Lo84.嫌です!子どもとして扱ってください!!
お風呂から上がってお部屋に戻ってきました。これからユーくんにめちゃくちゃ詰められる予定です。私は正座をしています。
元々ユーくんを立ち直らせるつもりだったのに、なんでこうなってるんですかねぇ?(困惑)
あ、このお部屋きれいなお花が生けてありますね。風情あるなぁ(現実逃避)
ココッテちゃんも私の話に興味あるのかないのか分からないんですけど、ぼえーっとしながら部屋の中にいます。さーて、どこから話しましょうかね……
「えっと、まずは私が死んでこの世界に来た経緯から話しますけど」
「え、死んだってどういうことチーちゃん?」
「へ? あー……もしかしてそれも話してなかったですか?」
「全然聞いてない」
ユーくんがふてくされたようにほっぺたを膨らませます。たしか……ユナさんには話したんでしたっけ? あら、私もしかして自分のこと全然ユーくんに話してない? ユーくんの中でかなり謎の幼女になってますか私?
だから今、こうやって詰められてるんですね~(今更
「まぁ色々あって前の世界では死んじゃったんですよ私。それで神様に生き返らせて貰ったんですけどね」
「いや、軽いよ! 色々って何!?」
「あー、ホントにどうでもいい理由で死んでますからね……自業自得とゆーかなんとゆーか。聞きたいですか?」
「聞きたい」
あら、結構ぐいぐいきますねユーくん。もしかして今まで聞きたかったのを我慢してたんでしょうか?
「聞きたいならしょうがないですね」
「あ、別にトラウマとかなら無理しなくていいよ?」
「いや、しょうもない理由で死んでちょっと恥ずかしいだけなので普通に話せます。ただの過労死です」
「かろうし?」
「疲れすぎて死ぬってことです。働きながら趣味で絵を描いてたんですけど、あんまり寝てなくて……なんか気付いたら死んでました」
会社自体は別にブラックってほどじゃないんですけどね? 残業時間は月20~40時間くらいのいたって普通の会社です。
でも家帰ってからずっと絵を描いてて真夜中まで……徹夜もザラにあったし、普段の睡眠時間でも深夜3時まで当たり前に起きてましたからね。
睡眠負債がたくさん溜まって……まぁ死んじゃったみたいですね。実感ないですけど。
「死んじゃうくらいなんて……どうしてそんな無理したの?」
「んー、なんでしょうかねぇ? 色々ありますけど……まぁ、結局は商業で漫画をやっていく自信が無かったんでしょうね。あ、商業っていうのは絵を描くプロフェッショナルな人たちのことです」
「え? チーちゃんあれだけ絵上手いのに?」
「まぁ……当時はそこまで絵が上手くなかったっていうかなんというか。いや、絵の上手さが問題じゃないですね。結局は度胸が足りなかったんです」
「そうなの? チーちゃんって結構度胸あるように思ってたけど」
「いや、ヘタレですよ私。今の私の行動力は『一度死んでるから』っていうのもあるんですよ。向こうで生きていた時の私は流されるだけ流されて、最後まで挑戦できなかったヘタレです」
そう言って私は溜め息を吐きます。馬鹿は死ななきゃ治らない、と言いますが私もそんな感じですね。
死んでから自分の出来なかったことを後悔して、今現在を生きているんです。
「絵の世界は厳しくて……自分の能力が全てなんですよ。稼げる人なんて一握り。売れてる作家さんは何徹も出来る狂人ばかりで、描くスピードも私よりずっと速いですし、絵もずっと上手いです。そういう修羅が切磋琢磨してる世界で……自分のような凡人が勝負できる気がしなかったんですよ。美大にも落ちましたしね。もう絵を捨てて一般職行くしか無いだろうと思ったんです」
「えっと……よく分かんないけど、大変そうなことは分かった」
「いや、それも結局妄想ですよ。実際私は絵のプロじゃないんですから、絵のプロのことを知った風に語る資格ないんです。だって何も知らないまま、挑戦もしなかったんですから。
本当は、挑戦してみたら案外プロで通用したかもしれません。でもそれが出来なかった。それでも諦めきれず、ずるずると趣味の範囲でと言い訳しながら絵を描いてたんです」
「……どうして?」
ユーくんが愕然としながら聞いてきます。そうですね……端的に言えば結局は……
「結局はお金の問題です!」
「ええっ!? お金なの!?」
「だって、普通の正社員の方が安定してお金稼げるじゃないですか! 極端な話、5000兆円持ってたらまともに働かずに絵をたくさん描いてました!!」
「そうなの!?」
「そうです!!!」
そう、結局はお金の問題なのです。年収です。生きていくためにはお金が必要なのです。
だって、正社員やってた頃の私の年収って500万円くらいありましたよ?(残業込) 税金取られて350万円くらいになってましたが。うぅ、高額な社会保険料が憎い。それでも安定性においては、絵師の比較にならないんですよ?
高収入の男と結婚して専業主婦になるって選択肢もあるんですけど、なんでしょうかねぇ……何故か無意識に除外してました。たぶんあんまり恋愛とか好きじゃないんでしょうね、私。ソロ体質なので。
もし結婚するなら幼女と結婚したいとか思ってましたから、「お金稼ぐのは自分」って思ってたのかもしれません。
そんな都合の良い幼女現れませんでしたけど。
「まぁアレですね。私の言いたいことは、『最初から無理だと思っても諦めずに挑戦しましょう。後で後悔するから』ってのと『夜中はしっかり寝ましょう。死んじゃうから』ってことですね。そういうスタンスで今を生きてます」
「だからチーちゃんって結構チャレンジャーなの?」
「まぁ、自分の命にかかわることじゃなければ挑戦してみたいとは思ってますが、ほどほどですね。基本ヘタレなので」
「ほどほどってレベルかなぁ……?」
まぁ、今でもヘタレはヘタレなんですけどね。怖いもんはこわい。それは仕方ないです。
「まぁ私の前世の話はこのくらいにして……えっと、次はこの世界に来た経緯ですね。聞きたいですか?」
「聞きたい!」
「なんか死んだらよく分かんない空間にいて、なんか神様っぽいのがいて、『魔王を倒してこい』とか言われて飛ばされてきました! そしていきなり迷子になって死にそうになりました!」
「ぜんぜんよくわかんない!」
「私にもよく分かりません!!」
そう。よく分かんないんですけどなんか来ちゃったんですよねぇ。強制イベントです。仕方ないね
「えっと、じゃあやっぱりチーちゃんって神様に選ばれた『勇者』なの?」
「勇者……ですか。なんかそう呼ばれたような気もしますけど、結局よく分かんないですねー」
「え? なんで?」
「そこは神様の説明不足としか……というか選ばれた基準もよく分かりませんし」
「そういうのってきちんと教えてもらえないの?」
「神様ってそういうものなのかもしれません。ちなみに異世界に飛ばされた最初の時点では、今のように神気とか不思議な力は全く使えませんでしたし、教えてもらえませんでしたよ? ガチで無力で非力な一般人でした」
「ひどくない?」
「いえ、ひどくないです! 代わりに【お父さん棒】(お遍路巡礼用金剛杖:ひのき製:全長130cm)は持たせてくれました!」
「えっと、それってなんか意味あるの?」
「なんか良い感じの長さの棒で、私は好きです!」
「そうなんだ……」
まぁ、これを使った棒占いに従って歩いた結果、ユーくんにも会えましたしね。間一髪ですね……これ普通に運ゲーじゃないですか?
「あとまぁ、私は個人的に推測してるんですけど。私の他にもこの世界に送られてきた転生者とかいる可能性もありますし、そっちも『勇者』かもしれませんね」
「え、チーちゃん以外にもいるの?」
「いや、仮定ですよ仮定。もしいてもその人を私は『勇者』だと認める気は無いですけどね」
というか、一人だけ思い当たる人物がいるんですよね。ユーくんの父親……たしかユナさんの情報が正しければ、『転生者』ですよね? 人格面はともかく、強さだけは強いとか言ってましたし。本来の『勇者枠』はあっちの可能性があります。まぁ、前提としてユナさんの情報が正しければの話ですけど……すぐ嘘吐きますからねあの人。
そうだとすると、私は保険みたいなものです。ただしめちゃくちゃ弱い保険です。クソ雑魚勇者保険です。
「そうなの? 神様に選ばれた『勇者』でも?」
「私が個人的に認めないだけです。勇者は強く正しく優しいのです。強いだけじゃただのバーサーカーです!」
これはドラゴンクエストシリーズで代々勇者をやってきた私としての意見です。逆張りで『実はめっちゃ悪人の勇者』とか出されても困ります。勇者パーティーからメンバーを追放するような勇者なんて邪道ですよ邪道。
私は正統派で王道の勇者が好きなのです! ようするにニチアサのヒーローやプリキュアこそ勇者です!
「だから、この世界で私にとっての一番の『勇者』はユーくんです! 異論は認めません!」
「……そっかぁ。チーちゃんの考える『勇者』って、そういうことだったんだね」
「そういうことです!」
私は言い切りました。ユーくんの表情が少し和らいだ気がします。良かった……なんかよく分かんないんですけどそう思います。
さて、それはそれとして。ユーくんがいきなり突っ込んだことを聞いてきました。
「ところでチーちゃん。さっきからずっと思ってたんだけど……チーちゃんって本当は何歳?」
「げっ、そ、それも答えなきゃダメなんですか!?」
「うん。だって、前世では働いてたりする年齢だったんでしょ? 少なくとも子供じゃないよねって」
「ぐぐぅ、いい推理力ですね探偵さん……」
「犯人さん、白状して?」
はうう、遂に聞かれてしまいました。私の年齢……そうでした、だから今まで前世の話はユーくんにしてなかったんでした。年齢がバレるので……はい、うっかりしてましたね!
ユーくんがニコニコしてる圧力に負けて、とうとう私は白状しました。
「……にじゅーはっさいです……」
「え?」
「にじゅうはっさい、28歳です! ココッテちゃんの2倍の年齢です! そしてユナさんより年上です!!」
私はとうとう言っちゃいました。ユーくんはそれを聞いて、目を見開いて驚いてます。
「28……思ったより……うん……」
「な、なんですか?」
「いや、どう見てもお母ちゃんより年上には見えないなって……」
「そりゃ、前世とは姿違いますからね! 今のこの身体は神様に作ってもらったものです!!」
「いや、サクちゃんみたいな年寄りもいるし、姿というよりチーちゃんの場合はどっちかというと精神面が……」
「せ、精神面がなんですか!?」
「いや、うん。チーちゃんだなぁって……」
精神面がチーちゃんってどういうことですか!?
「そりゃ子持ちのユナさんと比べると精神も未熟ですけどね!! 人生経験で負けてますよ! 私独身でしたし!!」
「ご、ごめんね?」
「そこは謝らないでくださいよ!? 立つ瀬が無いじゃないですか!?」
ちょっといたたまれない雰囲気になってきました。あぅぅ、こうなることは分かってたのにぃ……
いや、隠しごとはいけないですよね。いずれバレることでしたし……
「あの、チーさんって呼んだ方が良い?」
ユーくんが気を遣ったのかそう言ってきましたが、それは逆効果です! 私は叫びます!
「嫌です! 子どもとして扱ってください!!」
「え、でも28……」
「私は生まれ変わったので0歳児です! 大人になりたくないです!! 子どもとしてもっと甘やかされたいです!!!」
「ええー……」
「チーちゃんって呼んでください! 私は子供です!! 」
「えーと、うん、チーちゃん……」
「頭も撫でてください!!!」
「あ、うん」
ユーくんは戸惑いながら、私の頭をなでなでしてくれました。ふへへ~、癒される~~。私甘やかされてる~~
「えへへ……」
「うん……なんというかチーちゃんはチーちゃんだね」
「そうですよ~。私はチーちゃんですよ~~」
そうやってナデナデされてると、ユーくんが聞いてきました。
「チーちゃんは……他のチームとか行ったりしない?」
「いきませんよ~」
「んー、あんまり信用できないなぁ……なんか浮気しそうな気がする」
「そ、そんなことありませんよ!?」
「だって、サクちゃんと楽しそうにしてたし。ココッテちゃんとも仲良しだし」
「わ、私はユーくんが一番ですよ!?」
「そう言う人に限って浮気するってお母ちゃん言ってたよ?」
「そ、そうかも……」
た、たしかに、「君のことが一番だよ」って思いっきり浮気男がいう台詞です。私、浮気男と同じこと言ってました……!?(戦慄
「チーちゃんってロリコンなんでしょ。小さい子が好きなんだよね」
「あ、あぅぅ、そ、そうかもしれません」
「この世界に来て、一番タイプの子はどの子? ボクじゃないよね?」
ヒェッ!? た、確かにボーイッシュなユーくんは私のタイプとは外れます。私のドストライクなタイプは……正直に言うと……
「ろ、ロリ化したユナさんです……」
「え、ロリ化したユナ!? いや、存在しないよね!?」
「私の脳内には存在するんです!! たぶん何らかの作用でロリ化するんです!!!」
「そうなの!?」
「すみません、嘘です!!!」
「だよね!!」
そんな感じで勢いで乗り切って、無事チームの結束は保たれました(ほんとぉ?)
……なんか色々とアカン情報を開示してしまったような気がします。この先、チームの関係はどうなるんでしょうか? 私ってまだ子供として扱ってもらえるんでしょうか……?
まだ子供でいたいよぉ……(切なる願い……
「君のことが一番だよ」が浮気男の台詞である理由。
↓
わざわざ「一番」というからには、「二番」「三番」の女も当然いるわけでして……
みんな、浮気症のチーちゃんの言葉に騙されちゃ駄目ですよ?




