Lo80.お風呂談義。ウェダインさんって実はかなり真面目キャラですか?
ハイセイカから帝都オウカまで続く街道を行く7日間の馬車旅。過酷なこの旅の一番の楽しみはなんと言っても温泉です。(本来は過酷じゃないはずなんですが?)
ハルテン温泉街道……この街道は温泉開発によって生まれたので、途中にある宿場町はもれなく温泉に入れます。まったくもう、素晴らしいです。
今日入るお湯はハーブ湯です。お湯に浮かぶ謎のハーブから出る緑のエキスが身体を癒します……あ、これよく見るとヨモギですね? すみません、ハーブじゃなくて雑草でした。
なんか異世界にきたばかりのときも、ユナさんと薬草採取と称してヨモギを採りましたっけ? なんか縁がありますね、ヨモギ。
ヨモギのお湯以外にも花の湯とか果実の湯とかありますけど、私はこの緑エキスが回復効果ありそうなのでここに浸かっています。
ウェダインさんもなんか一緒です。気に入ったんでしょうか、ヨモギ湯。
「ふひぃ~効くぅぅ~」
「疲れたおっさんみたいな声だすなよ」
「つかれてるんですよぉ~」
ウェダインさん(私を筋肉痛にした張本人)に突っ込まれましたが、気にせず私は声を出します。ふへへ~気持ちいい~
まったく、散々走らされて全身がバキバキです。なんで走ってると、足だけじゃなくて脇腹とかも痛くなるんですかね?……謎です。
腹筋とか使ってるんですかね? いや、腹だけじゃないですね。変な筋肉使ってるのか色んなところが筋肉痛になってます。肩とか首とかも色々筋肉痛です……
ウェダインさんがそんな私を呆れながらみています。
「治しゃいいじゃねーか。お前、治癒が使えるんだろ?」
「おお、知ってましたか。私が癒し手、つまりヒーラーだということを」
「そりゃ知ってるだろ。こっちはギルド職員だぜ? 個人情報はだいたい知ってる」
「うわぁこわい」
あんまり人前で能力を見せてないんですけど、どうやって知ったのでしょうか? うーむ、たぶんドワーフさんを治したときの可能性が濃厚ですね? まったくプライバシーもあったもんじゃないです。
「そもそも私も自分の使ってる回復みたいなやつがよく分かってなくて……怪我とかは別にいいんですけど、疲労を回復すると代わりになんか眠くなります」
「よく分かんないやつだな。だから走らされてるとき使わなかったのか」
「そんな感じです」
たぶん、疲労回復は寝ることでしか真の回復にならないんじゃないでしょうか? 知らないですけど。
「というか他のガキどもはどうした?」
「なんか秘密特訓やってます。結構悔しかったみたいで」
「お前がバラしちゃ秘密じゃなくなるじゃねーか」
「あははー、そうですねぇ。でも本当は無理せず休んでほしいんですけどねぇ」
ユーくんも昼間あれだけ動いたんですから、もう身体はへろへろのはずです。素直に休んで明日に備えた方がいいと思うんですけどね。
ココッテちゃんはアンデッドなのでよく分かりません。
「まったくだぜ。まぁ、今日のところは好きにやらせておくがな」
「え、止めないんですか?」
「明日、朝からバテバテの身体で来たところをボコる」
「うわぁ、容赦ない」
「こういうのは言葉じゃなくて身体に思い知らせねーとな。しっかり身体休めねーと逆に効率が悪いってことをな」
「そのとおりですねぇ。ウェダインさんは根性論タイプだと思ってたんですが、休んだ方がいいと思ってて安心しました」
「根性と合理的思考は使い分けだぜ」
ふむ。ウェダインさん、トレーニングコーチに向いてますね。かなりスパルタで厳しかったので昭和かな? と思いましたけど、ちゃんと休むことの大切さを知ってるみたいです。私は愚かにも前世でそのへんを軽視して怠りましたからね……
「その点で言えば、お前の治癒の能力は正解に近いのかもな」
「ふぇ? どういうことです?」
「なんかどっかの国で実験が行われたんだよ。【普通に訓練するのと、回復魔法で治癒しながら過酷な訓練をするのとじゃどれだけ差が出るか】ってやつ。確か回復魔法の有用性を示す為の実験だったな」
「ふむふむ、気になりますね。結果はどうなったんです?」
「どっちも大して差が無かった。むしろ普通に訓練してた方が体力面では勝ってた」
おお、回復魔法使いながら無理矢理修行しても意味ないんですね。だからユナさんも回復しながらトレーニングするのをやめるように言ってたわけですか。理由は成長しないから。
「つまり回復魔法使いまくっても、成長には寄与しないということですか?」
「おそらくそういうことだろう。ちなみにポーション漬けで同様の実験もしたが、回復魔法使って訓練するより更に結果は悪くなった」
「お薬浸けは身体に悪そうですねぇ……」
「そういうこった」
回復魔法やお薬で無理矢理回復しながら修行する。ゲーム世界だと可能でしょうけど、やっぱり現実だと身体に悪いですよねぇ。
「たぶん、お前の治癒は成長を妨げないようになってるんだろ。だから回復した後は眠くなる」
「そうなんですかねぇ?」
「まぁ、知らねぇがな。自分の能力なら自分で調べろ」
「おっしゃるとおりです」
と言っても、他のヒーラーの方をあんまり知らないので比較できないんですけどね。知識も経験も足りてません。わからないことだらけです。
しかし、ウェダインさんってなかなか理論的な人ですね。頭良さそうです。
「なんというか……ウェダインさんって思ってたより真面目ですよね?」
「バレたか。内緒だぜ」
「そりゃバレますよ。さっき会話しただけでも、真面目に色々勉強してるんだなって分かりますし。事務職志望も勉強しなくちゃ出来ないでしょう?」
「まぁな。お前はまだまだお勉強が足りないぜ」
「あはは、私は適当ですよー」
「まったく、お前が一番真面目そうに見えるのに一番適当なんだぜ」
ウェダインさんは昼間までの鬼教官モードから普段の気さくな感じに戻ってます。
なんかこう、この人の言動や態度に惑わされますが、やってること自体は真面目そのものなんですよね……真面目に門番やったり、非常事態に対処したり、尋問したり、私達を鍛えようとしたり……
色んなことを知ってるし、稽古をつけてる間にユーくんの動きを細かく指摘してました。
言ってることじゃなくてやってることがその人の正体といいますが、まさにその通りです。ウェダインさんはかなり真面目な人でしょう。
「そんなウェダインさんだから聞きたいんですけど……やっぱり私達、今のままじゃ死んじゃいますか?」
「ああ、たぶん死ぬぜ」
ウェダインさんはあっさりと言います。やっぱり、あれは発破かけるために出た嘘の言葉じゃなかったんですね……
「……理由を聞かせてもらってもいいですか?」
「1ヶ月前、アタシは混沌魔物の【大侵攻】に参加した。そのときは100体ほどの混沌魔物が出たんだが……まぁ数で言っても驚異度は伝わらねぇよな」
「いやいや、分かりますよ。100体って1体いるのの100倍やばいってことでしょう?」
「やっぱり全然わかってないぜ」
ウェダインさんが呆れたように言います。はて、どういうことでしょうか? 私だって巨大鹿とかナメクジとかに遭ってその怖さは分かってるつもりですが……
「混沌魔物っつっても強さはピンキリだ。先日、ハシノ村に出た鹿やお前らがダンジョンで出会ったナメクジはBランク混沌魔物。つまり雑魚だな」
「ええっ!? 雑魚なんですか!? めちゃくちゃボスなんですけど!?」
「魔瘴対策をしたBランク冒険者が10人もいりゃなんとかなる程度だろ? あんなんアタシ一人でも倒せるぜ」
ウェダインさんは私達が戦った混沌魔物を雑魚だと言いきりました。そういえばナメクジ倒しに一人でダンジョン行ってましたねこの人。あながちハッタリじゃないのでしょう。
「そもそも混沌魔物ってカテゴリーに入れられる時点で、Bランク以上は確定してるんだからあの程度は下の方だと思った方がいいぜ」
「そうなんですか?」
「おう。んで、【大侵攻】のときに現れた100体ほどの混沌魔物が全部そんな雑魚だと思うか?」
確かに……私自身、100体の混沌魔物と聞いてあの鹿みたいなのが100体だと思いこんでました。
「……やっぱり強いのいたんですか?」
「Aランクの混沌魔物が20体ほどいたな。当然、Bランクよりはるかに強いと思っていい。討伐金額でいうとBランクの5倍以上はザラって感じだぜ」
「5倍以上ですか!?」
「まぁ危険度もBランク5体分以上ってことだから当然だな」
危険度たっか! そんなのが20体もいたんですか!?
「まぁそいつらはアタシでもなんとかなるんだが……」
「なんとかなるんですか!?」
「そりゃ1体ずつならな」
ウェダインさんはこともなげに言いますが、結構すごいことなのでは……?
「その中でももっと強いやつがいるんだよ。アタシでも死にそうなくらいヤバいのが……3体いたな」
「おお……ちょっとよく分かりません!」
「【BP】って指標を知っているか? ギルドで魔石を鑑定すると出てくる数値なんだけどな」
「おお、びーぴーですか! 片眼鏡で戦闘力測るやつですね!」
BP、すなわちバトルポイントです。そして戦闘力が高すぎたら片眼鏡がボンって爆発するまでがお約束です。
「言ってることが分からねーからスルーするぜ。まぁ、討伐後に特に強かった混沌魔物3体の魔石からBPを測定したんだが……全部BP100万越えだったぜ。お前がギルドに持ってきたでけぇ魔石以上の数値だ」
「なんですと……!?」
サクちゃんが倒した超巨大ミミズのBPって確か70万くらいでしたっけ?(うろおぼえ)
あれでも小国を滅ぼすくらい強いって言われてたんですけど、あれ以上が3体も……?
「……国、滅びてないですかこれ?」
「余裕で滅びてるぜ。マジでミカド様無しじゃ勝てなかった」
「たしかに驚異度を見誤ってましたね……」
「分かってくれて嬉しいぜ」
混沌魔物100体いるから、驚異度100倍ってレベルじゃなかったですわ。今の話を信じるなら、少なく見積もっても驚異度1000倍はあるんじゃ……?
「でも、そんな強いのをやっつけるなんて、サクちゃん……ミカド様ってすごいですね!」
「おう、別にアタシに合わせて言い直すことはねーぜ。アタシにとっては神帝のミカド様だが、お前にとっては友達のサクちゃんなんだろ?」
「あ、はい。そうです! 私達とサクちゃんはツチノコの絆で結ばれてます!」
「なんかすげーどうでもいい絆だぜ……」
はい。私もそう思います。
「つっても、そのミカド様もどうなるかだな……」
「え、サクちゃんって最強じゃないんですか? 勇者より強いとか言ってませんでした?」
「ああ、最強だぜ。勇者より強いってのも嘘じゃねぇ。だけどな……」
「……なにか懸念でも?」
ウェダインさんが言いづらそうに言います。あまりいい知らせじゃなさそうです。
「大侵攻のあった後、ミカド様の姿が少し幼くなってたんだよな」
「……え!? 若返ったんですか!? 良いことじゃないですか!!」
サクちゃんが幼くなるのはすごく可愛くていいと思いますが!?
「逆だ馬鹿。おそらくミカド様は力を使いすぎて弱体化してるんだぜ」
「え、弱体化ですか?」
「そもそもな。昔はミカド様は今のような幼い姿じゃなかったらしいぜ? ちゃんとした大人の女性の姿だったと言い伝えられている。ハルノテンペスト大帝国として全世界に喧嘩売ったときはそうだったらしい」
「それが何故か今の幼女の姿に?」
「よくわかんねーが、ミカド様は人間じゃねぇんだろ? 弱体化して背が縮んでもおかしくねーんじゃねーか?」
「ふーむ、一理あるような無いような……」
たしかに、子どもって大人と比べたら弱々しい姿ですもんね。そこが可愛くて最強なところでもあるんですが、一般論で言えば子ども化は弱くなったと思われても仕方ないでしょう。
「まぁ、具体的に言うと【大侵攻】の前後で10cmは縮んだぜ」
「10cmも縮んだんですか!? 見た目年齢が2歳分くらい違うじゃないですか!? おおごとですよそれ!?」
「なんかその反応気持ち悪いな……でまぁ、その二週間後にハイセイカのダンジョンで門番してるときにミカド様を見たんだが、たぶん縮んだままだったぜ」
「むむむ、つまり幼女化が治らないと」
……良いことでは? 幼ければ幼いほど幼女は可愛いですからね。3歳まで守備範囲ですよ私。
いや、そういう問題じゃないんですよね。弱体化してるかも?って問題なんですよね。
「んで、今回の悪神ってのは混沌魔物の首魁のようなやつだ。当然、前回戦った混沌魔物より強いのは確定だろうぜ」
「まぁそうでしょうけど……どのくらい強いんでしょう?」
「少なく見積もって、倍以上は強いだろ。悪神ってのは神話に語られる化け物だぜ? ミカド様が弱体化してるなら、負ける可能性も十分あるってことだ」
「……それでも戦うんですね」
「そうだぜ。後悔したか?」
「いえ、全然」
私が即座に否定すると、ウェダインさんが興味深く私を見ました。
「正直、お前が一番消極的だと思ってたぜ」
「そんな風に見えます?」
「戦うの好きなようには見えねーし、あのちっこい勇者様に付き合わされてるだけじゃねーか?って思ってた」
ふむ。そういう風に見えてたんですね。まぁ確かに、戦うのあんまり好きじゃないんですけど……そもそも神様から勇者だとか指名されてるの私の方だし、むしろ私がユーくんを身代わりに勇者の役目を押し付けてるところもあるんですけどね。
まぁ、私は勇者じゃなくて勇者の仲間であることを選びました。というか、魔王さえ倒せれば立場なんて何でもいいんじゃないですか?
「どのみち倒さなきゃ未来が無いんでしょう? それに、サクちゃんが戦うのに私達が助けない理由ありますか?」
「……ビビリかと思ったら覚悟決まってるじゃねーか」
サクちゃんは友達ですからね。出来ることがあれば何だってしますよ!
「それに幼女化は強化フラグという可能性もあるじゃないですか!」
「ねーよ」
私自身は幼女になって超絶強化されています。
つまり幼女化は最強で無敵なのです!
ロマサガ2リメイクをやりはじめてから止まりません。ロックブーケ様めちゃくちゃかっこよくて可愛くなってないですか?




