Lo74.異世界で漫画家デビューしちゃいます?
さて、買い物も済ませましたし武器を持ったかっこいい幼女の絵も描きましたし、もうすること無いですね。
……あ、そうだ。絵で思い出しました。
ヨッツさんに頼まれたナメクジとミミズの報告書がまだ描き途中でした。いや、別に絵に描いて提出しなくてもいいんですけどね?
でも、楽しいじゃないですか。私が。
「というわけで私は宿に帰って報告書の続きを描いておきます!」
「うん、りょーかい。じゃあボクらはどうする?」
「ん」
「あ、そうだね。ココッテちゃんあんまりこの街に来たことないもんね。探検しよう!」
そして幼女2人は仲むつまじく探検に行きました。うーん、尊いです。
幼女分を補給した私の筆はノリにノリました。テンション高めに爆速で仕上がっていく絵。
なんか私めっちゃ調子良いです! 幼女は健康に良すぎた……!
今なら岸部露伴先生みたいに、インクをピッと飛ばしてそれがそのまま絵になるとかいう超絶技巧を披露できます! ピッピッ!
あ、調子に乗り過ぎました。めっちゃインクはみ出てます。まぁ、勢いはあるのでそこの部分は残しつつ、はみ出たところを修正しましょう。うん、たぶんいい感じ! よくわかんないですけど!
そして翌日。私達はギルドに行きました。ユーくんとココッテちゃんはギルドの訓練場に行きました。私はギルドの窓口に行き、受付嬢さんに用件を伝えると、何故かギルドマスターの部屋に行きました。
ギルドマスターのヨッツさんがデスクで私の報告書を読んでいます。何故か受付嬢さんもそのまま一緒です。窓口業務どうしたんですかね……?
「……これ、報告書なんか?」
「すごいねー、これあなたが描いたの?」
「はい!」
ヨッツさんと受付嬢さんが私の絵を見てます。ヨッツさんが顎に手に当ててうなるように絵を見ています。今見せているのは、ナメクジとミミズの全体像です。となりにちっちゃな人間(幼女)を置いて大きさが比較して分かるようになってます。
「ええ絵やなー。これはこれで資料としては使えるわ。でもやっぱ文章が無いと、ギルドの書類としてはなぁ」
「あ、それは別途ありますよ」
「あるんかい! なんで先に絵だしたんや?」
「それは表紙なので」
私は続いて文章のみの書類を渡します。文章のみと言いつつ、右下で小さなケモ耳幼女が踊ってるのは謎です。
「魔物の特徴は箇条書きで読みやすくまとまっとんよなぁ」
「冒険者さんの書く報告書って雑なので、大体こっちで手直しが必要なんですけど、これはそのままでも通りますねー」
「ほんま、そこは感心するんやけどな。なんか右下に余計な絵がある気がするんやけど」
「はい、きっと妖精さんです」
妖精さんなので仕方ないですね。ええ、仕方ないのです。
あ、リアルの会社じゃこういうことは勿論やりませんよ? でも……なんか修学旅行のしおり作るときはついやっちゃいますよね? 学生のときを思い出します。
「ん? まだこの書類続きあるんか?」
「はい。そこを特に力入れました!」
次に見せたのは、どうやって混沌魔物を倒したかというやつです。ユーくんがナメクジをぶったぎり、サクちゃんが天高く飛び上がって弓を射てかっこよくミミズを討伐してるところを漫画風にコマ割りで描きました!
「うわー、絵上手ですねー」
「……これ、もしかして漫画か?」
「はい! 漫画です!!」
「描く意味あるんか、これ?」
「趣味です!」
「言いきったなー」
まぁ、趣味全開ですが一応描く意味はあります。ほら、歴史書だって漫画で分かるシリーズが販売されているでしょう? 文章が苦手でも漫画で楽しく学べれば良いんじゃないですかね?
ヨッツさんが興味深く私の絵を見ています。
「……なんか新感覚やな。こういう漫画もあったんか」
「さっきから思ってたんですけど、絵柄が他とは随分違いますね。なんというか、そこらの絵柄の進化形というか」
「あー、そいやキミこういうの詳しかったんっけ?」
「はい、大好物です!」
受付嬢さんが嬉々として語ります。おお、漫画好きがこんなところにいたとは。
「えっと、私の絵柄って他とは違うんですか?」
「全然違いますよ! すごいなぁこんなのを描けるなんて……!」
「そか? ワイあんま読まんからよう分からんけど……」
「他の人はどんな感じの漫画を描いてるんでしょうか?」
「ちょっと参考に持ってきますね!」
そういって受付嬢さんが持ってきた漫画を見ます。わくわく、初めて見る異世界の漫画です。
「こんな感じです!」
「わーい!」
受付嬢さんが数冊の漫画を持ってきたので、目を通します。はい、さっきから3人で和気あいあいとしてますが、受付業務はどうなってるんでしょうか?
まぁ、窓口は他にもあるから多分そこでやってるんでしょう。混雑しない時間を選んできましたし。
受付嬢さんが見せてくれた漫画を読みます。
印象としては……絵柄が古いという感じですね。
キン肉マン第1巻目みたいなやつとか、劣化した手塚治先生みたいなやつ、新聞に載ってるコボちゃんみたいなやつが見受けられました。
うーん、これは昭和の香りがします。
あと……なんでしょう? 私も本職の漫画家じゃないし偉そうなことを言えないんですけど、全体的にこう、躍動感とか表現力が足りない気がします。止まってる絵をコマ割りで繋げてるだけのような……
うむぅ……これがこの世界の漫画ですか……なんというか、発展途上という感じですね?
「漫画って大体こんな感じなんですけど、チーちゃん先生の描いたやつはすごいですね。新時代を感じるというか、書き込みに愛を感じるというか、とにかくかわいいというか」
「ち、チーちゃん先生ですか???」
「はい、たった今から貴方は私の最推しの絵師になりました!」
受付嬢のお姉さんがめちゃくちゃ推してきました。
うひゃー! は、恥ずかしい! 私なんて現代だと有象無象の木っ端絵師に過ぎないんですけどね!?
うーん、異世界の漫画がどこか古い絵柄っていうのは、漫画を伝えた転生者とかの時代が古かったとかそういうのはありそうですね。
あと、絵描きの人口。魔物のいる世界ですし、多分平和な現代日本より絵を描く人が少ないのかもしれません。
また異世界に絵の超上手い鳥山明先生みたいな特異点が生まれなかった可能性があります。
もしかしたらこの世界なら、数十年未来の漫画を描いている私はかなりアドバンテージがあるのかもしれません。
でもこれは、私がすごいんじゃありません。私自身も色んな先生の模倣をしまくって成長したので、今まで積み上げてきた日本の漫画業界、ひいては漫画家先生の功績です。そこを勘違いしちゃいけませんよ、私!
「先生! この原稿売れますよ! 買い取らせてください!!」
「なんか受付嬢さんが漫画編集者みたいなことを言い始めました!?」
「このサクちゃんっていう角の生えたキャラクターもめちゃくちゃ可愛いですね! 好きです!」
「あ、分かります? かわいいですよねー」
「いやそれ『例のあの御方』……やけどまぁ、知らん人は知らんか……」
ヨッツさんが言いづらそうにツッコミますが、受付嬢さんには聞こえませんでした。
「ギルマス! 早速この原稿を印刷所に持っていきますね!」
「え、今からですか!?」
「いや、待ってんか? ちょっと話が速すぎちゃう?」
「何言ってるんですか! この世界の宝を腐らせるなんてありえません!! というわけで行ってきます!!」
「いやそれ、明らかにアンタの仕事ちゃうやろ!? あ、おーい!?」
そうして受付嬢さんは飛び出して行きました。あはは、何が起こってるのか分かりません。というか印刷所あるんですね、この世界。
「アカン、なんかよくわからんことになってきたわ。アンタに無駄に絵心があるから、あの娘の漫画ラブに火つけてしまったんや……」
「あはは……この話どうなるんですかね?」
「もうワイにも止められん。いけるところまでいくしかなさそうや」
「あ、止めないんですね」
「職員の自主性を大事にしとったらこのザマや。まぁええわ。こっからはお金の話になるんやけど、原稿のマージンは……」
「え、もう利益を見据えてるんですか?」
「うちの一族商人が多いねん。手間増える分儲けさせてや」
ヨッツさんはヨッツさんでなかなかしたたかな人でした。
しかし、まさかこんな形で商業デビューすることになるとは……むむむ、ちょっと実感わきません!
この受付嬢さんの名前は「ガンマ・D・フアン」。漫画大ファンさんです。
今思い付きました(適当)




