、【強化】特化の戦闘型でサポートには全く向かないでござる」
「ふむ、なんでじゃろ?」
「それは【神術】は『心の有り様』に大きく左右されると言われており、サクちゃんが他者へのサポートを全く考えてないからでござるよ」
「『心の有り様』ですか……」
「チーちゃんがすごい量の神気を持ってるのに攻撃力はほぼ無いのってそういうこと?」
「よく分からないけどそうでござる」
ふむ、なんとなく分かります。要するに向いてないってことですよね?
「むう、それじゃ儂が自分勝手みたいじゃろ?」
「めちゃくちゃ自分勝手でござる」
「酷い孫じゃのぅ」
サクちゃんがブーたれます。なるほど。最強の神術士とか言われてますけど、別に何でも出来て万能ってわけじゃ無いんですね。
「拙者は逆に戦闘は苦手で、その代わり他の物質を強化したり干渉することが得意でござる。台所を綺麗に出来るのもその一環でござるな」
戦闘苦手だったんですかこの子。ござるとか武士っぽい口調してるのに。
「とにかく。まずはやりたいことが決まらなければ、どこをどう伸ばすのか分からないでござる。強くなりたいのか、台所を綺麗にしたいのか……」
いや、台所は神気無くても自分で掃除出来るじゃないですか! 今そこを鍛える必要あります!?
ユーくんは少し悩んで言いました。
「やっぱり……必殺技だね! 必殺技を強化したい!!」
ふむ、なるほど。ユーくんはやはり必殺技と来ましたか。では私がやることは決まりですね。
「ならば私はその必殺技をサポートします!」
必殺技といえば合体技ですよね!
ござるござるめんどくさいでござる。
ござるのゲシュタルト崩壊でござる。




