Lo90.温泉の旅の終わり。ブートキャンプの終わり。
「はふぁ~~~」
気の抜けたような声があたりに響きます。私は温泉に入ってます。ハルテン7日間の温泉旅行。最後の宿場町での温泉です。
全く昼間は酷い目に遭いました。これもウェダインさんが鬼なせいです。鬼畜!
そう思ってるとウェダインさんがやってきて同じ湯船に浸かりました。
「よう、元気か?」
「おかげさまでふにゃふにゃです」
「なんだそりゃ」
あなたのせいでふにゃふにゃなんですけどね。ふにゃふにゃ~。自慢のケモ耳もケモしっぽもへにゃりです。
「今日で旅も終わりですね。とりあえずやれることはやりましたけど……これで死ななくなりましたかね?」
「わからん。だがちょっとはマシになったはずだぜ」
「良かったです……」
ウェダインさんが認めてくれたので、たぶんおっけーなんでしょう。知らないですけど。
「チーちゃんおつかれー」
「ユーくん、ココッテちゃんもお疲れ様です~」
ユーくんとココッテちゃんも湯船に入ってきました。毎度のことながらどきどきしますね……二人ともまだ子どもの身体なのでとてもえっち……いや、なんでもないです!
ココッテちゃんはお腹に穴が空いてるので、なんかテーピングして塞いでます。テープの素材は魔物の皮っぽいやつですね。伸縮性があり丈夫だそうです。触るとちょっとぷにぷにします。
この素材、アースワームの皮とか言われてます。途中の宿場町で買いました。大地の蟲ってもしかして……ミミズ? ハイセイカのダンジョンでサクちゃんが倒したあのミミズですか?
いや、アレ自体は倒した後消えましたし、ココッテちゃんが使ってるのはアレではなくて一般の魔物ミミズなんでしょうけど……ミミズの素材、ちゃんと実用で使えるんですね……でも倒しても剥ぎ取りしたくないです……
「チーちゃん怪我とかない? 大丈夫?」
「だいじょうぶですー」
「そっかぁ」
「そっかで済ますのかよ」
ウェダインさんがツッコみます。いや、別にいいじゃないですか。怪我が無かったんですから。
「こいつの耐久力、異常だぜ。結構な勢いでこけまくってもすぐ立って走るし、石投げてぶつけても大して怪我してねぇし」
「いや、さすがに石ぶつけられたら痛いですよ!? 何言ってるんですか!?」
この人ほんと容赦なくゴンゴン石をぶつけてきましたからね! 痛かったです!! 鬼畜!!!
「あー、やっぱ見た目によらずチーちゃん結構丈夫なんだね」
「え、私はか弱い子どもですけど……?」
「ココッテちゃんにしょっちゅう攻撃されても痛がるどころか喜んでるからおかしいと思った」
「えっ、それなんか私ヘンタイのドマゾみたいじゃないですか?」
「ん」
私がそう言うと、ココッテちゃんは頷いて肯定の意を示しました。いや、肯定しないでくださいよそこは! 私はマゾじゃなくて、あくまでココッテちゃんだからいいんですよ!?
「それよりチーちゃん! 昼間の試合すごかったよ!」
「……へ? あれですか? ふつーに負けましたけど」
「実質勝ちだよ!」
いや、別に勝ってないんですけど……完敗ですけど……でもまぁ、途中までは良い勝負っぽかったですし、まぁ実質勝ちかもしれませんね!
ユーくんが言うならそういうことです!(幼女に甘い)
「ウェダインさんはどうやってチーちゃんをあそこまで強くできたの!?」
「いや、元々こいつ結構速いんだぜ。めちゃくちゃ鈍臭いせいでそう思えないがな」
「え、そうなんですか?」
私が速いとか初めて言われましたけど……? 頭にクエスチョンマークをつけながら疑問に思ってるとウェダインさんが溜め息をつきながら話し始めました。
「そもそもこいつの身体能力は最低でもDランク冒険者以上あるのは確定してたんだぜ? ギルド入った初日にカルマッセ相手に無傷で勝ってただろ」
カルマッセさん? いや、なんか懐かしい名前が出てきましたね。たしかギルド入ったときに絡んできたモヒカンの冒険者の人でしたね? 見かけによらず小剣とかいう繊細そうな武器使う人でした。
「えっと、あれワザと負けてくれましたし完全に接待試合ですよ?」
「そりゃ最後はな。でもそれ以外では普通に攻撃見切ってたし避けてたろ」
「チーちゃんすごかったよね」
そうですかねぇ……? 私が幼女ですから、あからさまに手加減してましたよねアレ。
「まぁ、実際追い詰めてみたらDランクどころか瞬発力だけならBランクに近かったわけだが」
「え、Bランクですか? 私が??」
「瞬発力だけな。パワーは知らんぜ」
「いやいや、そんなことないでしょう? 現に私、Bランクのドレンさんについてこれなくてボロ負けしてましたし。最後のやつなんて全く反応出来なかったですよ?」
「どうみても反応してたじゃねーか」
「反応してたよねぇ」
いや、なんかモロに攻撃受けてぶっ飛ばされましたけど?
「なんだろう。こいつの自覚の無さちょっとムカつくんだぜ?」
「チーちゃん、ほんとそういうところあるよね?」
「ご、ごめんなさい?」
なんかよく分かりませんが怒られました! ごめんなさい!
「まぁ、分かったことはこいつは瞬発力特化型だ。反面スタミナは全然ねぇ。完全にネコ系の獣人寄りだな」
「え、瞬発力そんな高いですか私? そんなこと言われたの初めてですよ? 私、50m走で11秒台の遅さですし」
「いや遅すぎだろ。こいつマジでどういう生活してたんだよ」
……ん? よく考えたら鈍足だったのは前世の話ですね? もしかして、この身体になってから関係ない?
というかネコ系獣人寄りって言われましたけど、私ってネコだったんですか!? 犬だと思ってました!! 種族設定フワフワですね!?
「何回も走らせてたらみるみる速くなっていったぜ。こいつ走り方全然知らねぇ」
「あ、そうだったんですか?」
「なんかチーちゃん、ぽてぽて走るよねぇ」
「ぽてぽてって……?」
「ビュンビュン走るように指導したぜ」
「ビュンビュンって……?」
よく分かりませんが、ウェダインさんがコーチしてくれたことでなんか速く走れるようになったみたいです?
「でも我ながらスタミナはあると思ったんですが」
「スタミナにも色々あるが、少なくとも持続力はねーな。走り続けることは出来てねぇ。休んでたらすぐ回復するから錯覚してるだけだろ」
「あ、そうかもしれません」
そういえばすぐバテてたかも……この身体になってからすぐ眠くなりますしねぇ。
私は自分の身体を見回します。小さな手。ぷにぷにの肌。ケモ耳。貧乳。幼女らしいイカっ腹。
……もしかして、この身体結構つよかったりします? このかわいい幼女の見た目で? かなり獣人パワーあったりします??
完全に神気頼りで身体能力皆無だと思ってたので自分でもビックリしてますが……よく考えたら前世の感覚を引きずってるだけでは?
ともかく、この素晴らしい身体を与えてくれたアワシマ様に更に感謝する理由が増えましたね!! ありがとうございます!!!
「まぁ、これで懸念は少し消えたろ。こいつは護るべき後衛だが、ぶっちゃけそんな護らなくていい。どんくさそうに見えるが、生存能力はかなり高い」
「意外と結構避けるし、当たっても大して怪我してないもんね」
「そ、そうですかね~?」
「安心して後ろをまかせられるね!」
ユーくんの屈託の無い笑顔に私は浄化されます。うむむ、こう期待をかけられちゃ応えないわけにはいかないじゃないですか。
「ま、まかせて下さい! 後ろはきっちり護りますよ!!」
「あ、やっぱちょっと心配になってきた」
「どっちですか!?」
期待されてるのかされてないのか分かりません!
「ボクもね。この数日で結構強くなったよ?」
「あ、ユーくんも特訓してましたもんね」
「えへへ、チーちゃんには負けないからね! ボクも勇者になるんだから!」
「はい!」
どうやらユーくんもこの旅で自信をつけたようです。私とは別メニューで魔法とか特訓してたみたいですね。
魔法を使えるようになってからまだ日数が浅いユーくん。一体どれだけ伸びたのか楽しみです!
あとココッテちゃんは……あ、親指をグッと立ててるのでなんとなく大丈夫そうです。まぁこの子元々強いですしね。レベル6ですし。
「しかし……不思議です。ウェダインさんはどうしてこう、私たちに親切にしてくれるんですか?」
「あ、それボクも聞きたかった! なんで?」
ウェダインさんにそう聞くと、ウェダインさんがあからさまにダルそうに言いました。
「それ、言わなきゃなんねーか?」
「言ってほしいです!」
「……めんどくせーから言わないぜ」
「いや、なんでですか~!」
私が突っ込むと、ウェダインさんはふてくされたようにそっぽ向きました。
むむむ、ツンデレさんですね?
チーちゃんはネコ(意味深)だったんですね!




